スマートフォンが普及する前は「パソコンが苦手」という人は少なかった。
つまり、2010年以前は、50代以下で、パソコンが苦手な人は、そんなにいなかった。
しかし、それよりずっと前なら、非常に沢山いた。
そして今、またパソコンが苦手な人が増えている。若い人でもだ。
つまり、スマートフォンで済んでしまうことが多いので、パソコンを使わなくなったから苦手な人が増えているのである。
いや、パソコンが苦手という以前に、パソコンを使えない人が増えている。
信じ難いことだが、今は企業で、新入社員にパソコン研修を行っているそうだ。
だが、パソコンが得意でないとITに強くなれない。
ITリテラシーは国力の重要な要素であるのに、若者がパソコンに弱くなっているのは困ったことである。
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツや、彼の後を継いでCEOになったスティーブ・バルマーらは、スマートフォンの普及を予想せず、スマートフォンに力を入れなかったことが、マイクロソフトがモバイル分野で、グーグルやアップルに後れを取ったと揶揄されるが、彼らは、キーボードが付いたパソコンに強いことがITに強いことだと深く理解していたがゆえに、ITに弱くなるスマートフォンを軽視していたのだろう。
そして、実際、日本ほどではなくても、アメリカ人もITに弱くなったのである。
確かに、スマートフォンに慣れていることで、スマートフォンのサービスは楽々使いこなせるだろうが、実際は、それは、「使っている」のではなく「使わされている」だけである。つまり、ロボット化させられていることに気付かないといけない。

私も、特に昔は、「どうすればパソコンに強くなれるのか?」と、社員のパソコンスキルを高めたい企業の幹部、あるいは、経営者に尋ねられたことがある。
しかし、私にはよく分らなかった。パソコンに強いのが当たり前の人に、「どうすればパソコンに強くなれるか」と聞くのは当を得ているとは言い難い。
アメリカ人に、「どうすれば英語に強くなれるのか?」と尋ねるようなものだ。
しかし、日本人の誰よりも先にパソコンに強くなった、年配のITコンサルタントにこう言われて納得したことがある。
「キーボードを速く打てるようになればいいんです」
これは、今も真理である。
スマートフォンを使いこなしている若者は、別に、スマートフォンの研修を受けたわけではない。
単に、長時間使ったというだけのことだ。
十分な時間、スマートフォンを使っていれば、70代、80代の人でも、若者と遜色なく使っている。別に、若者のスマートフォンの技量など、大したものではない。
パソコンのキーボードを速く打つとは、決して、キーボードを打つ研修に行ったり、キーボードの練習ソフトを使うことではない。
多くの時間、キーボードを使えば、自然に速く打てるようになる。
実は私が、プログラマーになる前、仕事で大量の文書をワープロで書く必要があり、必然的に猛烈なスピードでキーボードが打てるようになった。
だから、プログラマーになれたのである。
また、毎日、楽々ブログを書けるのである。
私は、長い時間、キーボードに触れることのメリットを体現した者であるわけだ。
ちなみに、私は、ブラインドタッチは出来ない。良いことではないのかもしれないが、左右の人差し指と中指の4本の指で、目にも止まらぬ速さでキーボードを打つのである(笑)。
偏見かもしれないが、5本の指で器用にキーボードを打つプログラマーに大したやつはいないような気がする。
まあ、実際は、2本だろうが5本だろうが、とにかく、速くキーボードを打てることが、パソコンに強くなったり、ITリテラシーを高めるのに有利・・・と言うより、必須である。

『月刊秘伝2020年3月号』で、大東流合気柔術に関する記事に書かれていたことだ。
大東流合気柔術の達人、佐川幸義は、四股(佐川流四股。相撲の四股とはかなり異なる)を重視していて、佐川自身や高弟達は、毎日、千回、二千回と四股を踏むのだが、ある入門者は、寝食を忘れて四股を踏んでいた。すると、数年後、佐川を除き、誰も、その者を倒せなくなってしまった。
愚直に長時間やる。この単純なことが、あらゆることで力をつける極意である。