これまで何度か、ミュージカル映画の傑作と言われる『サウンド・オブ・ミュージック』の中の一曲『私のお気に入り(My Favorite Things)』について取り上げてきた。
歌の主旨は、「悪い気分になった時、お気に入りのものを思い出せば、そんなに悪い気分じゃなくなる」である。
自分の世界がどんなものであるかは、自分の気分で決まる。
これは、気分さえ良ければ、願うものを引き寄せることが出来るということである。
よって、気分というものはとても大切だ。
この歌は、自分の世界を楽しいものにするための手法を提示していることになる。
そして、私も、この歌が提示する手法・・・お気に入りのものを思い浮かべることは、良いことだと思っていた。
この歌の中で取り上げたお気に入りのものは、とても沢山あり、いくつか挙げると、
・薔薇に落ちた雨粒
・子猫の口髭
・温かいウールの手袋
・クリーム色の子馬
・月の真下を飛ぶ野生の鴨
・青いサテンのサッシュのついた白いドレスを着た女の子
・春に溶けていく白銀の冬
他にも、沢山ある。
これらは、豊かな家庭で育った人でないと出て来ない発想だが、そこは別にどうでも良い。
問題は、これらは記憶(思い出)の中のものであり、これらを思い浮かべるということは、心は、今にあるのではなく、思い出の過去に行ってしまうことだ。
美しい思い出、希望に溢れる未来・・・これらが悪いというのではないが、これらは所詮、幻想である。
生命は、今にしかないのだから。
思い出や希望は、美しくても造化のようなもので、生命がなく灰色なのである。
それよりも、上に挙げたような特別なお気に入りのものでなくても、今、目の前にあるもの、あるいは、今感じている感覚、今やっていることに全集中すれば、生命エネルギーを得られる。
思い出の豪華なフルーツではなく、目の前のミカンを新たな目で見るのだ。
その美しさは、何ものにも代え難いのである。
そうやって、今に生きれば、自分の魂の中に神の魂が流れ込み、神の魂の中に自分の魂が流れ入る。
そうすれば、あなたは無限なのであり、不可能はなく、思ったことが現実になる。