ITスペシャリストが語る芸術

-The Kay Notes-
SE、プログラマー、AI開発者、教育研究家、潜在意識活用研究者、引きこもり支援講師Kayのブログ。

現成公案

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最高の知恵の書であり魔法書でもある本

中山正和(1913~2002)さんという、発明家で、能力開発(特に発想法)のスペシャリストがいたが、彼はお堅い科学技術者であり、スピリチュアルなことは言わない人だった。
よって彼は、今で言う引き寄せみたいなことは語らなかったが、私が知る範囲でたった1つ、明らかに引き寄せとしか思えないことを著書に書いていたことがある。そんな人物が語ったのだから、不思議なリアリティがある。
それは、おそらく1970年代の話で、引き寄せという言葉自体はなかったが、潜在意識による成功法則としては、ジョセフ・マーフィーの本は日本でも普及していたと思う。
その引き寄せは、彼の若い男性の知人の話である。
その男性は、今住んでいる所よりもっと良い部屋に住みたいと思っていて、潜在意識による成功法則の本でも読んでいたらしく、住みたい部屋を事細かに思い描きイメージしていたら、場所も部屋の様子も、ほとんどイメージ通りの部屋が見つかったという。
これに対し、中山さんは、脳の中のある機能が、その部屋を「見つけた」のだと説明していた。
つまり、意識する心には浮かばないが、その脳の機能は自律的に活動し、見たり聞いたりした情報(本人が憶えていないものもある)を結び付け、本人の意識をコントロールし、その部屋が見つかるよう導いたのである。
さらに言えば、本人に「こんな部屋に住みたい」とイメージさせたのも、実は、その脳の機能であり、その脳の機能は、そんな部屋が存在することを知っていたのだから、イメージ通りの部屋があっても不思議ではない。
このように、中山さんは、あくまで合理的に説明し、潜在意識の法則や引き寄せの法則とは異なる説明をした。

中山さんは、その脳の機能を「いのち」と呼び、彼は、この「いのち」の解明に一生を捧げたが、「いのち」は高度過ぎて手には負えなかったのだと思う。しかし、その活用法はいろいろ分かったので、それを企業や個人に指導していたのである。
この「いのち」は宇宙の意志そのもので、「神」という概念を持ち出すなら、神の一部であることを中山さんも認めざるを得なかった。

おそらく、中山さんは、合理的に説明出来る範囲の「いのち」の機能さえ高度過ぎるのに、ジョセフ・マーフィー的な潜在意識の法則(今の引き寄せと同じ)となると未知のことが多過ぎるので、自分はあまり語ろうとしなかったのだと思う。
これは、科学技術者としては誠実な態度と思う。
とはいえ、直観が「いのち」の機能であることは解明し、松下幸之助のような高度な直観を持つ人の、その直観の秘密を説明すると共に、そんな直観を持つ方法も示すことが出来た。
たとえば、「オンナの勘」が当たる理由も説明出来るのである。
本当に大変な人であると思う。

幽玄の森
AIアート639
「幽玄の森」
Kay


その中山正和さんの原点は、彼が旧制中学を卒業する際に国語の先生に「君は『正法眼蔵』の『現成公案』だけ一生読みなさい」と言われたことだった。
その国語の先生も大したものだ。
『現成公案』には、この世の秘密の中の、人類が使いきれないほどのことが書かれている。
この中から魔法の知恵を汲み出し、一生使いまくっても使いきれないのだ。
今は、易しい現代語訳も沢山出ているので、使わない手はない。

◆当記事と関連すると思われる書籍のご案内◆
(1)悟りの構造―正法眼蔵の解明(中山正和)
(2)正法眼蔵(ひろさちや訳)
(3)現代文訳 正法眼蔵〈1〉 (河出文庫)
(4)正法眼蔵(禅文化学院)
(5)絶望しそうになったら道元を読め!~『正法眼蔵』の「現成公案」だけを熟読する~
(6)道元さんの安楽説法―「正法眼蔵」を読み解く(中山正和)
(7)禅と脳 大脳生理学と宇宙物理学から「さとり」を科学する(中山正和)

違いは呼び名だけ

『正法眼蔵』の『現成公案』に、こんなことが書かれている。

春が過ぎて夏が来るが、春が夏になるわけではない。春は春。夏は夏だ。
では、薪が燃えて灰になるのはどうだろう。
これなら、薪が灰になるように思える。
しかし、やはり、薪は薪、灰は灰である。
毛虫が蝶になるように思うが、やはり、毛虫は毛虫、蝶は蝶なのである。

なら、生と死はどうだろう?
これは分かり易いと思う。
生は生であり、死は死だ。誰も、生が死になるとは思わない。

素敵な男性がいて、自分は彼の友達であるが、恋人になりたいとする。
では、それがうまくいく場合、自分は、彼の友達から恋人になるのだろうか?
やはり、そうではないのだ。友達は友達、恋人は恋人である。

貧乏な男が金持ちになった場合はどうだろう?
これも、貧乏だった時の彼は、どこまでも貧乏な人間で、いわば、貧乏な人間として完成している。
一方、金持ちになった彼は、どこまでも金持ちな人間で、いわば、金持ちな人間として完成している。

儲からない会社と儲かる会社。
アル中の人間とアル中でない人間。
囚人ジャン・ヴァルジャンと市長マドレーヌ。
これらに関しても同じだ。前者が後者になったのではなく、前者は前者で完成しており、後者は後者で完成している。

前者と後者では、圧倒的な違いがある。
それは「呼び名」だ。
しかし、言い換えれば、前者と後者の違いは「呼び名」だけだ。
可愛いあの子のただのクラスメイトであるのと、彼氏であるのとの違いは、やっぱり「呼び名」だけなのだ。
まあ、「彼氏」か「特別な人」か「大事な人」か「好きな人」などの違いはあるかもしれないが、重要なことは呼び名だけだ。

『マスターの教え』で、マスターは言う。
「この船の船長は、船長という呼び名にうまく適応している。しかし、船主になるのは無理だと思っているかもしれない。だが、船長と船主の違いは、呼び名が違うというだけであり、船長は容易く船主になれる」
そんなわけで、あなたも、あの子のクラスメイトという呼び名を捨て、あの子の彼氏という呼び名を持つのだ。
名前は自分でつければ良いだけだ。
安サラリーマンという呼び名を捨て、高給の幹部という呼び名を持っても良いだろう。
50歳という呼び名を捨て、27歳とすれば良い。
45歳のオバサンではなく、18歳の若い女性とすれば良い。
トラインの本に、80歳だが25歳以上に見えない女性の話がある。彼女が陽気で楽天的な性格を持っているのは、あくまで結果で、彼女に歳を聞けば「23よ」と答えるか、答えずに「23歳」と思っているのである。








プロフィール
名前:Kay(ケイ)
・SE、プログラマー
・初音ミクさんのファン
◆AI&教育blog:メディアの風
◆著書『楽しいAI体験から始める機械学習』(技術評論社)


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