『徒然草』の第八十五段が素晴らしい。
一応、原文を挙げておくが、読むのが嫌なら、下の現代語訳を見ていただきたい。

 狂人の真似まねとて大路おほちを走らば、即ち狂人なり。悪人の真似まねとて人を殺さば、悪人なり。驥きを学ぶは驥の類たぐひ、舜しゆんを学ぶは舜の徒ともがらなり。偽りても賢を学ばんを、賢といふべし。

簡単に訳せば、

狂人の真似をして(狂人のように)走れば狂人と変わらないし、悪人の真似をして人殺しをすれば、全く悪人だ。
同じように、優れた才能のある者の真似をすれば才人と変わらず、神話に登場する聖人、舜(しゅん)の真似をすれば聖人の仲間だ。
嘘でも賢人に学べば賢人なのである。

仏教学者のひろさちや氏は、『空海入門』で、『徒然草』のこの部分を引用し、
「人殺しの真似をすれば人殺し、仏陀の真似をすれば仏陀」
と述べ、空海は仏陀の真似をした人であり、空海が伝えた真言密教もまた、仏陀の真似をして仏陀になる教えと書かれていた。
馬鹿馬鹿しい感じはあるが、重要なことである。
空海は、遣隋使の一員として、危険一杯の中国行きの船に乗ったが、空海は、気分は仏陀である。
「仏陀である私が乗る船が沈むはずがない。これが済んだら、今度はインドにでも行くか」と余裕綽々であった(笑)。

このブログで度々取り上げる世界的セールスマン、夏目志郎氏は、超一流セールスマンのポール.J.マイヤーを心から尊敬していた。
そこで、自分の執務室を、マイヤーのものと全く同じにし、マイヤーのような服を着て、マイヤーのようなネクタイをし、マイヤーのように振舞った。
マイヤーをよく知っている人に、「マイヤーがいるのかと思った」と言わせたほどだった。
それで、夏目氏もマイヤーのような超大物セールスマンになったのである。

事業家で宗教家の村田正雄氏の『七仙人の物語』を読むと、凄い超能力を備えた仙人が登場するが、仙人は、常に呪文を唱えている。
呪文は真言と言って良いだろう。
ならば、我々も、この一流の仙人の真似をして、常に真言を唱えていれば仙人なのである。
私はそう思っているし、今のところ、「常に」とまではいかないが、真言を唱えているので、奇しい(くすしい。神秘的な)力が度々発揮される。
もはや、仙人の仲間と思って良いと思う。

人間は、真似るもの・・・つまり、そのように振る舞うものになる。
内面ではなく、外面の振る舞いに魔力的な力があることは、カート・ヴォネガットの『母なる夜』にも書かれている。
ナチスに潜入したスパイが、ナチスらしく振る舞っていたら、自分で気付かないうちに、超優秀なナチス党員になってしまうのだ。

このようにして、あなたは何にでもなれる。
超色男の真似をして美女を侍らせるもよし、小悪魔な女の真似をして男に貢がせるもよし。
だが、真言を唱え、魔法使いになるのが一番お得と思う。

PS
素晴らしいコメントが多く、感謝感激である。
あまり返信せず恐縮だが、熱心に読んでるし、ありがたく思っている。
皆さんにも、コメントもチェックしていただきたいと思う。