子供の時に引っ越していて、その子供時代が概ね幸福であった場合、その場所に戻ってみることほど楽しいことはない。
あるいは、子供の時に、とても不幸な出来事のために引っ越した場合ですら、十分な時が経っていれば、やはり、そこに戻ってみることは、ひどく幸福に感じることもあるかもしれない。

レイ・ブラッド・ベリの『みずうみ』は、子供の時に引っ越して以来初めて、結婚した妻と一緒に故郷に戻ってきたハロルドに起こった、特殊というより不思議な(「怪奇な」と言えるかもしれない)お話だ。
この小説を萩尾望都さんが1977年に素晴らしい漫画作品にしているが、萩尾さんは1976年に、『みずうみ』に似た神秘的な作品『花と光の中』を描いている。
2つの作品は、似てはいるが、かなり異なったところもある。
いずれも、子供の時に仲良しだった、同い年の女の子が死んでしまった後、そこから引っ越した男の子が青年になってから戻ってくるというところは同じだ。
女の子たちが死んだのは、『みずうみ』では2人が12歳の時、『花と光の中』では5歳だ。
『みずうみ』の少年ハロルドは少女タリーに恋を感じていた。
一方、『花と光の中』の、まだ5つのルーイはイザベルに対してそうではないが、2人は結婚の約束のようなことはしていたし、それよりも、その結びつきの強さは、2人で1人と言えるほどのものだった。
ハロルドは、タリーとは少しも似ていない妻を、一方、ルーイはイザベルにそっくりで、イザベルだと本気で思っているマーシという女性を連れて故郷に帰った。
ルーイはマーシをイザベルだと疑ってもいないところは狂気といえるほどだが、それ以外においては、ルーイは変人と言われながらも、概ね正常なようだ。
ルーイとマーシはまだ学生のようだが、大学生だろうか・・・そのあたりははっきりとは分からない。
ハロルドには、ごく世間的で、ハロルドにとってはやや疎ましいかもしれなかった母親がいたが、ルーイの母親は、ルーイがよほど小さい時に、亡くなるか離婚しているかなどで、ルーイは母親のことは知らないようだ。
そして、故郷に戻った時、ハロルドにとって妻は「全く知らない女性」となり、ルーイはイザベルをマーシではないと知る。
死んだはずの、タリーとマーシが、それぞれ、ハロルドとルーイを取り戻したのだ。

この世的には死んでしまっているタリーとマーシのところに戻ったハロルドとルーイが不幸なのかというと、そうではないように思える。
ハロルドとルーイはもう、世間の人間ではなくなってしまった。
エデン、あるいは、仏教の教える涅槃に戻ったのかもしれない。
そして、これらの作品を読めば、あなたもそこに戻れるかもしれない。
私はそうだったように思うのだ。
そこで、あなたは、ハロルドにとってのタリー、ルーイにとってのイザベルと同じ、アニマ・ムンディ(ラテン語。世界霊という意味)に出会い、それと融合するかもしれない。
誰でも、子供の時には、大好きな何かを通して、それ(アニマ・ムンディ)と交流しているのだ。
W.B.イェイツの詩『再来(再臨)』は、そんなアニマ・ムンディが再び、人類、あるいは、あなたに挑む様子を描いているように思う。
武内直子さんの『美少女戦士セーラームーン』では、土萠ほたるという名の、まだ幼い少女が、『再来』を読んで、11歳で滅びた前世を思い出し、強い力(セーラーサターン)に覚醒するが、これが実に美しい場面であった。
あなたも、これらに触れて、原初の力を取り戻すと良い。
これらの作品が掲載された書籍を下にご紹介しておく。









↓応援していただける方はいずれか(できれば両方)クリックで投票をお願い致します。
人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ