大自然の中で育った人間の、超越的な強さや深遠な知恵というものは、この行き詰まった文明の中で、ますます魅力的なテーマだろう。
そういったことで、よく取り上げられるのは、アメリカインディアンや、オーストラリアのアボリジニなどだが、彼らが深い叡智を持っているだけでなく、霊的な力を有していると言われることもある。
アメリカの作家マルロ・モーガンの『ミュータント・メッセージ』には、オーストラリアの原住民アボリジニ族の人々が持つ超常的な力が描かれている。この本は、ノンフィクションとして出版され、世界的ベストセラーになった。
たが、出版後、主にアボリジニに関する記述の誤りが指摘され、また、アボリジニ自体からの抗議を受け、この本は後に、フィクションとして再刊行された。
もしかしたら、本を売るために、著者のモーガンや出版社が創作を織り交ぜた可能性もあるが、全て嘘とは限らない。
それで言えば、アメリカインディアンに関する話にも、相当な嘘があるだろうが、貴重な真実もあるはずである。
大自然の中で育った不思議な人物とまではいかなくても、いわゆる田舎者が、都会の人間にない優れた特質を見せることは、多くの人が知っていると思う。
昭和のプロレスの大スターだったジャイアント馬場さん(同期の桜のアントニオ猪木さんが今も熱い)のライバルで親友だった、テキサス出身の超大物レスラー、ドリー・ファンク・ジュニアという人が、ある意味、まさに超田舎者だった。
馬場さんは、このドリーを「これほどボケーっとした男はめったにいるもんじゃない」と言う。
物忘れの激しいことは想像以上で、試合用具を忘れて会場入りするなどザラ。
時間の観念はゼロで、集合時間に来たためしはなく、いつも最後にノンビリやって来る。
試合後に会場を出るのも最後。着替えるのに人の何十倍も時間がかかる。
馬場さんは「こいつ、シンから阿呆なのか」と思いたくなると言い、「テキサスの広大な大地で育つと、人間はこうも鷹揚(おうよう。鷹が飛ぶように悠然としていること)になるのか」と著書に書いている。
だが、ドリーは恐ろしくいい男で、人望が厚く、ドリーのためなら、いつでもどこでもすっ飛んでいくというレスラーが全米中にいくらでもいると言う。
そして、ドリーは、プロレスラーとしても、世界ヘビー級タイトルを、当時としては史上2位の、4年3か月保持した。プロレスという巨大なショービジネスの世界で、ここまで成功した実力は驚異的なものだ。
それもまた、鷹揚な、超田舎者の力があってこそと思うのだ。
フィクションとはいえ、不思議なリアリティを感じるのが、野尻抱介さんのSF小説が原作のアニメ『ロケットガール』に登場する、架空の島であるアクシオ島で育った、やはり架空の民族であるタリホ族の16歳の少女マツリだ。
マツリは、恐ろしく高い木のてっぺんに平気で昇り、そこで飛び跳ねて見せる怖いもの知らずの157cm、38.5kgの、日本人を父に持つ少女である。
宇宙飛行士になる過酷な訓練を笑って耐え、猛獣が棲むジャングルでも、宇宙で危機的な状況になっても、まるで不安を感じず平然としている。
そして、精霊を信じる彼女は、本当に精霊に守られているような幸運を、当たり前のように引き寄せる。
彼女のように、馬鹿のように楽天的で、いつも「大丈夫だよ」と確信して言うのは、科学的にも優れた能力であることが認められている場合も多い。
マツリの、うまくいくと決めつける子供のような態度、あるいは、お守りとか神様のようなものが自分や仲間を守ってくれることを、子供のように疑うことなく信じる心の性質が、実際的な力になるのである。まあ、うまくいかないならいかないで、それも神の意思として受け入れるのだろう。
その通りに出来るかは分からないが、私はマツリを見ていて、非常に大切なものを感じたのである。
そういったことで、よく取り上げられるのは、アメリカインディアンや、オーストラリアのアボリジニなどだが、彼らが深い叡智を持っているだけでなく、霊的な力を有していると言われることもある。
アメリカの作家マルロ・モーガンの『ミュータント・メッセージ』には、オーストラリアの原住民アボリジニ族の人々が持つ超常的な力が描かれている。この本は、ノンフィクションとして出版され、世界的ベストセラーになった。
たが、出版後、主にアボリジニに関する記述の誤りが指摘され、また、アボリジニ自体からの抗議を受け、この本は後に、フィクションとして再刊行された。
もしかしたら、本を売るために、著者のモーガンや出版社が創作を織り交ぜた可能性もあるが、全て嘘とは限らない。
それで言えば、アメリカインディアンに関する話にも、相当な嘘があるだろうが、貴重な真実もあるはずである。
大自然の中で育った不思議な人物とまではいかなくても、いわゆる田舎者が、都会の人間にない優れた特質を見せることは、多くの人が知っていると思う。
昭和のプロレスの大スターだったジャイアント馬場さん(同期の桜のアントニオ猪木さんが今も熱い)のライバルで親友だった、テキサス出身の超大物レスラー、ドリー・ファンク・ジュニアという人が、ある意味、まさに超田舎者だった。
馬場さんは、このドリーを「これほどボケーっとした男はめったにいるもんじゃない」と言う。
物忘れの激しいことは想像以上で、試合用具を忘れて会場入りするなどザラ。
時間の観念はゼロで、集合時間に来たためしはなく、いつも最後にノンビリやって来る。
試合後に会場を出るのも最後。着替えるのに人の何十倍も時間がかかる。
馬場さんは「こいつ、シンから阿呆なのか」と思いたくなると言い、「テキサスの広大な大地で育つと、人間はこうも鷹揚(おうよう。鷹が飛ぶように悠然としていること)になるのか」と著書に書いている。
だが、ドリーは恐ろしくいい男で、人望が厚く、ドリーのためなら、いつでもどこでもすっ飛んでいくというレスラーが全米中にいくらでもいると言う。
そして、ドリーは、プロレスラーとしても、世界ヘビー級タイトルを、当時としては史上2位の、4年3か月保持した。プロレスという巨大なショービジネスの世界で、ここまで成功した実力は驚異的なものだ。
それもまた、鷹揚な、超田舎者の力があってこそと思うのだ。
フィクションとはいえ、不思議なリアリティを感じるのが、野尻抱介さんのSF小説が原作のアニメ『ロケットガール』に登場する、架空の島であるアクシオ島で育った、やはり架空の民族であるタリホ族の16歳の少女マツリだ。
マツリは、恐ろしく高い木のてっぺんに平気で昇り、そこで飛び跳ねて見せる怖いもの知らずの157cm、38.5kgの、日本人を父に持つ少女である。
宇宙飛行士になる過酷な訓練を笑って耐え、猛獣が棲むジャングルでも、宇宙で危機的な状況になっても、まるで不安を感じず平然としている。
そして、精霊を信じる彼女は、本当に精霊に守られているような幸運を、当たり前のように引き寄せる。
彼女のように、馬鹿のように楽天的で、いつも「大丈夫だよ」と確信して言うのは、科学的にも優れた能力であることが認められている場合も多い。
マツリの、うまくいくと決めつける子供のような態度、あるいは、お守りとか神様のようなものが自分や仲間を守ってくれることを、子供のように疑うことなく信じる心の性質が、実際的な力になるのである。まあ、うまくいかないならいかないで、それも神の意思として受け入れるのだろう。
その通りに出来るかは分からないが、私はマツリを見ていて、非常に大切なものを感じたのである。