アメリカのトランプ大統領が、大統領就任直後から、メキシコ国境に壁の建設を始めたことはご存じと思う。
これに対し、現在、トランプ氏と大統領選挙で争っているバイデン氏は、「自分が大統領になったら、壁を撤廃する」と言う。
アメリカのマスコミは、概ね、国境の壁を否定的に報道し、日本のマスコミは揃って(アメリカの特定のマスメディアに従い)、「トランプの愚かな発令」と報道していると思う。

昨夜、このメキシコ国境の壁に関する取材番組があった。
要は、こういうことだ。
これまでにも、アメリカとメキシコの国境には有刺鉄線が張られていたが、大して高くはなく、電流が流れている訳でもないので、簡単に超えられる(番組では81歳の小柄な老人男性がまたいで超えられることを示した)。
警備隊もいるのだろうが、国境は広いので、ほとんどいないも同然である。
よって、「簡単に国境を超えられる場所」として、難民もだが、麻薬密売人などの犯罪者も数多く、ここを通ってアメリカに不法入国している。
そんな事情があるので、ここに、超えることが不可能な、高くて頑丈な壁を建造中なのである。
この国境の壁に対する態度は2つに分かれる。
一方は、肯定派と言うより歓迎派だ。
周辺に住むアメリカ人にとっては、犯罪者や逃亡者、また、素性の知れない難民といった者達への不安や恐怖から解放される。
国の警備隊員が少ないので、自警団が組織され、地元のアメリカ人を守っているが、当然、ボランティアの素人自警団には危険も伴う。
自警団に参加する人達は当然、国境の壁を歓迎する。
そして、もう一方は、国境の壁に、恨みや絶望を感じる者達・・・それは多くの難民だ。
祖国で蹂躙され、難民になって命からがら、この「ゆるい国境」にたどり着いても、国境の壁があると、アメリカに入ることが出来ないのである。
多くの難民にとって、トランプに「死ね」と言われたと同然に感じる訳だ。

世界的に、人道的な立場だけでなく、労働力として難民を受け入れるべきだという考え方も広まっている。
生きるのに必死な難民というのは、熱心に働くので、素晴らしい労働力になっているのである(それが地元民の失業につながることも多い)。
だが、難民と一緒に犯罪者が入って来ることも多く、また、難民の中にも悪い人間がいて、入国先の人間が被害に遭うことも当然ある。
問題は複雑だ。
だが、メキシコ国境から多くの犯罪者が入って来ているのだから、壁は必要というのがトランプの判断であり、それ自体は正しいのだと思う。

いかなることも、それぞれの立場で、善いか悪いかに分かれることがある。
一方から見れば、有り難く素晴らしいことでも、他方から見れば、恐ろしいほど悪いことである場合もあるのだ。
そこで争いが起こる。
こんな問題を解決するには、本当に優秀な人がいなくてはならない。
しかし、学校の勉強を熱心にやり、試験で良い点を取れることと、こんな問題を解決出来る本当の優秀さとは、あまり関係がない。
本を沢山読んだだけでは、こんな難しい問題に対し、全くの無能だ。
数学の秀才が「僕なら数学のロジックで論理的に解決して見せる」と言うのは、その秀才が本当は馬鹿だという証拠である。
「論理で解決出来ることではない」と気付くことが、最低限の知性であるのに、それすらないのだからだ。
まあ、さしずめ、その「論理」は、「壁を建造し、難民受け入れ所も設置する」程度かもしれないが、そんなこと、あまり賢くない子供でも分かることで、それをやった際の問題点を数十程度考えられることが・・・まあ、本来は中学生程度の知恵だろう。
つまり、自分の身体で覚えた経験がないと、本当にものを考えることは出来ないのである。
その経験は、辛かったり、苦しかったりするし、ものすごく恥もかくだろう。
知恵がないうちは、恥をかくのが当たり前だし、それを大人が、「恥をかかせたら子供が可哀そう」と、恥ずかしくないようにかばってしまうと、もう知恵は得られない。
辛いことや恥をかくことが絶対に嫌で、いい歳になっても教科書に頼り、大勢に従うだけで経験から逃げると、知恵のない中年、老人になるしかない。それは惨めなものだ。
概ねであるが、公務員・・・中でも学校の教師、あるいは、塾や予備校の講師になると、そんな危険が多いように思う。
だから、子供は、広い世界に出て冒険をする元気と勇気のある人間に育てないといけない。
勉強なんて、あまり出来なくても構わないから。
少々、歪んだ考え方を持っていても、世の中に出れば、叩き直される。
だから、「元気があれば何でも出来る」というのは、本当は「元気があればスタートラインに立つ準備が出来る」ということなのだと思う。

追記
沢山のお誕生日お祝いメッセージ、ありがとうございました。
お祝いメッセージだけの場合、公開しませんが、読ませていただいています。