嘘を言う人がいる。
ある日、書店で、私は、一冊の本の表紙に(だいたい)こう書かれているのを見た。
「神話が忘れられた国は亡びる」
これが本当かと言うと、私は嘘と思う。
本の表紙にこう書いたのは、それで本が売れると思ったからだろう。
ところで、神話の研究者にも、そう(神話が忘れられた国は亡びると)言う人がいそうだ。
なぜ、そんなことを言うのかというと、自分が研究者として生き残るためだ。

だいたい、1つの国にいろんな神話があるし、同じ神話と思われるものでも、地方によってかなり異なる。
そんな曖昧なものに国の運命がかかっているわけがない。
昔の王様が「われらは偉大な〇〇神の子孫である」などと言うのも、単に、国民を洗脳して、うまいこと従わせるためであり、それが国が存続する必須条件のはずがなく、むしろ、国が滅ぶ要因になる可能性が高いと思う。

だいたい、人間が自分の遠いルーツを知りたいと思うだろうか?
たとえ思うとしても、それを神話に求めるのは、迷信の時代の人々だけであるが、迷信の時代の人々だって、そう思うよう洗脳された場合にのみ、自分の起源を神話に求めようとするだけである。
今や、人間の起源が科学的に研究されているが、根本的な解明はほとんど不可能なのだ。
しかし、それが原因で国や人類が滅んだりはしない。

国や人類が滅ぶか、繁栄するかは、神話などとは全く違うものによるはずだ。
仮に神話で国が一時的に栄えても、異なる神話を持つ国と争うようなことが起こる。
それなら、むしろ、神話は害悪かもしれない。
だが、それも言い過ぎだろう。
神話は、穏やかな心で見る限り、やはり良いものである。
だが、こう言うと反発を買うかもしれないが、それほどのものでもないのである。
そもそも、日本の神話である『古事記』は、権力者によって、都合の良いように改ざんされているという説もある。

では、国や人類を、本当の意味で繁栄させるものは何だろうか?

1963年のアニメ『エイトマン』の、原作者の平井和正氏が脚本を書いた最終回は、スーパーロボットである主人公、エイトマンを作った谷博士の言葉で終わる。
全く正確ではないが、こんな言葉だったと思う。
「人を思いやる温かい心だけが人類が生き延びる道であると私は信じる」
こう言うと、「じゃあ、平井和正は本当にそう思っていたのか?」と言う者がいるかもしれないが、おそらく、そう思っていただろう。
なぜって、他にないじゃないか?
あまりに当たり前で、私ですら分かることだ。
そりゃ、神話だって大事かもしれない。
しかし、我々の存続のためというなら、その当たり前のことよりずっと落ちることに異論はあるまい。








  
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