アメリカの学園もののテレビドラマで、こんなものがあった。
ジュニアハイスクール(中学校)のオリエンテーションで、小グループに分かれて登山みたいなことをするのだが、1人の少年が「登山に慣れている」からとグループのリーダーになる。
その少年は、確かに登山の知識豊富で、的確にグループを導き、立派にリーダーを務めていたが、不測の事態が発生した時、その少年はすっかり怯えてしまい、本当は登山なんてやったことはないと白状する。彼は、単に、本を読んで登山の知識を得ただけだった。
しかし、その少年は、グループの子達の協力を得て、無事困難を乗り越え、結果的に、チーム活動としては良いリーダーだった。

経験がモノを言う・・・というのも一面の真理だが、案外にそうではない。
初めて女の子とデートする少年が、デートコースを事前に丹念に調査し、シミュレーションを行い、トイレの場所までしっかり把握し、十分に女の子を楽しませることも珍しくはなく、むしろ、最初のデートが一番うまくいったなんて人も少なくない。
戦国時代にも、初陣(初めての戦)が非常に充実していたので、戦好きになったという武将の話もある。
自分に経験がないことで謙虚になり、事前の準備を怠らず、緊張感を持って臨むことが良い結果につながることが多いのである。

私は、最初のシステム開発の仕事は、1人で請け負って、ある会社の分析システムを作ったのだが、初めてその会社を訪問した時、自分は経験豊富なシステムエンジニアであると言い、堂々と振る舞ったものだった。仕事は、苦労はしたが、「さすがベテラン」と言ってもらえたのである。
『実録!天才プログラマー』という本だったと思うが、ある駆け出しプログラマーが、営業先の担当者から、あるプログラミング言語の経験があるかと聞かれた時、そのプログラマーは馬鹿にするように笑いながら「3年もやってるよ」と言い、仕事を受託すると、本屋に駆け込んで、そのプログラミング言語の本を買って帰った。実は、全く知らないプログラミング言語だったのだ。

マイケル.J.フォックス主演の映画『摩天楼(ニューヨーク)はバラ色に』で、カンザスの田舎からニューヨークに出て来た青年ブラントリーは、就職を希望する会社で「経験者しか雇わない」と言われると、「仕事しないと経験を積めないじゃないですか?」と言い返す。
すると、相手に「経験を積ませると、辞めて他所にいっちゃうから雇わない」と言われる。経験の価値を面白く表現しているが、そんな経験が、どれほどのものだろう。

医者のように、インターン(就業前の実務体験)を積むのが普通の仕事もあるし、ある程度の経験がないと使いものにならないような仕事も確かにある。
だが、決して易しくない仕事でも、全くのビギナーが活躍することも案外に珍しくないばかりか、むしろ、下手な経験がない方が良いことだってある。
そして、今は、経験があてにならなかったり、経験者が誰もいないような場面が少なくない時代なのだ。
そして、半端な経験なら、無い方が良いことが多いが、今後は、ますます、そうなっていくのではと思う。

そして、私には、こんな鮮烈な思い出がある。
18歳の、偏差値の低い高校を出たばかりの男を、簡単な補助のバイトに雇ったのだが、こいつが(笑)、意外なことに、エラく役に立つのである。
何かの実務経験があるわけではないし、馬鹿ではないが、それほど地頭が良いわけでもない。
私は、彼に非常に興味を持ったのだが、私の上司の課長も同じようだった。
なんと、その若者は、その課長の麻雀の面子を揃えるといったことも、うまくやってしまうし(笑)、宴会の幹事も出来る。本当に18歳か。
人間として根本的に優秀なのだ。頭良くないのに(笑)。
で、その能力の秘密が分かった・・・ように思えた(笑)。いや、だいたい確かだった。
作品名は忘れたが(というより覚えなかった)、彼は、ある長編漫画(きっと傑作なのだろう)の熱烈な愛読者で、何十回と読み込んでいたのだ。
彼は、その漫画から、人生の全てを学んでいたのだった。
下手な勉強なんかするより、素晴らしい漫画(別に小説でも良いが)を、暗記するまでに読むことだ。
いや、これこそが本当の勉強である。
ちなみに、私も敬愛する我が国の至宝、チームラボの猪子寿之社長の唯一の愛読書は漫画の『攻殻機動隊』であるらしい。








  
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