2005年に、アップル共同創業者で、当時、CEO(最高経営責任者)であったスティーブ・ジョブズが、スタンフォード大学の卒業式で行った講演は名スピーチとしてよく知られている。
私も、素晴らしいスピーチであったと思う。
しかし、その中に、明らかな疑問点が1つある。
それは、ジョブズが、リード大学を退学後に、リード大学の講義を受講していたことだ。無断受講である。
経緯はこうだ。
ジョブズは里親の元で育てられた。
ジョブズを産んだ母親は、当時、大学生で、ジョブズを育てることが出来なかった。
ジョブズの母親は、ジョブズを里子に出すことにしたが、彼女は、里親になる夫婦は大学を卒業していることを条件にした。
だが、ジョブズを欲しいと申し出た夫婦は大学を出ておらず、夫にいたっては高校も出ていなかった。
しかし、他に里親の申し出がなく、ジョブズの母親は、ジョブズを大学に進学させることを条件に、その夫婦にジョブズを渡した。
ジョブズはリード大学を選んで入学した。この名門私立大学は、今では年間授業料は800万円くらいと思うが、当時もやはり高額であった。
ジョブズは、自分の学費で、里親夫婦が一生をかけて作った貯えが消えることに気付き、退学することにしたと言う。
だが、退学後もジョブズは、大学の寮の友人の部屋に住み、好きな講義を受講した。
その中で、カリグラフィー(文字装飾の手法)の講義は、後にアップルでマッキントッシュパソコンを開発する際に大いに役に立ったという。
とはいえ、講義を無断で受講したのは、おそらく、違法行為である。しかも、恐ろしく高い学費の講義だ。

加藤泰三さんの『大学で何を学ぶか』(1979)という、ロングセラーの書籍がある。
その中に、こんな話があったと思う。
ある大学で、その大学の学生でない者が、講義を受講していた。
講義をしていた教授も、その者がこの大学の学生でないことは分かっていたが、「嫌々受講している学生より、本当に聴きたい者に教える方が良い」として、放っておいた。
しかし、それは、その教授の勝手な言い分である。
「堅いことを言うな」という問題ではない。
特別な許可でもない限り、所属する学生のみが講義を受講出来るというのは、遵守すべきルールである。
「バレなければ」「怒られなければ」やっていいということではない。
皆が、ルールを破って自分勝手なことをしたら、どんなことになるか、少しでも想像力があれば分かることである。

タイトルを出したくないが、あるアニメ映画を見て、私は愕然とした。
ある大学の教室で、一人の男子が真面目に講義を受講してた(ノートをしっかり取っていた)。
主人公と思える女子学生が、その男子に一目惚れでもしたのか、その男子に話しかける。その男子は、すらりとしたイケメンで、話し方もクールでとても格好良いと思う。
だが、その男子は、自分は、この大学の学生ではないと言う・・・クールに格好良くね。いや、そこは、せめて後ろめたい表情で、あるいは、恥じらいながら言うべきだろう。
その男子が講義を(無断)受講する様子も、堂々としており、全く悪びれた感じがない。
それだけではない。
2人は仲良くなるが、駅の改札で、一人が定期券カードで改札を開くと、もう一人が、そのまま定期券なしで素早く通り抜ける。
立派な犯罪なのに、「楽しいこと」「愉快なこと」という雰囲気で描いている。
それは、たとえば、スーパーやコンビニで、一人が監視カメラや店員の目を誤魔化し、一人が万引きをすることも、そんなふうに「やりぃ!」といった雰囲気で描くのと何ら変わらない。
こんなものを、子供(中学生や高校生も含む)が見たら、彼らにどんな影響を与えるだろうか?

日本でも、人々のモラルが深刻に低下している。
正直、私は、その原因が分からなかった。
なぜ、ここまで(自分も含むが)人々のモラルが低下したのだろう。
だが、その説明がつく1つの話があった。
旧ソ連の元スパイであったユーリ・ベズメノフが、1984年くらいのアメリカのテレビインタビューで、
「社会主義国家が民主主義国家を侵略するには、その国の学校やマスコミに潜入して支配し、若者のモラルを破壊する。モラルを破壊された人間は正しい判断が出来なくなる」
といったことを言っていた。
かつて経済大国であった旧ソ連(1960年ではGDP世界2位)や、その他の社会主義国家の策略であるかどうかは分からないが、学校やマスコミが、日本人のモラルを破壊したのは確かと思う。
もちろん日本にも、モラル、良識、良心を持った人間はいるが、モラルのない人間が国を支配している。
もう滅んだ方がマシというレベルに達したら滅ぼしてやり直そう・・・といったノアの方舟のようなことが起こるのではないかと少し思うことがある。
私は、たとえ滅ぶとしても、失ったモラルを取り戻そうと思う。








  
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