「セレンディピティ」という言葉を説明しようとすると、ちょっと気後れを感じる。
難しい言葉ではないはずなのだが、この言葉について語る人は皆、どこか煮え切らない、歯切れの悪い、明晰さに欠ける・・・といった、妙にぐにゃぐにゃした言い方をする・・・ように感じる。
例えば、Wikipediaを見れば、今のところ、

素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

と、分かったような分からないようなことが書かれているし、goo辞書では、

求めずして思わぬ発見をする能力。思いがけないものの発見。運よく発見したもの。偶然の発見。

とある。
やはり、ちょっと分かり難いと思う。
また、Wikipediaに、こんな記述がある。

(セレンディピティは)「偶察力」と訳される場合もあるが、確固とした訳語は定まっていない。精神科医の中井久夫は『徴候・記憶・外傷』(みすず書房2004年)で「徴候的知」と呼んでいる。

もう勘弁して欲しい(笑)。

私は、ある時まで、「セレンディピティ」という言葉自体、知らなかった。
教えてくれたのは、ある公立大学の教授で、学部長を務めておられた工学博士だった(その数年後、学長になられた)。
その工学博士を呼び、数人のグループで勉強会みたいなものをしたのだが、その時に、その工学博士が、
「いまどき、セレンディピティを知らないようでは知識人とは言えない」
と言われた。まあ、私は知らなかったのであるが(笑)。
他の人達が、どれほど知っていたかは分からないが、物知りそうな1人のメンバーは「言葉は知っていたし、何となくは分かっていたが、はっきりとは知らなかった」と言ったが、まあ、皆、そんなところと思う。
ところが、その工学博士は、意外にも、シンプルに教えてくれた。
その人が教えてくれたセレンディピティの意味は、
「幸運な偶然を起こす力」
だった。
その後、ずっと、この定義で不足を感じたことはない。
5年程前、私は、北海道のクリプトン・フューチャー・メディア(初音ミクさんの会社)の伊藤博之社長の、神戸での講演会に行った。
その講演で、伊藤社長は、好きなことをやり続けることの大切さを説き、
「好きなことをやり続けていれば、セレンディピティが起こります」
と言われたが、おかげで、私は意味がよく分かった。
つまり、
「好きなことをやり続ければ、飛躍のきっかけとなる幸運な偶然が起こる」
あるいは、
「好きなことをやり続ければ、飛躍のきっかけとなる幸運な偶然を引き寄せる力が得られる」
のだと思う。

私は、クオン株式会社が、株式会社エイベック研究所だった時、この会社の広報誌である「Q-O-N(クオン)」の1冊(裏表紙含めて39ページ)を送ってもらったことがあるが、その回のメインは、伊藤博之社長とエイベック(現クオン)の武田隆社長の対談で、その中で、伊藤社長の物語が語られていたが、それはまさに、セレンディピティの言葉の元になった『セレンディップの三人の王子たち』にも劣らないセレンディピティの物語で、大変に面白く、そして、勉強になった。
伊藤社長は、若い時に、6畳半1間の部屋に住んでおられたが、そこには、コンピューターとシンセサイザー10台があり、Memory Moog という巨大なシンセサイザーの上に板を敷き、その上でご飯を食べていたと書かれていた。そんな感じで電子音楽を続けられ、長い年月の間にいろいろあった中で、セレンディピティが何度か起こり、ついに初音ミクさんが生まれることになったのだと思う。
この対談は、以前はダイヤモンド社のWebサイト「ダイヤモンド・オンライン」で公開されていたが、今は残念ながら公開終了しているようである。

では、セレンディピティを起こすには、好きなことをやり続ければ良いのであるが、なかなか思うようには生きられない人が多い。
だが、私がいつも言うように、たゆまず真言を唱えていれば、少なくとも、小さなセレンディピティはよく起こると思う。
セレンディピティは1つの奇跡のようなもので、真言によって、奇跡が起こる原理は度々書いたが、それならば、真言がセレンディピティを起こしても、不思議なこととは思わない。
伊藤社長のような大きな成功をするには、いろんな要因もあり、我々が必ずしも初音ミクさんのような良いものを生み出せるとは限らないが、セレンディピティを生み出すに足ることをしていれば、世の中を明るくし、自分も楽しくなれるだろう。
そして、真言以上の善はなく、たゆまず真言を唱えていれば、何か面白いことを楽に続けられる偶然に恵まれると思う。








  
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