念仏というものは、実は、大変に力がある魔法の言葉であるということを、ほとんどの人が知らない。
ぽろっと1回唱えただけで、小さな病気なら治ってしまうし、事故を免れたり、好きな人がいれば、その人となんとなくうまくいってしまうこともある。
しかし、そんなことを信じている人はいないだろう。
だが、それもやむを得ない面がある。
現代人がものごとを信じるパターンというのは3つである。
1つは、教科書に書いていること。
1つは、製品になって流通していること。
1つは、原理が理解出来ること。
例えば、現代人は風邪薬が効くことを信じているが、薬品が良いことは教科書に書かれているし、薬品はCMで放映されている(流通している)。薬品が効く原理の方は、はっきりとは分からないとしても、ぼんやりと分かるような気がするし、また、勉強しさえすれば分かるのではないかと予想される。
一般の人が、なんだかんだ言いながら、風邪薬を信用している理由がこれで分かるのである。
では、念仏はどうかというと、念仏が効くということは、経典やその解説書には書かれているが、教科書のような権威は全くない。
念仏は製品になって流通していない。
念仏が効く原理などは全く分からない。
よって、誰も信じていないのである。

しかし、本当は、念仏には大変な力があり、正しく唱えれば、一切の問題が解決し救われるのである。
ただ、宗教界の念仏が偽物と言うつもりは全くないが、あれは、ここで言う、力のある念仏とは全く別物と考えた方が良いかもしれない。
宗教界の念仏は、お葬式などの儀式のためのもので、あれはあれで、もちろん必要であるが、やはり、力の念仏とは別のものなのである。

力の念仏の教科書は、龍樹(りゅうじゅ)という、釈迦に近いと言われた天才宗教家が書いた『十住毘婆沙論(じゅうじゅうびばしゃろん)』の中の「易行品」である。
もちろん、政府や教育委員会の権威は与えられていないが、それをはるかに超えるものだ。
言ってみれば、宇宙的な権威は認められていると思う。それほどのものだ。
ただ、難しいと言えば難しい。学校的な意味の難しさとは異なるが、難しいことは確かである。しかし、学校的な難しさとは違い、大学者には難しくても、子供が簡単に理解することはある。
参考書的には、親鸞の『教行信証』や法然の『選択本願念仏集』がある。
特に、『教行信証』はやや難しいし、いずれも、やや特定の思想が含まれるので、優れた参考書ではあっても、教科書にはなり難い。
そして、力の念仏も、製品にはなっていないが、そもそも無料なので、製品にはならない。
しかし、原理に関しては、龍樹の『十住毘婆沙論』や、その元となる経典で分かっているのである。
けれども、力があり過ぎるので、あまり簡単な教科書には、なかなかならないと思う。

ただ、力の念仏というのは、阿弥陀如来の名なのである。
「南無阿弥陀仏」という念仏は、おそらく、中国で発明されたものだ。
だから、「南無阿弥陀仏はインドではどう発音するのですか?」と聞かれても、答えられる人はいないと思う。
本来なら、「ナーマス・アミターバ」になるのではと思うが、そんな言葉はないと思う。類した言い方はあるかもしれないし、それが中国の念仏に影響を与えた可能性もあるが、やはり、あったとしても、後世の発明であろう。
力の念仏とは、インドで言えば、「アミターバ」と言う、阿弥陀如来の本来の名である。
アミターバという仏には、アミタ―ユスという名もあると言われるが、アミタ―ユスは別の仏の名なのではないかと思うし、実際、アミタ―ユスという名の仏はいるようである。
日本では、アミターバは「阿弥陀」で定着しているので、これが、力の念仏である。
また、「阿弥陀仏」で仏の名と認識されている場合が多いと思うので、「阿弥陀仏」もまた、力の念仏の言葉である。
ただ、様々な事情を知った上で、中国の高僧や、法然、親鸞は、「南無阿弥陀仏」という言葉の利点を認めたわけで、「南無阿弥陀仏」もやはり力の念仏として良いのである。
よって、念仏を唱える時、「南無阿弥陀仏」「阿弥陀」「阿弥陀仏」のどれを唱えても構わない。

そして、お坊様の「なーんまいだー」という唱え方に馴染みがあり、しかも、好感を持っているなら、それを唱えても良い。
ただ、本来は、節や曲はない。
静かに、丁寧に心で唱える念仏に最大の力がある。
その意味では、やはり、力の念仏と儀式用の念仏は全く別物である。

ここでは、区別のため、「力の念仏」と書いたが、もちろん、ただの「念仏」である。
しかし、本来は、「称名」と呼ぶべきなのである。
そして、現代人はほとんど知らないが、念仏は驚くべき力がある真言で、その意味では呪文とも言える。
もちろん、力あるものは、悪い使い方をすれば、悪い作用が自分に帰って来る。
だが、使い方は自由である。
具体的に細かな願いを立てず、ただ念仏して、後は強大な力にまかせておけば悪いようにはならない。








  
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