H.G.ウェルズの1898年のSF『宇宙戦争』では、火星人が地球侵略にやって来る。
火星人の科学技術は地球人のものと比較にならないほど進んでいて、火星人の武力攻撃の前に、地球人は全く抵抗が出来ないまま最後を迎えようとしていた。
ところが、不意に火星人の攻撃が止まる。
火星人は地球のウイルスに感染し、死に絶えてしまったのだ。
19世紀に、今も読まれる作品を書いたウェルズの知識や想像力は大変なものであるが、実際、彼の『タイムマシン』『堀についたドア』『世界はこうなる』その他数多くの作品は、これからもずっと読み続けられるに違いない。

ところで、『宇宙戦争』で、地球のウイルスにやられてしまった火星人であるが、あれほどの科学力を持った火星人が、ウイルス対策をしないはずはない。
1969年に、アメリカのアポロ11号が月に人間を初めて送った時でさえ、月に未知のウイルスが存在することが想定され、宇宙飛行士達は帰還後、長く隔離された。
小説とはいえ、ウェルズだって、火星人にウイルスの知識がないとは思っていなかったと思う。
つまり・・・
火星人は、ちゃんとウイルス対策をしていたのだ。
だが、ウイルスは、火星人の想定を超えて突然変異をして、火星人を短時間で滅ぼしてしまったのだ。
そして、それは偶然ではない。
武力で弱い相手を滅ぼすという、神の摂理(意思)に反する意思を持ったがために、ウイルスが、そんな火星人の意思に反応して、火星人の敵になったのだ。

遺伝子情報は、人間の意志に反応して変化し、結果、細胞の性質や働きを変えることがあるという。
人間の意志が素粒子に影響を与えることは知られているが、万物は素粒子から出来ているのだから、結局のところ、人間の意思は世界に影響を与える。
そして、小さいものであるほど明確な影響を与えるのかもしれない。
ウイルスは原子の100~1000倍くらいの大きさだと思うが、そのくらいの大きさだと、即時とはいかないまでも、かなりはっきりとした影響を与えるのだと思う。
これまでに、地球規模で猛威を振るったウイルスは、人類全体の意思に反応して変化したものではないかと思えるのである。
それは、ウェルズの『宇宙戦争』で、火星人の邪まな意思によって地球のウイルスが変化したと思われるようにである。
最近の映画では、進歩した宇宙人にとって、地球人があまりに下等なので、宇宙人は悪意なく地球人類を消そうとしたという考え方も示された。
丁度、我々が家やガレージを作る際、そこにあるアリの巣を排除することに対して、何も考えないようなものだ。
また、我々はビーフステーキを美味しく食べても、牛が「美味しいステーキ」用に飼育される地獄のような環境や屠殺(とさつ)現場を知っている人はほとんどいない。
そして、今の人類は、やはり、神の摂理に反することをやり過ぎているのだと思う。
自分が儲けて贅沢をするためなら、他人がどうなっても全く構わないというところは、ちょっと周りを見てもいくらでもある。

人間の意志の作用というものを考えれば、単に宗教的というだけでなく、ウイルスや天災といったものも、人類の在り様に対する反作用、あるいは、自然の逆襲であるという考え方をしても良いのではと思う。
人間は、心穏かでなくては健康を損なうことが多い。
心穏かであるためには、1つには経済的な安定も必要であるが、つまるところ、他人、他の生き物、さらには、無生物を含むあらゆるもの、自然、惑星に対する心の持ち様が大切と思える。まず、他人に対して優しいということが最低レベルであるが、我々はそれすら失っていることが多い。それは、親切な人が際立ってしまうことからも実感するのである。
カート・ヴォネガットが知り合いの若者に言ったらしい。
「私の知る限り、この星の決まりごとは1つだ。人に優しくしろ」
それでウイルスが収まるかどうかは不明であるが、少なくとも、今よりはマシになることは容易に想像出来るのである。








  
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