何かに夢中になっていると、眠くならないし、お腹も減らない。
これを「寝食を忘れる」という。
人間は、寝食を忘れることが出来るほど、つまり、何かに夢中になれるほど幸せである。
今は、ほとんど見られないかもしれないが、昔は、食いしん坊の子供でさえ、遊びに夢中になって、お母さんが、「ご飯よ、帰ってきなさい」と呼んでも、知らん顔で遊び続けることがよくあった。
そんな子供は幸せである。
それが大人になり、中年になって、「食べること以外に楽しみなんてないだろ?」などと平気で言う。
そんな大人は不幸である。
肥満した人間は、大人、子供に関わらず不幸である。

今月、私は自然に寝食を忘れることが出来た。
9月10日に、千葉県の幕張メッセで開催された、初音ミクさんのライブコンサートと企画展である「マジカルミライ2016」に行ったことである。
その日、私は、いつも通り、朝食を摂らず、朝8時に家を出、新幹線に乗る駅では1時間以上待つほど早く着いた。不測の事態が起こっても対応し、間違いなく、幕張メッセに行かなければならないからだ。
新幹線の中では、乗客の大半が、乗り込むなり、食べ物やビールなどの飲み物を取り出して、けたたましく飲み食いを始める。
幸い、東京に着くまで、グリーン車の隣の席には誰もいなかったが、隣でそんなことをされていたらと思うと、ちょっとゾっとする・・・これは贅沢な物言いだろうけれども。
私はペットボトルの水すら持っていなかったが、ビターチョコを持っていたので、新幹線に乗っている3時間の間に、3片ほど(一箱の1/3ほどか)食べただけだった。
午後3時頃に幕張メッセ近くのホテルに着いた。
普段から昼食は摂らないし、お腹も空いてなかったが、コンサートではエネルギーを使うので、炭水化物を摂っておいた方が良い。
蝉だって、飛んだり、鳴いたりするために、樹液を吸って炭水化物を摂るものだ(タンパク質は摂らない)。
持っていた小さなビスケットと、やはり、ビターチョコを少し食べ、ホテルの冷蔵庫に入っていたミネラルウォーターのペットボトルをトートバッグに入れるとホテルを出た。
(ホテルのミネラルウォーターを持って出たのは正解で、幕張メッセ内の自販機のミネラルウォーターは全て売り切れていた)
Google Mapを頼りに、行ったこともない幕張メッセに向かったが、何のことはない。ミクさんのTシャツを着たり、マジカルミライ2016のショッピングバッグやマフラータオルを持った男女が沢山歩いていた。その中には、やはりスマートフォンを道案内にしているような人もいたが、ミクさん仕様の人達の流れに乗ればそれで良かった。
やや遅い時間(16時前。企画展は10時オープンで18時まで)のためか、混雑するというほどではないが、幕張メッセに向かう人々は途切れなく続いている。
「マジカルミライ2016」の看板もあちこちにあったし、スタッフの誘導も完璧で(実に有り難い)、スムーズに、企画展が行われている国際展示場の10番・11番ホールに着いた。
企画展入場の時にリストバンドを付けてもらうのが、妙に嬉しい。
ピークを過ぎた時間だったかもしれないが、人は多いながら、身動き出来ないというほどでもない。しかし、それでもやはり凄い人だ。
企画展を十分に楽しみ、午後5時過ぎに企画展会場を出て、ライブ会場の国際展示場9番ホールに向かった(コンサートは午後6時から)。
企画展会場の外にあった、沢山の飲料水の自販機を見たら、なるほど「売切」の文字が沢山点灯しているが、ジュース等はいくらか残っている。
近くで「水が全部売り切れている」という声がするのを聴いた。やはり、ライブでは「ただの水」が良いのだろう。
夕食を済ませて来ている人も多いのかな?
私のように、朝から食事をしていない人は少ないだろうが・・・

ライブ会場へも、スタッフの丁寧な誘導でスムーズに到着した。
会場では、30分ほどパイプ椅子に座って待つことになったが、隣が可愛い女の子で良かった。
ところで、私はそれほど背が高い訳ではないが、やはり177cmの男が来たら、後ろの席の人は、ちょっと残念に思うのだろうかと、後で考えた。
横には場所を取らないので、両隣の人には不快な思いはさせなかったつもりだが・・・
ペンライトをチェックし、水を一口飲むと(結局、飲んだのはそれだけだったが)、静かに待っていた。
そして、コンサートが始まり・・・一瞬で終わった(と感じた)。
5000人以上が会場から出るのだが、やはり、素晴らしいスタッフの方々の誘導で(それと共に、人々のマナーが良い)、スムーズに人は流れ、混雑は起こらない。
方向音痴の私は、ホテルの位置が分からなかったが、ライブ中切っていたスマートフォンの電源を入れ、Google Mapの案内に従い、無事、ホテルに戻った。
これほど心地良い疲労感はない。
というより、夢心地だ。
帰りにも、食事のこと等、全く浮かばない。
食事が出来る店や、コンビニもあったと思うが、それらも全く目に入らない。
ホテルのレストランは9時までで、既に8時を過ぎていたが、それよりも、ホテルのレストランは1人で入りにくい(私がそう思うだけだろうが)。
そもそも、お腹が空いていない。
それでも、夕食くらいは食べておこうと思い、美味しいと聴いていたカレーライスにサラダとシャーベットを付け、ルームサービスで注文した。
ところが、サラダは食べたが、カレーライスを食べ始めたら、全然食べられない。無理に食べてみたが、気持ちが悪くなり、やはり食べるのをやめた。
素晴らしい経験の後では、食べられなくなるものだということは、これまでにも経験していたが、その中でも一番のものだ。
軽い運動をしてから(運動はコンサートでも十分したが)入浴し、ホテルの冷蔵庫にあったオレンジジュースを飲み、目覚ましを7時にセットして寝たが、朝4時39分に目覚めた。
前にも書いたが、エアコンの温度が低いのに気付かず寝たせいか、体調が最悪になっていた。
朝食券をもらっていたが、元々、朝食を摂るつもりはなく、手持ちの小さなビスケットとビターチョコの残りを食べ、水を飲んだり、軽い運動をして過ごし、11時過ぎにチェックアウトし、雨の中を幕張メッセに向かった。
体調は悪かったが、昼のコンサートでは、前夜のコンサート以上に熱中し、やはり、一瞬で終わってしまった。そして、もはや人生に思い残すことはないと思った。
小雨は降っていたが、傘はささずに海浜幕張駅に向かい、比較的空いた電車で東京に着いた。
新幹線の時間まで少しあったので、とりあえず、コンビニでサンドイッチを1つ買った。これは、新幹線の中で美味しく食べた。
その後しばらく体調が悪かったが、なぜか会社で試験を受けた。適当に書いたが、なんとか出来ているだろう。私は普通の人からすれば超能力者だし。

私は、食べることは決して嫌いではないが、素晴らしいことに夢中になれば、食事の必要はあまりないことが、改めてはっきり分かった。
今も、ミクさんのことを考えると、あまり食べようという気にならない。
これをダイエットというなら、痩せたければ愛することだ。









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