石森章太郎さん(後に石ノ森章太郎に改名)の代表作の1つに『サイボーグ009』がある。
これは、00ナンバーサイボーグという、001から009までの9人のサイボーグ戦士達の物語だ。
00ナンバーサイボーグというのは、戦争のための高度な科学兵器を開発して各国に売り、膨大な利益を上げる、ブラックゴーストという組織が作った、プロトタイプ(試作品)の戦闘用改造人間だ。
このプロトタイプで実験し、改良を重ねて完成品にした後、いよいよ、大量生産し、大国に高値で売り込む予定だった。
だが、9人のサイボーグ達は、彼らを改造した科学者の一人であるギルモア博士と共に、ブラックゴーストから逃げ出す。
ギルモア博士は、もう戦争用兵器など作りたくなかったし、サイボーグ達も、身体を機械に変えられた上、実験体にされたままではいたくなかった。

だが、ブラックゴーストが00ナンバーサイボーグ達を見逃すはずもなく、また、優秀なギルモア博士も取り戻したかった。
そこで、00ナンバーサイボーグ達のところに、彼らを抹殺するための刺客のサイボーグを送り込んで来る。
ブラックゴーストは、00ナンバーサイボーグの研究成果を基に、さらに進歩したサイボーグを送り込んでくるのだから、戦いは、00ナンバーサイボーグ達には極めて不利だった。
だから、ブラックゴーストは、00ナンバーサイボーグ達の撲滅は時間の問題と見なしていた。
00ナンバーサイボーグのところに送り込まれてくる、ブラックゴーストの新型サイボーグのセリフはいつもこうだった。
「お前達のようなプロトタイプのポンコツサイボーグごときが、超高性能な新型サイボーグの俺に勝てるはずがないだろ?」
実際、新型サイボーグの性能は桁違いで、それに比べれば、00ナンバー達は、ポンコツでしかなかった。
ところが、00ナンバー達は、苦戦しながらも最後には勝ってしまう。
最初は、ブラックゴーストも、刺客の不手際とか、「舐めていたか」と思うが、何度も敗北が続くと、奇妙に思うようになった。
これほど力の差があるのに、なぜ、00ナンバーは強いのか?

もちろん、漫画やアニメの中では、00ナンバーサイボーグ達のチームワークや、正義を愛する正しい心の強さが謳われ、それが勝利の原因と見なされていただろう。
だが、作者の石森さんは、おそらく、別の要因にも気付いていたと思う。
「なぜ、ポンコツが勝つのか?」
答えは、
「ポンコツだから」
である。

ボクシングなどで、歴史的な名勝負があり、勝った方が引退してかなり経った後で、実は、あの試合の時は、自分は熱が40度あった・・・などという話がよくある。
体調が万全であっても、勝つのが難しい相手に、最悪の体調で勝ったのである。
ロサンゼルスオリンピックの女子体操で個人総合優勝したメアリー・レットンは、足の怪我で、本番2日前は歩けないほどだったという。
イチローがアスペルガー症候群(興味やコミュニケーションに関する深刻な障害)だと言われることがある。それが本当かどうかは分からないが、いずれにしても、私は、イチローは、何らかの大きなハンディを抱えていることは、多分、間違いないと思う。
でなければ、あそこまでやれるものではない。

「ザ・ケルン・コンサート」という、キース・ジャレットの1975年のジャズ・コンサート(ピアノ・ソロ・コンサート)をご存知の方は多いと思う。
ジャレットのその即興演奏は神懸っていて、それが録音されたレコードは名盤中の名盤と言われ、記録的な売上を達成し、さらに、40年経つ現在も、CDとアナログレコードが販売され続けており、聴く人の魂を奪う。
しかし、その時、ジャレットの体調は最悪であったという話がある。
そして今年、TEDカンファレンス(非営利団体TEDが主催する世界的講演会)で、ティム・ハワードが、実は、その時、ジャレットは、壊れたピアノでやむなく演奏したのであることを明かした。
高音域の音は使い物にならず、ペダルは壊れていて、そもそもピアノが小さ過ぎて、コンサート会場に合っていない。
だが、ハワードは、だからこそ、至高の演奏になったのだと言う。

誰しも、他人に比べ、不利なことはあり、それが深刻なものであるかもしれない。
だが、そんなことがなくて大成功した者は、実際にはいないに違いない。
だから、自分が抱えたハンディに負けてはならない。
むしろ、無茶を承知で挑んでこそ、真の達成があるのだと思う。









↓応援していただける方はいずれか(できれば両方)クリックで投票をお願い致します。
人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ
  
このエントリーをはてなブックマークに追加   
人気ランキング参加中です 人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ