私は、スタジオ・ジブリの作品は、そんなに好きな訳ではなかったが、『天空の城ラピュタ』は昔からDVDを持っていたし、ブルーレイが出たら、それも買った。
(一番最初に出たのはレーザーディスクとビデオだったと思うが、私はそれらは持っていない)
DVDにも、ブルーレイにも、絵コンテに音声を付けて、まるごと映像作品にしたものが付いていると思うが、私は熱心に見たことがなかった。
しかし、それは、恐ろしく重要なものだ。
私は、ぴったり700ページという分厚い、『天空の城ラピュタ』の絵コンテ本を持っている(宮崎監督の全ての作品の絵コンテ集が発売されている)。
昔、入手したのだが、なぜ買ったのか不明だ(11年前に買っている)。
だが、アニメ作家を目指すような人にはバイブルに違いない。
宮崎駿監督の天才の秘密は絵コンテにある。
絵コンテとは、漫画・・・というよりは、4コマ漫画のような簡易な絵で、アニメ映画の原型のようなものだ。
さっき、「簡易な絵」と書いたが、それでも、『天空の城ラピュタ』の絵コンテを見ると、非常に細かいと感じる。
それに、やっぱり絵が上手い。
1枚1枚が、「ラフ画」どころか、「芸術作品」だ。
池田満寿夫さんの本で読んだことがあるが、有名な画家の中には、線画が最大の作品という人もいるらしいが、もし、宮崎駿監督がアニメ監督にならなかったら、有名な画家になったかもしれないと勝手に思ってみる。
この絵コンテ本は、1ページ5枚の絵が入っているので、そんな絵が約3500枚ということになる。
本の大きさが「22.4 x 4.4 x 16 cm」(だいたいB5と思う)で、1枚1枚の絵が小さいのが残念だが、かなり楽しめる。
物も、建物も、風景も、そして、特に機械は、かなり精密に描かれている。
そして、人物が素晴らしい。
ヒロインのシータの表情、しぐさなど、まさに、「動いているよう」であり、彼女の身体の柔らかさや神経の繊細さがはっきりと伝わってくる。
やはり、この人、天才だ。

ドワンゴ会長の川上量生さん(カドカワ社長)の『コンテンツの秘密』を見ると、宮崎駿監督は、映画制作の際、まず、どんどん絵コンテを描き、それがある程度たまったら、アニメ制作をスタートするらしい。
脚本はない。言ってみれば、絵コンテが脚本を兼ねているのである。
それで、ストーリーが出来ているのかというと、絵コンテを描きながら考えるのだそうだ。
まさに、絵コンテを描くということが、脚本を書くということにもなっているのだ。
絵コンテを描きながら、初めはゆっくりとお話が展開し、ストーリーを広げるだけ広げて、ラスト30分で必死に結末にまとめるのである。
それで、自然に、スピード感、緊迫感が出て、息つく暇もない展開になり、最高に面白くなるのである。
だが、時には、宮崎監督が「残り30分しかないのに、お話が終わらないよお」と、鈴木プロデューサーに泣きつき、鈴木プロデューサーが「こうすればいいじゃん」と言うと、「それだ!」で決めたこともあったらしい。
ここらは、おそらく万全の計画の基に制作する、海外の・・・例えば、ディズニーアニメと大違いだが、やはりジブリは面白い。

絵コンテには、細かい解説もついている。
『天空の城ラピュタ』放送の度に最高視聴率を出し、今ではツイッターを回線やサーバーの負荷の過多でハングアップの危機に追い込む、パズーとシータが呪文を唱えるシーンには、「二人、青ざめながらも、りんとした声でいう」と書かれている。

宮崎駿監督がなぜ天才かというと、川上量生さんのさきほどの本によると、「脳が見たままに絵を描けるから」である。
普通の人・・・というより、他のアニメ作家でも、なかなかそうは描けないということだと思う。
そんな絵が数千枚だ。
見ていて、脳が活性化されない方がおかしい。
下手な能力開発、自己開発より、宮崎駿監督の絵コンテを見るべきかもしれない。
それに、なんと言ってもシータが可愛い。
ナウシカ、シータ、それに、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスの3人は、(特にクラリスが)宮崎駿監督の理想の女性像なのらしい。
それは、若い人でも同じと思う。
彼女達は、気性も激しいようでいて、案外に自我は少ない。
穏かで、慈愛に満ち、クラリスがルパンに、「空を飛び、湖の水を飲み干す力を与えた」ような、太陽のような、あるいは、宇宙そのもののような存在なのだろう。
3人のうち、誰かを嫁にすれば、人生、楽しいだろうが、やはり、ルパンのように、振り払って去るのが男である。









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