完全に無償で、何かを磨き続けた人が、人生に勝つのではないかと思う。
ボクサーがボクシングの能力を磨くのは当たり前で、それをやったからといって成功するとは限らない。
成功には、才能、努力、戦略、政治力、運ほか、様々な複雑な要因があり、とてもではないが、どうやれば成功するかは分からない。
そして、たまたま成功したとしても、人生に勝ったとは言えない。

荘子は無為とか無用を磨き続け、法然は念仏を磨き、水野南北は少食を磨き、岡田虎二郎は静坐を磨いたが、それらはいずれも、無償の行為だった。
あるいは、便所の下駄を必ず揃えて出るということを、一生磨き続けた人もいる。
それは、ある意味、神に生贄を捧げ続けたということであるが、それをしなくても、何の不都合も起こらず、やったからといって何の得もしないが、決してそれをやめず、磨き、上達し続ける人がいる。それはなぜだろう?それによって、何が得られるのだろう?

法然は1日6万回も念仏を唱えたというが、普通の人がそれを真似することは出来ないし、真似する必要もない。
さすがに1日10回では少ないが、とにかく、磨いているというレベルでやれば良いのだと思う。
例えば、1日百回、それなりに真面目に念仏を唱えれば、1年もやれば、何らかの向上を感じるので、磨いていることになるだろう。

磨いていることは、ことさら秘密にする必要はないが、人に言わず、黙って、隠れてやった方が良いのである。
その方が、ただ磨くという、望ましい磨き方になるからだ。
人に言うと、どうしても、そこに余計な考えや感情が入り込み、作為が起こり、純粋に磨くということをしなくなる可能性がある。
とはいえ、無償で何かを磨き続ける行為というのは、人に誉められるようなことである場合は少ないので、さして気にする必要はないかもしれないが、黙っていられるなら、黙っている方が良いというだけのことである。

武道でも演芸でも芸術でも、達人が教える秘中の秘とは、結局これで、武芸そのもの、絵の描き方そのものを教える前に、弟子が完全に無償で何かを磨き続けるよう導くのである。
それが完全に出来るようになれば、後はそれほど難しくはない。
だが、それが出来ないなら見込みはないので、ある程度の期間は粘り強く導くが、それでも駄目なら見放すしかない。
歌手でも漫才師でも、師匠が、「弟子にこれだけは守るように厳しく言った」というものがあれば、それが、無償で磨き続けるものである。
そして、それは自然で無理のないことである。
ビートたけしさんは、そのまんな東さんやダンカンさんらに、下位の現場スタッフに対しても必ず「さんづけ」で呼び、敬語を使えとか、俺(たけしさん)が年長者と話していたら、たとえ誰でも俺と同等以上に扱え・・・よく覚えていないが、そんな常識的なことを磨き続けさせ、後はまあ、どうでも良いという、まさに超一流の指導をしたので、ちゃんとやれた人は、芸能界では奇跡的な確率で、沢山の弟子が成功したのだろう。
とはいえ、あくまで、成功するために磨くのではなく、ただ磨くのである。

ジェームズ・アレンは、ただ人格だけが成功を決めると言ったが、それではうまくいかないことが分かったので、延々と追加の書を書くハメになったが、それでもダメだった。
人格というのは結果で、それを直接高めることなんて出来ないのだ。
サミュエル・スマイルズの『自助論』も同じと思う。
これらの本は、確かに感動的なのだが、彼ら(アレンやスマイルズ)には、「どうやれば」という部分が欠けているのだ。
また、宗教者の説く「どうやれば」は、難し過ぎるのである。
それよりも、ビートたけしさんが弟子に教えた「これだけは」の方がはるかに役に立つと言うか、それで十分であり、完璧なのである。
ここらは、たけしさんは大学にほとんど通わずに中退し、ただ磨くという目的のためだけに沢山の本を読んで勉強し続けたことで、自ずと真に重要なことを身につけたのだろう。
東京芸大の大学院まで出た坂本龍一さんが、やたら大学や大学院を軽視した発言をするのも、得をするために大学や大学院に行くというのでは駄目だということが、沢山の人を見て分かったからではないかと、勝手に想像している。勝手な想像とはいえ、そのこと(利得のために大学に行くのは駄目)は確実なことである。
アインシュタインも、無償の行為としての学問を重んじ、学位は全く重視していなかった。

何の見返りもなまま、何かを一生磨き続けるつもりになれば、全然良いことがなくても、充実した一生になるだろう。
人間なんて、真珠貝が真珠を育てているようなものなのである。
『海底2万マイル』でもあったと思うが、天然の真珠には見事なものがあるらしい。
真珠貝が、なぜそんなことをするのかは分からないが、我々に良い示唆を与えてくれている。
素晴らしい真珠を作った真珠貝に見返りはないが、真珠に生命を宿したと言えるかもしれない。
我々も、磨いたものの中に永遠に生きるのである。









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