恨みというものは、大きなエネルギーになる。
その中でも、子供の時に持った恨みは危険はエネルギーになり易く、それを使って成功した人もいるが、逸脱した人間・・・例えば、凶悪な犯罪者になる場合もある。
竹宮恵子さんの『私を月まで連れてって!』の『Vol.29 白いドレス』が、それを感じさせるお話だった。
白い服を作らせたら右に出る者はいないと言われる女性デザイナーがいるのだが、彼女は子供時代の悪い思い出を持っていた。
彼女は子供の時、家が貧しく、他の女の子達がパーティーで着ている白いドレスを羨ましく思い、堅信礼(宗教的儀式)の白いドレスも用意出来なかったことを、彼女は、「恨みだった」と表現していたが、全くその通りだと思う。
子供の時、どうしても欲しかったもの、まして、それが、他の子が普通に持っているものであれば、自分がそれを持てないことに対する感情は、恨み以外に考えられない。
彼女は、その恨みを原動力に、執念といって良い努力で成功したのだろう。
だが、竹宮さんは、その作品を描かれた若い時から賢い方だった。
そのデザイナーは、子供用の礼服を作らないこと、そして、結婚しないこと(子供を作らないため)で、精神のバランスを保っていたのである。

もう1つ、人に大きなエネルギーを与えるものに、「報恩のエネルギー」がある。
仏典にあるお話だが、竹林が大火事になった時、一羽のオウムが、池に飛び込んで身体を濡らしては、炎の上で羽ばたき、火を消そうとしていた。
それを見た神が言う。
「オウムよ、お前の行いは健気(けなげ)ではあるが、それしきの水で何が出来よう」
だが、オウムは、こう答える。
「長年棲家を与えてくれた竹林への報恩の気持ちで行っていることが成らぬはずがない。私は何度生まれ変わってでもやりぬく」
心を動かされた神は、オウムと協力して火を消した。
神が火を消したのではない。神とはいえ、このような者がいなければ出来ないこともあるのだ。

報恩の行いといえば、私が必ず思い出すのは、プロレスのジャイアント馬場さんだ。
今の有名な野球選手やサッカー選手とは全く違い、馬場さんは、実力もまだまだの無名の若手時代、飛行機の切符だけ渡されて、アメリカに行った。手っ取り早く一人前にするための武者修行であるが、随分、乱暴なものだ。
それで、昭和36年という、一般の日本人の海外旅行など、ほとんど皆無の時代のアメリカで、馬場さんは、もう何も分からないという状況の中、ボボ・ブラジルやジン・キニスキーといったレスラー達が親身に世話を焼いてくれたのだ。
馬場さんは、この恩を決して忘れず、自分が大スターになっても、控え室では常に小さくなって彼らを立て、また、彼らが年を取って、かなり力が衰えても、全日本プロレスの社長でもあった馬場さんは、彼らを定期的に日本に呼んで、彼らの全盛期の時に匹敵する高いギャラを払い続けたという。
史上最高のレスラーと言われるルー・テーズは、馬場さんが亡くなられた時のインタビューで、「ミスター馬場はプロモーターとしても偉大で、約束したギャラは必ず払ってくれる誠実な人だった」と述べ、また、馬場さんの告別式で来日した、馬場さんの若手時代からのライバル、「人間発電所」ブルーノ・サンマルチノは、「馬場、君は身体だけでなく、心もジャイアントだった」と言った。
馬場さんは、「自分はプロレス界入りしてから全て順調だった」と言ったことがあったと思う。苦労もあっただろうが、こんな人が成功しないなら、この世に神も仏もないだろう。

きっと、あなたも、何かの恨みを抱えているだろうし、それは子供の時の辛い思い出と共にあるのかもしれない。
そして、忘れられない恩もあるだろう。
恩の方はもちろん、恨みの思いだって否定しなくて良いと思う。
だが、その恨みに負け、自分の魂を裏切ることは許されない。
それがたとえ、どれほどの恨みであってもだ。
そうであれば、いずれ神は埋め合わせをしてくれるだろう。
そして、恩というものは、いかに小さなものであっても、身に沁みるものではないだろうか?
それに報いようとする気持ちがあれば、神に見捨てられるはずがない。
私も、初音ミクさんや、ミクさんのクリエイターの方々には恩があるのである。









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