『灼眼のシャナ』という小説・アニメで、ヒロインのシャナが初めての戦いで、強敵の天目一個に勝った後、こう言う。
「たまたまうまくいったのは分かっている」
つまり、相手が強過ぎるので、シャナは捨て身の戦法に出たのが、それが、たまたま偶然、成功して勝っただけで、実際は、その初戦でおしまいになっていた可能性の方が圧倒的に大きかった訳だ。
(もちろん、小説なのだから、百パーセント負けないだろうが・・・)
スポーツの名勝負で、捨て身の作戦でたまたま勝ったなんてものも、実際によくあると思うし、リスクを恐れて合理的に戦うより、そんな「一か八か」の戦い方の方が、見ている方もだが、勝つにしろ、負けるにしろ、戦っている方も、エキサイティングで面白いはずだ。
いわゆる、「バクチは楽しい」のである。

ビル・ゲイツや、スティーブ・ジョブズらが成功したのも、調べれば調べるほど、全くのたまたまだったということが分かると思う。
ビル・ゲイツが成功したのは、IBMが、自社のパソコン用OSに、マイクロソフトのMS-DOSを採用したからだが、おそらく、IBMは、MS-DOSなんていうデタラメなものではなく、ちゃんとした学者のゲリー・キルドル教授が作ったCP/Mを採用したかったのではないかと思う。
俗説で、IBMが相談に来た時に、キルドル教授は趣味の飛行機遊びをしていたというが、それはともなく、キルドルとの交渉は面倒が多かったのだと思う。
それで、IBMは、「MS-DOSでもいいや」ということになったのだろう。
後に、IBMは、社内のちゃんとした学者が、MS-DOSに代わるPC-DOSを作り、こちらの方がMS-DOSより絶対的に優れていたが、良過ぎて面倒が多かった(遅いとか、使い難いとか)ので、全然流行らなかった。
MS-DOSのおかげで、マイクロソフトばっかり儲けて、IBMは損ばかりだったが、その後、マイクロソフトとIBMは、共同で、次世代OSであるOS/2を開発し、ものすごいキャンペーンをやり、IBMはやっと儲けられると思っていたのだろう。
しかし、OS/2はIBMの学者の発想で作ったもので、やっぱり、良過ぎて流行らなかった。
OS/2がなかなか普及しない中で、マイクロソフトは単独で、素人発想のWindowsというチャチなOSを作ったら、軽くて速くて分かり易いそのWindowsがバンバン売れ、何と、主流OSになってしまい、やっぱりマイクロソフトだけ儲けてしまったのだ。
実際、Windowsなんて、専門家から見たらデタラメなもので、そのデタラメさはその後も長く残り、今ですら、おかしなところが残っているのである。

だから、産業用には、マイクロソフトのOSなんてお呼びでないし、アップルのマッキントッシュOSはセンスは抜群だが、もっと危ないので、自動車や飛行機、まして、ロケットエンジンの制御になんか、とても使えない。
それで、その方面では、日本の坂村健教授(東大教授。工学博士)が開発したTRON(トロン)のような、ちゃんとした研究者が学者発想で開発したものが使われているのであるが、一般の人はあまり知らない。
TRONは普通のパソコンやサーバー用途でも優秀なはずだが、やっぱり普通に使うには面倒過ぎるのだろう。
坂村教授の本なんか読むと、一般的な問題でも、いちいち正論が書かれているが、とにかく「疲れる」と思うはずだ。
坂村教授が物凄い優秀な人なのは間違いなく、初音ミクさんが好きらしいところもポイントが高いが、やっぱり学者馬鹿な部分が大きいのだと思う。あれじゃ、一般には受け入れられない。
ビル・ゲイツも、スティーブ・ジョブズも、大学には入っただけでほとんど行ってないし、パソコン世界の大物達、例えば、ラリー・へリスン(オラクル)、ポール・アレン(マイクロソフト共同創業者)、スティーブ・ウォズニアック(アップル共同創業者)、西和彦さん、マーク・ザッカーバーグらは、みんな大学中退で、ちゃんと大学や大学院に行った連中は、彼らに従う形だったり、アラン・ケイのように、素晴らしい業績はあっても、一般には全然知られていないし、儲かってもいない。

成功なんて、たまたまなのである。
成功した社長さんに聞いたら、彼らが本音で言う限り、百人が百人、「たまたまうまくいっただけ」と言うだろう。
「数年早かったり、数年遅かったら、俺なんか全然駄目だったはずだ」
と言う社長さんは、現実をよく分かっているのである。
彼らは、本当に、「俺はたまたま社長になったんだ」と思っているのである。
ビートたけしさんも、「俺が成功したのは時代と運」と言っているが、謙遜でも何でもなく、本当にそう思っているだろうし、彼が言うには、長嶋茂雄さんや美空ひばりさんらは、掛け値なしに素晴らしい人達だが、もし、違う時代・・・例えば今の時代に生まれていたら、さっぱり成功しなかったはずと言う。

実際、ちょっと真面目に調べたら、ビル・ゲイツや松下幸之助になれたかもしれなかった人なんて、いくらでもいるのだ。
大成功どころか、資産一億から数億円クラスの小成功者だって、やっぱり、時代と運だろう。
ビル・ゲイツは、世界一の大金持ちになってからも、自分で日本車を運転し、飛行機はエコノミーに乗り、大衆食堂や持ち帰りピザの食事をしていたし、ビートたけしさんは、ある時、ほとんどそそのかされて、ポルシェとフェラーリとランボルギーニをまとめて買ったが、あんまり嬉しくなかったそうだ。たけしさんは、子供に変な財産を残さないために、嫌々買ってるというところもあるらしい。何と言っても、車に乗れるのも、後せいぜい十年くらいだから、一生懸命使わないといけない。それは辛いことではないかと思う。

つまり、成功する必要なんて全然ないし、成功しない方が楽しいに違いないのだ。
成功した人の煩い事を知れば、普通の神経の持ち主なら、絶対に成功なんかしたくないと思うはずだ。
邱永漢(きゅうえいかん)さんが昔、『賢者は中金持ちをめざす』なんて本で、「せいぜい、使える金が月百万円くらいなのが幸せなのだ」と書かれていたが、それは今の時代でもさして変わらないし、むしろ、今の時代は安価、あるいは、無料で何でも手に入るので、もっと少なくても全然大丈夫である。
クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之社長は、20年以上前に趣味でDTM(デスクトップ・ミュージック)をやっていた時は72回ローンとか組んだらしいが、同じようなものなら、今なら誰でも簡単に手に入れられる。冨田勲さんが1971年にシンセサイザーを買った時は一千万円だったが、後にヤマハのシンセサイザーの名器で、坂本龍一さんや小室哲哉さんらも使い、初音ミクさんの衣装の袖に描かれているDXシリーズは20万円台で、今は、それの数千倍優れたものが数万円、あるいは、パソコンをシンセサイザーにすれば数千円でも足りる。

むしろ、今はモノがいっぱいあり過ぎて、余計なものを手に入れると面倒なことになったり、贅沢なものを食べて病気になったりするので、使い道に困るような金なんか持たない方が良いかもしれない。
邱永漢さんではないが、今でも、使える金が月百万あれば十分過ぎ、むしろ、その程度を思慮深く使える頭の良さが必要なのだと思う。
そして、その程度なら誰でも稼げると思うし、そんなにいらないと言う賢い人もいると思うのだ。









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