現在のような学校は、元々、工場労働者を作るためのもので、基本的にドイツで確立し、それが欧米で広まり、アジアに押し付けられたものらしい。
それは、おそらく本当ではないかと思う。
学校の生徒たちは、従順で、自発的に考えず、周囲に合わせ、特別な能力を持たないし、持とうともしない。
「上の評価」に絶対的価値を置き、ボスが「お前はB」と言えば、自分はBで、Dと言われたら、自分という存在全体がDだ。
工場で働かせるには都合の良いロボットのような者達だ。

だから、学校の評価、成績なんかどうでも良く、早く「自分だけができること」を持たないといけないのだが、評価、成績を絶対視する大衆の潜在意識は強固に固められていて、ちょっとやそっとでは、どうにもならない。
茂木健一郎さんが講演で言ったことで、本当かどうかは知らないが、ビル・ゲイツは、高校生の時、コンピュータープログラミングに出遭い、それに夢中になり、そればかりやっていたら、教師が、「お前はそれだけやってれば良い。それを成績にして単位をやるから」と言ってくれたので、ゲイツは心ゆくまでプログラミングをやり、それで成功した。
もし、ゲイツが我々が行ったような学校の中にいて、教師達に押さえつけられてしまっていたら、ただのオタクになっていたことだろう。

我々も、自分の好きなものを見つけて、それを磨き上げ、何かでスペシャリティーを持たなければならない。
ところが、そんなことを考えなくても良いという考え方があるようだ。
どういうことかというと、自分が何になるとか、どうなるかなんて、偶然によって決まるのだからというものだ。
ゲイツがコンピューターに夢中になったのも偶然だし、スティーブ・ジョブズが、中退したはずのリード大学に勝手に居残ってカリグラフィという、美しい文字を形作る技法の講義に夢中になり、その講義に勝手に出て勉強した(退学した後なので受講の権利はなく、犯罪行為ですらある)のも偶然だ。
しかし、それで、ゲイツはプログラミングをきっかけに成功し、ジョブズはカリグラフィの技法を生かしてマッキントッシュコンピューターを創って成功した。
ジョブズは、有名なスタンフォード大学での演説で、「それはたまたまだった。その時は、それがどうなるかなんて分からなかった。僕たちは、ただ、つながることを信じるしかないんだ」と言った。
ゲイツだって、同じことに気付いていると思うが、彼は、そんなことを言わない。

私の話で恐縮だが、私がプログラミングを始めたのは、会社で事務の仕事をしていた時、たまたま前の席にいた技術課長(小さな会社なので、事務員の向かいの席にそんな人がいた)が、私に、「君、プログラミングをやりなさい」と言ったのがきっかけだった。
それで、会社の帰りにプログラミングの本を買い、当時はパソコンを持っていなかったので、本だけで勉強したが、割と熱心だった。
それから、貯金をはたいて(というほども貯金がなかったが)パソコンを買い、深夜2時、3時までプログラミングをしていたのだ。
私は最近、会社で、何をやっても駄目で、後ろ向きで、本当にヘタレな男に、「君、プログラミングをやりなさい」と言った。
だが、彼はやろうとしない。
もちろん、他のことでも良いのだが、何もやろうとしない。
投げやりで、向上心の欠片もなく、自分を甘やかし、甘いことしか考えない。
精神疾患とやらに認定されているらしく、それを、辛いことから逃げるための看板にしてしまっている。
しかし、どう見たって彼は普通の人だし、そう言ってやるのだが、彼はそれを認めない。
自分はあくまで病気で、保護されるべきと思いたがっているのだろう。
だが、私だって、医者に行けば、おそらく、何かの精神の病気に認定してくれるはずだ。
実を言えば、私が知る、そんな人は1人じゃない。
若いのに、生活保護を受けられるようになってしまって、もうどうにもならないまでになってしまった者もいる。
しかし、彼は、「世の中を変えてやるぜ」とか言っている。
悲しいものだ。

ビートルズは、そんな人達に、「心配するな、気楽にやれ。誰かが助けてくれるさ」と歌った(『Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)』。
だが、後でポール・マッカートニーは『エリナー・リグビー』で、そんな者達の末路は、哀れで悲惨と明かしてしまった。

人生は、所詮、自分から見れば、偶然に支配されている。
今やっていることが、後で何かの役に立つかどうかなど、さっぱり分からないが、どうにかなると信じるしかないのだ。
それが、スティーブ(ジョブズ)が言ったことだ。
それが彼の実感であり、本当に訴えたかったことであると思うが、それは私も全く同じだ。
今やっている何かは、後で、自分が予想していたこと、期待していたこととは、全く違う形で影響を持ってくるかもしれない。
しかし、何かやっている限りは、なるようにしかならないが、なるようにはなる。
だから、何かやって欲しい。
そして、呪文を唱えれば、初音ミクさんの『Tell Your World』のように、点は線になり、線は円になり、世界を穿ち、世界に響く。
武内直子さん(『美少女戦士セーラームーン』作者)も、自ら作詞した『セーラースターソング』で、「フラスコの底、あなたが残していった、試練の星のひとかけら、さあ呪文をとなえよう」と書いていたが、私は一度聴いたら、もう忘れなかった。
そういえば、セーラームーンと初音ミクって、近い存在かもしれない。









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