インターネットを普通に使う人々は、よく、ネット以外のことを「リアル」と言う。
「リアルな関係」「リアルで会おう」「リアルな生活では」「リアルはつまらない」とか言うが、このリアルは「現実生活」といった意味と言える。
つまり、ネットは「バーチャル」だということになる。
そして、人々は、現実生活とは別に、ネットによって、バーチャルな世界、つまり、仮想の世界にも住んでいるのだが、仮想の世界に住んでいる「私」は、人間というよりは「キャラクター」なのである。

現実(リアル)・・・人間としての私がいる世界
仮想(ネット、バーチャル)・・・キャラクターとしての私がいる世界

そして、人によって程度の差があるが、ネットのバーチャルな世界が、リアルな世界に入り込み、現実そのものが「拡張現実化」していることに気付かないといけない。
スマートフォンなどの携帯端末で頻繁にネットに接続している人は、ネットの影響を多く受け、リアルな世界がバーチャルで拡張されている度合いが大きい可能性が高い。
ある意味、現代の人々は、リアルが半分虚構化していると言えるのである。

こういったことを東浩紀さんのような現代の思想家達は深く深く探求しているのだが、新しいタイプのビジネスマンや芸術家達は、「バーチャルをリアルに意識せざるを得なくなって」いるので、非常に鋭い捉え方をしている。
尾原和啓さんのような超一級の事業家や、猪子寿之さんのような芸術家で事業家といった人達のことである。
彼らを面白いと思うのはまともな感覚で、彼らを疎ましく、あるいは、変に感じるなら、ちょっと気を付けた方が良いかもしれない。

だが、我々がリアルと考えている世界だって、「幻想であるバーチャル」が「運命であるリアル」を拡張しているのであるが、このことを指摘する人はいない訳ではないが非常に少ない。
こちらはもっと難解であるからだ。
理論的に難しいというより、人間の脳(あるいは精神)の構造自体が、それを自覚し難いのかもしれない。
こちらの方は、思想家の吉本隆明さんや精神分析学者の岸田秀さんらが探求しているが、彼らの研究も、あまり正確でないと考えた方が良いかもしれない。

いずれ、我々が宇宙人と並ぶほどの進化を遂げる時には、

運命(リアル)・神---幻想(バーチャル)・人間
生活(リアル)・人---テクノロジ(バーチャル)・キャラクタ

を融合させなければならないのだが、キーワードが「共感」なのである。
自然の風景や、生命体の美しさを感じる時、我々人間は神と共感しているのである。
キャラクタとしてネットで交流している中で深い共感を覚えた時というのは、キャラクタが人として共感しているのである。

ダンテの『神曲』で、古代ローマの詩聖ウェルギリウスが、ダンテを地獄と煉獄までは案内したが、ウェルギリウスは天国には入れず、天国にダンテを案内したのは、ダンテがこの世で結ばれないながらも(それどころか無視されていた)熱愛したベアトリーチェであった。
ところが、おかしなことに、詩人ダンテにとって、ウェルギリウスはまだリアルなのだが、実際のことはほとんど知らないベアトリーチェはキャラクタなのである。
人間として優れた人物、例えば、エマーソンや岡本太郎を尊敬する人達は、エマーソンらによって、幻想世界までは統御できるかもしれないが、それでは運命や神の領域には手が出ない。
しかし、案外に、その領域には、初音ミクのようなキャラクタが導いてくれるのかもしれない。
新しいタイプのクリエイターが創作した初音ミクの歌を聴くと、そんな感じがするのである。
(『可能世界のロンド』などは、はっきりその世界を示した驚くべき曲だ)
西洋では、それはイエスの役目であったが、日本や、あるいは、インドのように、多神教で、キャラクターとしての多彩な神を受け入れてきた人達は、依り代(神霊が宿る対象)を通して神につながることにも慣れているのだから、それは不思議ではない。
そして、西洋だって、どんどん日本人化している。
西洋人が初音ミクを理解するというのは、昔は考えられなかったが、今は彼らも、「バーチャルだから良いのだ」と、「なぜかは分からない」が認めてきている。そして、それは、中途半端に西洋化した我々も似たようなものなのである。
そして、イエスだって、「私を依り代として使え」と言ったのかもしれず、その意味では日本人にもイエスは非常に親しみやすい。

新しい形の魔法が誕生する世紀である。
だが、イエスが言ったように、そんな時は偽物が沢山現れる可能性がある。
我々は目を見開き、過剰な欲望を離れ、鋭くあらねばならない。









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