『般若心経』、『老子』、『歎異抄』などの優れた書物の解説本は、ほとんどが、ちょっと頭で分かっているといった者の個人的な観念が書かれている。
その例外の1つに、宗教家の五井昌久さんが書かれた『老子講義』があるが、五井さんは老子の解説をする時は老子そのものになれるのだから、彼は特別である。ところが、五井さんはこの本の中で、「本当は読み下し文を音読すれば分かるのだが」と書かれていたと思う。
読み下し分どころか、大発明家であった中山正和さんは、漢文の『法華経』を眺めていると、イメージが溢れてきて、本当の意味が直接に分かったという。
中山さんは、難解と言われる道元の『正法眼蔵』も、繰り返し音読すれば自然に分かるのだと著書に書かれていた。

このブログでよくご紹介しているが、田中嫺玉さん訳の『バガヴァッド・ギーター』のKindle版(Amazonの電子書籍)が出ている。
しかし、この電子書籍は、現在は、電子書籍としては失格だ。
多くの語に「この語は解説がある」という意味の番号が、その語の横に付されているのだが、普通、Kindle本では、その語をタップ(PCでいうクリック)すれば、解説ページに飛び、戻るボタンで元のページに戻る。これが電子書籍の素晴らしいところなのであるが、この『バガヴァッド・ギーター』にはそれがない。解説を見ようと思ったら、解説ページに手動で移動しなければならないが、こんな時、電子書籍は最悪の不便さを発揮する。紙の本なら、見当をつけて一気に数十ページでもめくれば良いが、電子書籍では1ページずつめくるしかないので、大変に手間がかかる。まさか、全ての解説ページにブックマーク(電子的なしおり)をつける訳にもいかない(つけられはする)。
手抜きもいいところの電子書籍である。
従って、解説を見ることなく読んでいくしかないのだが、それが案外に良いことに気付くのである。
頭で理解しようとせず、少々分からない言葉があっても、気にせず、リズムを大切にして読み進むと、全体が分かってくるのである。
特に、『バガヴァッド・ギーター』は詩であるのだから、リズムが大切なのである。

しかし、論理的な本や、科学技術に関する本であれば、そうはいかないだろう。
だが、上に挙げた『バガヴァッド・ギーター』の電子書籍は、例外中の例外といえる欠陥本(結果としてそれが良いのだが)で、ほとんどのKindle本は、タップすることで解説に移動する機能がちゃんとある。
ただ、こんな話があり、これも真理だと思うのである。
『ヒマラヤ聖者の生活探求』という本の著者のベアード.T.スポールディングはインドで生まれ育ったのだが、そんな4歳の時、大学の予備校(現在の受験予備校とは異なり、大学で学ぶ準備をするような学校と思われる)に連れていかれて、初めてアルファベットを見せられ、教師に「どう思うか?」と聞かれた。スポールディングが「分からない」と言うと、教師は、「そんな考えは捨てなさい。自分はちゃんと分かっているという態度を取りなさい」と彼に注意した。そのおかげで、スポールディングは14歳で大学を卒業し、その後、科学技術研究者になっても、その真理が効力を発揮した。他の研究者が何年も解決できずにいることに初めて取り組んでも、数十分で解決してしまったのだ。彼は、「自分にはもう分かっている」という態度を取ることができるからだった。
※『ヒマラヤ聖者の生活探求』第5巻より内容を引用。この第5巻は単独で読んでも有益な秘法書。

政木和三さんも、子供の時、腹式呼吸の訓練をしていたおかげで、母親が読んでいたお経の意味が「勝手に」分かり、母親に説明したことがあったという。
アメリカ最大の賢者エマーソンも、人間は、本質において初めから全て知っていることを示唆することを書いている。

最初に、老子や正法眼蔵を音読すれば自然に分かるという話を紹介したが、音読そのものに意味があるのではなく、音読の場合は黙読と違って、とにかく先に進むのだから、頭で分かろうとすることをさっさと諦めるしかないところが良いのである。
理屈を捨てた時に心は純粋になり、そうすれば、深い叡智につながるのである。
政木さんの場合は、腹式呼吸によって、心が静まって、純粋な意識に到達したから、内なる叡智と一体化したのである。

老子にしろ、バガヴァッド・ギーターにしろ、聖書にしろ、世間的な知である理屈で読んでは絶対に分からない。
しかし、ただ無心に淡々と読めば自然に分かる。
また、念仏を無心に唱えれば、やはり意識は純粋になり、何でも分かるのである。

下に、「電子書籍の有益な欠陥本」である『バガヴァッド・ギーター』(タオラボブックス)をご紹介しておく。









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