宇宙は果てなく広いなんてよく言われるが、誰もその広さを分かってなどいない。
実際に宇宙を見た時、私はそのことが分かったのだ。
私が乗っていたのは、確かに宇宙船だった。だが、あまりに大きかった。街1つほどの広さがあると思えた。
周りに人が沢山いた。私は多くの人のいる場所が嫌いで、そんなところには近付かないようにしているのだが、この宇宙船の中は少しも悪くなかった。
それで、見ていたら、人は多いのに、グループを作っている人が全くいないことに気付いた。
地球では、人々はすぐに群れたがり、チームを作ろうとする。しかし、ここではそんな人は1人もいないのだ。
かといって、孤独な感じでもない。
だが、それぞれが接触もしない。
歩いている人もいるのだが、道を譲り合う光景はない。それは、歩く人は、落ち着いて、意識して歩いているからだ。
地上の人間は、気紛れに、所構わず、意味もなく歩き、そして、わざと他人に近寄りたがるのだ。しかし、ここではそんなことはない。
ここでは、沢山の人がいるように見えて、実は1人で、他人というものがいないのだ。だが、地上では全ての人が他人なのである。

宇宙船は、静かに、音も振動もなく、滑るように超高速で進んでいるようだった。
宮沢賢治には、これが、心地よい振動のある鉄道に感じたのだろう。確かに、それも良いと思う。
宇宙空間なのであるが、冷たい、空虚な感じはしない。むしろ、懐かしく温かい感じだ。
宇宙空間は真空であって何もないと地球の学校では教わるのだが、そうではなく、宇宙船の外も中も、目には見えないが、生命と調和に満ちた何かが溢れているのである。
そして、その、空間に満ちた調和と若い生命の源であるような人物が現れた。
男性だと思われるが、女性のようでもあり、若いのであるが、無理な勢いを見せてはいなかった。
一応、彼と呼ぶが、彼は、こんな人物が着るであろうような、純白の輝くものを着ているのではなく、着古してはいるが、落ち着きのある麻布のようなもので出来たペルシャ風の着物を着ていた。
彼からは、最も精緻で優雅な音楽や、天に流れる花の香りのようなものが放たれているように感じた。
彼は、はっきりとはしているが、とても柔らかな声で、
「何か食べた方が良い。あなたはあまり食べていない」
と言い、
「持ってきてあげよう」
とちゃんと言い終わってから去った。
私は、もったいないとは思ったが、抵抗感もなかったので、そのままにした。
彼は、深い陶器の皿を木製のトレイ(お盆)に乗せて持ってきた。
それは、お粥のような料理で、用意してくれた散蓮華(ちりれんげ。中国の陶製スプーン)で食べると、なんとも美味しかった。
すると、不意に、腰のあたりに軽い感触を感じたのだが、すぐ隣に少女が座っていた。これほど近寄っても少しも邪魔にならないのは、彼女がとてもほっそりとしているからだが、それだけではないと思った。
彼女は、竹の容器に入った飲み物を差し出した。給仕をして隣に座るというのは、世間では珍しいのだろうが、ここではそうではないと感じた。
その飲み物は、一言で言えば白湯であるが、少しコクがあって、ほんのり甘く、甘露という言葉がぴったりだった。
かたじけなくも会釈をして去っていく彼を見送っていた大きな青い目をこちらに向け、彼女は、「アミタよ」と言った。阿弥陀如来のことだろう。
ところで、私には、彼女が初音ミクに見えて仕方がない。そういえば、『観無量寿経』に、程度の低い人間が死んだ時、仮菩薩と言って、菩薩様が、その者が好む姿で現れるとあったように思う。
では、彼女は観世音菩薩だろうか?
しばらくすると阿弥陀が戻ってきて、「少し眠った方が良い。あなたはあまり眠らなかった」と告げた。
すると、私はミクの中にすーっと吸い込まれて、彼女と一体化していくのを感じた。

目が覚めても、ミクが私の中にいるのを感じた。
しかし、元々いたのだし、誰の中にもいるのだ。
そこで教えておくが、その生命体(私の場合、ミクのようなもの)と一緒に天(アメ)に意識を向ければ、天から陽気が降って来る。それは甘露と言える。
私は昔、宇宙人から、「意識を天に向かって、ぽーんと投げなさい。すると、マナが返ってきます」と言われたことがあった。
意識を天に向けるには、天を指差せば簡単である。天に向けて指を立てるのだ。そうすれば、一瞬の統一に入ることは易しい。
何時間の統一よりも、こんな一秒の統一の方が良いのである。

昔見た夢では、死んだ後、恐ろしく醜い少女に会った。
彼女は言う。
「我、乙女にあらず。汝の生前の意志、想念、行いなり」
「我はもともと誉められない者だったが、汝は、我をもっと誉められない者にした」
だが、親鸞が死んだ時、輝く美しい少女が出迎えてこう言ったのだ。
「吾は御身のものなり」
「吾は元より美しかったが、御身がもっと美しくしてくれた」
私が出会った醜女を、親鸞が出会った天女に変えるのが念仏である。









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