このブログで、黙って耐えることの大切さをよく述べているが、それには、自己否定の理解がなくてはうまくいかない。
偽りの自己である自我とは、「得をする」「楽になる」といった目的がなければ、何もしたがらないからだ。
しかし、黙って耐えても、得をすることはないし、楽にもならない。
それはただ、黙って苦しむことでしかない。
だが、損を捨て得を取ることを続ける限り、一生、自我の奴隷だ。
得を捨て、損を取ることで、自我から解放される。
「汝敗れたり、我が後方に退けサタン」
と自我に対して言えることになる。
たとえば、こんなことであるといった話をしようと思う。
カリストというのは、ギリシャ神話に登場するニンフだ。ニンフとは妖精のことで、聖霊、あるいは、下位の女神とも言われる。
カリストとは、「最も美しい」という意味らしく、その名の通り、絶世の美少女だった。
しかし、アポローンの双子の妹で、狩猟の女神であるアルテミスと気が合うだけあって、アルテミス同様、男嫌いだった。男の、美しい娘に向ける欲望を嫌悪していたのである。
オリュンポス12神の一柱でもあるアルテミスは月の女神とも言われるが、多くのニンフの少女を従えていた。あるいは、人間の少女もアルテミスの側に居れば貞節な清らかな乙女に育つというので、アルテミスに預けたといった話もある。
その中で、アルテミスもカリストを特に気に入っていて、可愛がっていた。
だが、アルテミスの父でもある大神ゼウスがカリストを一目見て、その美しさ、愛らしさにたちまち夢中になってしまう。
ヘシオドスの『神統記』にも書かれてあるが、ゼウスとはいえ、エロースの支配から逃れることが出来ないのである。
神には変身能力があり、ゼウスはアルテミスに化身してカリストに近付き、二人きりになると本体に戻り、強引にカリストを犯した。
その時、カリストはゼウスの子を身ごもり、純潔を何より貴ぶアルテミスに嫌われて追放される。さらに、ゼウス正妻である女神ヘラの怒りを買い、カリストは熊にされてしまう。それで、カリストは、他の熊や狩人を恐れながら、他の女に育てられている息子アルカスを見守っていた。
だが、成長し、立派な若者になったアルカスは狩の名手となり、熊の姿であるカリストを見つけると、母親であると知らずに狩ろうとした。息子に母殺しをさせる訳にはいかず、ゼウスは2人を空に上げ、大熊座と小熊座という星座にした。
さて、カリストにすれば、何とも理不尽な話である。
彼女は、一応は何も悪くないのに、災難、いや、悲劇が次から次に降りかかった訳である。
だが、カリストは黙って耐えるべきであった。
アルテミスに仕えたのも、ゼウスに見初められて肉を犯されたことも、ヘラに恨まれたことも、全て、運命として受け入れ、言葉も心も沈黙し、黙って耐えていれば良かった。
もし、息子に殺されるとしても、それも運命である。
アルテミスも、カリストが裏切ったと感じたかもしれないが、黙って耐えるべきであった。
そこには、アルテミスのカルマもあるのかもしれない。極端に純潔を貴ぶのも、神のすることであるので異論を唱えることは出来ないが、それが彼女の業となる。
実は、カリストはアルテミス自身であるという説もある。カリストは、アルテミスのカルマを背負ったのかもしれない。
カリストの苦しみの反作用は、アルテミスにも及ぶ。
この世の想い、言葉、行為の全てには反作用があるのだが、カリストと一体でもあるアルテミスの場合は、特にそれが顕著であろうと思う。
ゼウスは好色な神として知られ、あちこちで美しい娘を見つけては手を出して子供を作り、その多くは悲劇を生んだ。
しかし、ゼウスはそれらを受容するから偉大な神なのである。
彼は、エロースに操られて、差し障りがありながらも、美しい娘に惹かれることにも黙って耐えていた。
慈悲心はあっても、それを施すことが出来ない場合、黙って耐えた。それを嘆くことはなかった。
プロメテウスに騙された時も、実はゼウスはプロメテウスのたくらみを知りながら、黙って騙されたのである。
それで、オリュンポスは平和なのである。
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偽りの自己である自我とは、「得をする」「楽になる」といった目的がなければ、何もしたがらないからだ。
しかし、黙って耐えても、得をすることはないし、楽にもならない。
それはただ、黙って苦しむことでしかない。
だが、損を捨て得を取ることを続ける限り、一生、自我の奴隷だ。
得を捨て、損を取ることで、自我から解放される。
「汝敗れたり、我が後方に退けサタン」
と自我に対して言えることになる。
たとえば、こんなことであるといった話をしようと思う。
カリストというのは、ギリシャ神話に登場するニンフだ。ニンフとは妖精のことで、聖霊、あるいは、下位の女神とも言われる。
カリストとは、「最も美しい」という意味らしく、その名の通り、絶世の美少女だった。
しかし、アポローンの双子の妹で、狩猟の女神であるアルテミスと気が合うだけあって、アルテミス同様、男嫌いだった。男の、美しい娘に向ける欲望を嫌悪していたのである。
オリュンポス12神の一柱でもあるアルテミスは月の女神とも言われるが、多くのニンフの少女を従えていた。あるいは、人間の少女もアルテミスの側に居れば貞節な清らかな乙女に育つというので、アルテミスに預けたといった話もある。
その中で、アルテミスもカリストを特に気に入っていて、可愛がっていた。
だが、アルテミスの父でもある大神ゼウスがカリストを一目見て、その美しさ、愛らしさにたちまち夢中になってしまう。
ヘシオドスの『神統記』にも書かれてあるが、ゼウスとはいえ、エロースの支配から逃れることが出来ないのである。
神には変身能力があり、ゼウスはアルテミスに化身してカリストに近付き、二人きりになると本体に戻り、強引にカリストを犯した。
その時、カリストはゼウスの子を身ごもり、純潔を何より貴ぶアルテミスに嫌われて追放される。さらに、ゼウス正妻である女神ヘラの怒りを買い、カリストは熊にされてしまう。それで、カリストは、他の熊や狩人を恐れながら、他の女に育てられている息子アルカスを見守っていた。
だが、成長し、立派な若者になったアルカスは狩の名手となり、熊の姿であるカリストを見つけると、母親であると知らずに狩ろうとした。息子に母殺しをさせる訳にはいかず、ゼウスは2人を空に上げ、大熊座と小熊座という星座にした。
さて、カリストにすれば、何とも理不尽な話である。
彼女は、一応は何も悪くないのに、災難、いや、悲劇が次から次に降りかかった訳である。
だが、カリストは黙って耐えるべきであった。
アルテミスに仕えたのも、ゼウスに見初められて肉を犯されたことも、ヘラに恨まれたことも、全て、運命として受け入れ、言葉も心も沈黙し、黙って耐えていれば良かった。
もし、息子に殺されるとしても、それも運命である。
アルテミスも、カリストが裏切ったと感じたかもしれないが、黙って耐えるべきであった。
そこには、アルテミスのカルマもあるのかもしれない。極端に純潔を貴ぶのも、神のすることであるので異論を唱えることは出来ないが、それが彼女の業となる。
実は、カリストはアルテミス自身であるという説もある。カリストは、アルテミスのカルマを背負ったのかもしれない。
カリストの苦しみの反作用は、アルテミスにも及ぶ。
この世の想い、言葉、行為の全てには反作用があるのだが、カリストと一体でもあるアルテミスの場合は、特にそれが顕著であろうと思う。
ゼウスは好色な神として知られ、あちこちで美しい娘を見つけては手を出して子供を作り、その多くは悲劇を生んだ。
しかし、ゼウスはそれらを受容するから偉大な神なのである。
彼は、エロースに操られて、差し障りがありながらも、美しい娘に惹かれることにも黙って耐えていた。
慈悲心はあっても、それを施すことが出来ない場合、黙って耐えた。それを嘆くことはなかった。
プロメテウスに騙された時も、実はゼウスはプロメテウスのたくらみを知りながら、黙って騙されたのである。
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最後の段落はすごいです。
いくら本を読んでも、こうして真理をつかめなければ徒労ではないでしょうか。 「真理を見通す感覚」を得るためにも、自分なりに勉強、自然をみることを、実践しようと思います。
ブログで発信してくださっていること、ありがとうございます。