相撲ファンでなくても、多くの人が、現在の大相撲は一場所十五日で、十両以上は十五番を取ることを御存知と思う。
十五戦全勝が一番良いのだが、それは至難の技で、抜きんでた力のある横綱でも、特に調子が良く、勝負運もなければ達成できるものではない。
大相撲では、一般スポーツで言うなら「リーグ戦開幕期間」を、「場所」という独特の言い方をする。考えてみれば、これはなかなか凄い。時間と空間が同じものだという、物理学や哲学の高等概念をさらりと言ってのけている訳である。
この相撲場所の15日を、あらゆるものごとに当てはめて考えることが、よくされていると思う。
例えば、「人生は8勝7敗でいけばいい」とかいったものだ。
8勝7敗では、大関、横綱にはなれないが、幕内にはずっと残れる。一般の力士にとっては幕内というのは、とんでもない高い地位である。8勝7敗なら、そこにずっといられるのであり、一般スポーツで言う一流に該当すると言って間違いない。
とはいえ、力士が「8勝7敗で良い」などと自分で思っていたら、すぐに駄目になるだろう。
横綱になる器量が自分には無いということは大抵の力士には分かっているだろうが、それでも、若いうちは「いつかは横綱」と思い、8番勝てば次は10番と思わなければやっていけないものだ。
人生においても、若い間は15戦全勝を目指すものだ。それは愚かな面もあるのだが、若い人がそうであるのはあながち悪いことではない。
むしろ、若いのに初めから8勝で良いと思うのも情けないというものだろう。
しかし、経験を積んでいくうちに、いくらがんばってもいくらかは必ず負けることを悟り、「12勝で良い」「10勝できれば上々」と思うようになる。
世界トップレベルのビジネスマン・・・例えば、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズだって、負けることもあることを知っている。
これまで12勝を目指していたのが、8勝で良いと思うようになると、少し肩の力が抜けて気楽になる。
だが、普通の人は、8勝しなければならないプレッシャーに押し潰されている。そして、5勝も出来ない自分に嫌気が指し、人生に疲れ、生き甲斐を失くし、充実感のない虚ろな人生を送り、「俺は何のために生きているのだろう?」と疑問を持ち、失意の中で死んでいくのだ。

ところが、「いや、俺は5勝10敗で良い」と思い、「いや、1勝14敗でいいんだ」と思っている人がいる。
そんな人が、傍目には大成功して充実しているように見えることもある。
また、そうでなく、確かに負けが多いのだが、本人は明るくて平気なこともある。
ただ、本人は辛くないのかというと、聞けば、やっぱり「辛いよ」と言うのである。しかし、そうは見えないのである。
一方、同じ5勝10敗、あるいは、1勝14敗でも、あがき苦しんでいる者もいるし、そんな者の方が多い。
「人生は負け方が大切だ」という真理に気付くかどうかである。

『法華経』では、釈迦は「なにごとも心一つなのだ」と言う。
『福音書』では、イエスは「貧しい者は幸い。虐げられる者は幸い。病める者は幸い」と言う。
だが、それが分からないから、人々は不幸なのだろう。
宮沢賢治は一段降りてきて、「みんなにデクノボウと呼ばれ、誉められもせず、苦にもされず」の者で良いと言う。
秀でたところがなければ、苦にはされないものだ。
かといって、自堕落になったり、投げやりで自分勝手というのではない。
全く持って、『雨ニモマケズ』は大変なもので、あの短い一文で聖典1冊分のことが凝縮されている。
あれに素晴らしい曲を付け、その荘厳な合唱を実現した『イーハトーヴ交響曲』を創った冨田勲さんは絶対に歴史的偉人と言える。

可愛い女の子が好きなら、やはり可愛い女の子を目にする機会があるものである。
しかし、さっぱりモテなくて、1勝14敗どころか、常に15戦全敗という人もいるだろう。
アンデルセンも宮沢賢治もそうだったのだと思う。
だが、それは幸いだ。厄介ごとを背負わずに済むといった意味でなく、霊的な意味でだ。
ここでは、たまたま女の子のことを取り上げたが、車好きでポルシェやフェラーリが大好きだが、そんなものに全く縁がないとか、自分に当てはまることで考えると良いだろう。
そんな時は、黙って耐えるのである。どうやったって苦しさからは逃れられない。
イエスは「柔和な者は幸い」とも言った。
なるべく柔和にやり過ごすことだ。「仕方ないね」と笑ってみるのだ。
般若心経の呪文を唱えることだ。
すると確実に奇跡が起こる。
これは、やってみなければ分からない。









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