プロトタイプとは、試作品という意味だが、大昔から人類は、そんなものを作ったはずだ。
自動車や扇風機や靴やドレス・・・どんなものでも、試しに本当に作ってみるということがよく行われる。
頭で考えたり、絵に描いてみただけでは分からないことも多く、実際に作って、使ってみて初めて気付くことがとても多いからだ。
設計上の欠点が、プロトタイプを作って初めて発見されることも多く、飛行機みたいに、欠陥が惨事に結び付くものでは、必ずプロトタイプが製作される。
だから、試作機のテストパイロットというのは命がけだし、予想できない事態に対処できる優秀な人でないといけないのである。
宇宙ロケットだって、人間を乗せる前に何度もプロトタイプの無人ロケットを飛ばすのだが、1回の打ち上げにかかる費用が大きいので、単に、試作のための試作という訳にもいかない。人間の代わりに動物を乗せたこともあったが、これもロケットの試作の意味と共に、重要な実験も兼ねていた。一番最初に宇宙ロケットに乗せられたのは犬で、しかも、この時は、この犬は最初から、地球に帰って来ないように計画されていて、この犬の世話や訓練をした人は、さぞ悲しかったことだろう。
旧ソ連では、ほとんどプロトタイプと言えるようなロケットに実際に人を乗せ、事故死したパイロットも多いと言われる。

ところで、コンピュータソフトウェア開発の世界でも、プロトタイプ型開発というものがある。
ソフトウェア開発する際、いくら設計をして、仕様を図や文字で書いても、実際に動かしたら何が起こるか分からないことも実は多いのである。
しかも、ソフトウェアを使うお客さんというのは、仕様書なんてほとんど見ないものであり、開発する側は、自分の思っているもので本当に良いのかどうかが掴めないのである。
そこで、実際に動くプロトタイプを作ってお客さんに見せると、お客さんもよく分かるし、開発側の考え違いや、お客さん自体の認識違い、あるいは、改良点などが分かって非常に便利だ。
プロトタイプ型開発は、面倒な点もあるが、うまくやれれば効率的である。ただし、プロトタイプを作るのに大きな労力がかかっているようでは意味がない。
そこで、プロトタイプを素早く製作できる開発ツールが必要なのであるが、プロトタイプ開発専用というようなものを私は見たことがない。
私は、マイクロソフトのAccessを使ってプロトタイプを作るのだが、小規模なシステムであれば、プロトタイプに改良を加えるだけで、大抵、実用になる。

ところで、誤解してはならないのは、プロトタイプとは確かに試作品なのであるが、それはそれで完成品であるということだ。
ちょっとややこしいが、こういうことだ。
プロトタイプを改良して完成させるのではなく、プロトタイプは捨てて、プロトタイプ製作によって得られたノウハウを持って完成品を1から開発するのが、プロトタイプ型開発なのである。
システム開発では、プロトタイプ型開発をスパイラル型開発と言って、何度も繰り返して開発し、最後に良いものを作るのであるが、一度作る度に、それは捨てるのである。

ところで、人間とは、自分のプロトタイプを作っているようなものだ。
経験を積み、勉強をして自己を向上させていくのだが、本当に進歩するためには、今の自分を捨てなければならないのだ。
今の自分が知っていること、出来ることにしがみついていては、せいぜが、小さな改良を重ねてバランスが悪くなったガラクタが出来るだけなのである。
経験も勉強も必要であるが、それを本当に生かすためには、今の自分を叩き壊し、新しい自分を始めなければならないのである。
そして、その機会は、必ず与えられるのであるが、多くの人は、今の自分を壊すことが出来ないものである。
岡本太郎なんて人は、作ったら即壊せといったことをよく言われていたものだと思う。
『魔法少女リリカルなのは』で、美しき魔導師の少女フェイトが、「新しい自分を始めるために、今までの自分を終らせよう」と言ったのに感動したものだ。その言葉だけは真理だった。
良い本を読むのは良いことだが、自分の解釈にしがみついているようでは駄目なんだ。みんな、そんなことをしているから、せっかく素晴らしい本を読んでも、かえっておかしくなるのである。良いと思ったら、まず自分をぱーんと壊して、生まれ変わることである。









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