虫の知らせというものをご存知の方も多いと思う。
親しい人が死んだ瞬間に、離れた所に居て、何の連絡も受けなくても、それが分かってしまうといった現象である。

世間的な観念や科学理論で説明できるものではないが、そのようなことが起こりえることは、スウェーデンボルグがはっきりと説明している。
エマニュエル・スウェーデンボルグ(1688-1772)は、アイザック・ニュートン(英国。1642-1727)と同時代のスウェーデンの科学者、神秘思想家で、政治家、発明家でもあり、驚くべき広範囲の学問に精通していた天才である。
エマーソンをして、人類最大の5人に挙げるほどで、また、その思想は、ゲーテ、カント、ヘレン・ケラーらを心酔させていたと云われている。
スウェーデンボルグは、宗教上の理由から、祖国スウェーデンで処刑される恐れがあったためにイギリスに亡命し、その地で亡くなったが、死後三百年経って、スウェーデン政府は英国に艦隊を派遣してスウェーデンボルグの遺体を譲り受け、国葬を行ってその名誉を回復させたという偉人である。

さて、虫の知らせの仕組みは、次のようなものだ。
肉体を持たない霊同士であれば、距離に関係なく意志の疎通が可能である。しかし、肉体に拘束されている霊に対しては、肉体の無い霊は意志を使えることは出来ない。
しかし、死んだ直後に、その死んだ霊が、親しい人のことを強く思うと、思われた者は、一瞬、死んだ状態になることがある。その時であれば、死者の霊と意志の交感が可能となるのである。

こんなことがあった。
私の知り合いの若い女性が、祖母の葬式の時、その祖母の霊が、弔問に来た人に挨拶をする姿が見えたという。本来、死者の霊には、生きた人間は見えないらしいのであるが、特に死者と親しかった人は、悲しみのために死の状態になり易かったので、そのようなことがあったのかもしれない。
そして、何より、その若い女性が祖母の姿を見た時は、死の状態になっていたのだと思われる。
その女性は、非常に美しい上、神秘的な瞳が印象的な、性格も素直な人で、話している様子からも、嘘を言っているようには感じなかった。

スウェーデンボルグは、自分の意思で死んだ状態になることが出来た。それを死の技術と言っていたらしいが、死んだ状態で、何日も過ごすこともあったようだ。
死んだ状態の時は、呼吸も心臓の鼓動も停止していたという。
ある霊覚者が、極めて微かな呼吸をすれば、霊界に入ることが出来ると言っていたことがあったが、スウェーデンボルグの死の技術も、呼吸に関係するところがあったと思われる。
実際、そのような微かな呼吸をしていると、周囲に何か不思議な気配を感じるようになる。それが、霊の存在を感知するほど、死の状態に近くなったということなのかもしれない。
しかし、興味本位でそのようなことをするのは、あまり良いことはないと思う。
というのは、そのようなことをする者の精神レベルによって、接触してくる霊の種類も決まるように思えるからだ。その者が素晴らしい人間性の持ち主であれば、それに見合った立派な霊が近付いてくるかもしれないが、そうでなければ、邪悪な霊に思わぬ悪い影響を受けるかもしれない。
ただ、天使であれば、ある程度霊的な状態になっている人間がいれば、自らの波動を落として、その姿を見えるようにすることがあるのだと思う。
だから、天使は、普通の人間と同時に見えることもあるのだろう。
稀に、天使は、我々の額をぽんと叩いて、我々を浅い死の状態に導き、物質世界と霊の世界の中間の世界に遊ばせてくれることもある。
その中間の世界に自由に出入りする存在もいるに違いない。
私はそのように思うのである。









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