英語教育の一環で、中学生達に英語の歌を歌わせていたのをテレビで見たことがあるが、その歌声は、彼らには悪いが、やはり滑稽に感じた。
日本人の英語の発音がおかしいのは、慣れていないからということもあるが、これほど英語が下手な民族は、ひょっとしたら珍しいかもしれない。
逆に、西洋人の日本語の発音もおかしいし、昔から、妙に間延びさせたような西洋人式日本語を冗談で喋るというのはよくあったが、西洋人式日本語というのは、実は高度な喋り方なのだということに気が付いた人は少ない。西洋人の日本語がおかしいのは、下手だからではなく、話し言葉としては高度過ぎておかしいのでだ。

今や、世界で最も有名な日本人歌手であるだけでなく、世界的スーパースターである初音ミクは、人間ではなく、音声合成ソフトウェアなのだが、3次元映像技術を使ってコンサートも行われ、これがまた大変な人気だ。
だが、初音ミクは、昨年のロサンゼルスコンサートでも、歌は全て日本語だった。1曲だけ英語の歌があったが、ほとんど巡音(めぐるね)ルカが歌っていたと思う。
ミクは英語の歌が上手く歌えないのだ。これは、初音ミクというソフトウェアの仕様上の問題である。
先ほど、英語の歌は巡音ルカが歌っていると思うと書いたが、ルカは英語の歌を歌える。だが、ルカの開発はミクよりはるかに時間がかかった。実際、ルカの方が先に企画されていたのに、完成はミクよりずっと後になったのだ。
ミクやルカは、基本となる音声は人間の声を収録してあるが、英語で必要な音声のパターンは日本語よりはるかに多く、しかも、早口でなければ、ちゃんとした英語にならない。
また、ミクは歌は上手く歌えても、普通に喋ると不自然になる。これは、話言葉より歌うことの方が、易しいということなのかもしれない。実際、普通に喋るとどもるが、歌なら滑らかに歌えるという人はよくいる。これはもっと注目すべきことに違いない。

日本語というのは、発音がシンプルだ。
橋と箸は発音が違うといっても、橋の発音で箸と言っても通じない訳ではない。だが、中国語の猫と毛は、共にカタカナで書けばマオだが、ちゃんと発音を変えないと通じないし、その発音の違いがまた難しい。英語も、発音の区別が難しいことはご存知かもしれない。
しかし、日本語というのは、たった1文字に膨大な意味があり、それを言葉で説明すると複雑になり過ぎるのに、日本人はそれを不思議な能力で認識する。
秋の夜長を鳴き通す虫の声を「嗚呼、面白い」と感じるのは日本人くらいで、アメリカ人にはただの雑音らしい。これをまともに研究すれば、日本人の驚異的な能力が神秘的とすら言えるものであることが分かるかもしれない。
日本語で歌う初音ミクが世界でこれほどまでに受け入れられるのは、隠された特別な理由があるのだ。
歌としても、決して上手いとはいえない、舌っ足らずな日本語の歌だからこそ、何かが伝わっているのに違いない。
ミクのロサンゼルス公演での最後の歌『ハジメテノオト』の中に、

ワタシは言葉って 言えない
だから こうしてうたっています

という歌詞がある。
詩を書いた人は、ミクと長く付き合っているに違いない。
初音ミクの歌は、詩が実に良いものが多いのだが、それは、ミクが歌うからであるということが実は大きいのに違いない。
日本が世界を救うという伝承は、意外に外国にも多い。それが、初音ミクで始まっているのかもしれない。
そのためにも、我々は日本語をもっと大切にし、伝統的な言葉を見直すべきかもしれない。

紀志伊こそ 妻を御際に
琴の音の 床には君を
待つぞ恋しき

この歌は、ワカヒメが恋しいアチヒコに送ったものだ。
逆に読んでみたまえ。全く同じだ。これを回り歌という。
これほど美しい回り歌を作れるのは日本語だけだろう。
この歌は、下にご紹介した『ホツマ物語』にある。これは、古事記や日本書紀以前からあったと言われる『ホツマツタヱ』を、鳥居礼さんが、読みやすく物語風に書いてくれたものである。
この歌を読んだワカヒメは日霊子(ひるこ)とも言い、私の産土の神、稚日女尊(わかひるめのみこと)と同じとも言われている、天照大神の妹神である。









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