当たり前のことを言われて、はっとするとか、どきっとする時がある。
当たり前のことなのだが、それを忘れていたり、あるいは、無意識に無視しようとしていたからだろう。
それをはっきりと言われてみて、改めて、「確かにそうだ・・・」と心の中で、しみじみ思うのだ。
だが、それに近い感覚を起こさせる偽者もある。例えば、「女は所詮、顔よ」「やっぱり学歴だよ」などである。そう思えることもあるかもしれないが、やはり心の中にすっきりしないものを感じるはずだ。

私が初めてやった仕事は家庭向けセールスだったが、上司であるスーパーセールスマンに言われた一言が今も胸に残っている。それは、
「努力する人には敵いませんよ」
だった。
彼は、その時はマネージャー職だったので、ほとんどセールスには出なかったが、元は全国屈指のセールスマンだった。その時、彼はまだ26歳の若さだったが、意志の強さ、落ち着き、頭の回転の速さ、巧みな会話、スリムな身体つきだが体力もあり、まさにザ・セールスマンとしての資質に溢れていた。
そんな彼が、現役セールスマンだった時、どうしても敵わなかった相手がいたという。その相手というのが、40歳も過ぎたおじさんで、普通の人よりずっと話下手で、ボソボソとしか話せず、ほとんど何を言っているのか分からないほどだという。おとなしくて、気も弱い。全くセールスマン向きでないのだ。そんな男に、月間の成績で一度も勝てなかったという。
そんなことがあったから、我が上司だったスーパーセールスマンは「努力する人には敵わない」と、本当にしみじみと言ったのだ。
そのおじさんのセールスマンが、インタビューに応えて言ったのは、自分には能力がないことが分かっていたので、とにかく、訪問件数で勝負するしかないと、普通の人の何十倍もの訪問をしたようだ。セールスの訪問が、特に、家庭向けの場合、どんなに厳しいものかは、経験しないと分からない。たまたまやってきたセールスマンに、「忙しい時になんだよ!」「呼んでないよ、帰ってよ」と、厳しい言葉を浴びせたことのある人は少なくないだろう。言う方は一度だが、セールスマンは1日中、そんな言葉を受けるのである。ちょっと嫌なことを言われて「傷付いた」と落ち込むような人が多いが、彼だって、別に鈍感な訳ではなく、全く同じ心を持った人間なのである。それは確かに厳しく、私のいた職場では、10人の新人セールスマンが入ってきても、翌月、1人残っているかどうかだった。そんな厳しい訪問を、1日、何百と行う精神力はやはり凄い。そんな忍耐、努力が、絶望的に思えるほどの能力の差を逆転し、勝ち続けさせたのである。

ただ、私は別に根性論を説く気もない。
そこまで努力して、全国1位のセールスマンになったとしても、所詮は企業の奴隷である。そんな努力家のセールスマンを企業は美化して宣伝したがるが、そんなセールスマンが幸福になったというためしは無いと思う。
私も、上に述べた通り、猛烈セールスマンを経験したし、セールスコンテストで優勝したこともある。元々が引きこもり気質でセールスマン向きでないこともあるが、やはり厳しいもので、仕事そのものが楽しいと思ったことは決してなかった。
まあ、おかげで、保険会社のテレビCMが全部欺瞞だって分かるようになったり、他の様々なことと合わせ、世間そのものが嘘だということを実感できたことは、悪いことではないと思う。
無理な努力をして、成果を上げると、かえって心が狭くなる。それを克服するのは、なかなか大変だった。
そして、過ぎた努力というのは、世間では崇拝されるような、金メダルを取ったり、プロスポーツで活躍したり、高収益の企業を作る者も含め、所詮は我欲とか、未来の不安や恐怖がさせるものなのだ。
世のため、人のために、神の道具として働く者は、はた目からは大変な努力をしているように見えても、本人としては何もしていないのである。もし、本人が努力と思っているなら、どこかに名誉欲のような我欲があるのである。

ゴッホは、1年に百枚以上の絵を制作したが、儲けようなどとは全く考えていなかった。実際、生涯で1枚も売れなかったが、そんなことに構わず描き続けた。だが、私に言わせれば、彼もがんばり過ぎた。純粋な創作の衝動と共に、やはり、自分を認めてくれない世間や、あるいは、同じ売れない画家でありながら、彼の作品に関心を持ってくれなかったセザンヌやルノワール、そして、ゴッホと対立したが、多少は売れたゴーギャンらに対する反感と、やはり、認められたいという心の奥の切望が、彼を無理に突っ走らせたように感じるのだ。彼も、スピードを落とし、心を安らかにしていれば、自殺することもなかったし、生活においても豊かになれたと思うのである。

実は、「改めて言われてはっとすること」というテーマで、全然別のことを書く気だった。
昔の仕事のことを思い出しているうちに、ついつい固い話になってしまった。夜には、同じテーマで、もっと楽な話をしようと思う。









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