超人に生まれ変わった人達をどれだけ調べても、1つの例外もない共通事項は、苦しみだ。
言うまでも無く、人は幸福を目指す。これは、我欲ではなく、幸福が人の本性そのものだからだ。分かり難いかもしれないが、人は本来幸福なのである。
人は、自分でどうすることもできない苦しみを味わうことで、初めて至高の力を求める。そして、いずれはそれを得る。それが超人だ。
「悲しむ者は幸せだ」
「求めよ、そうすれば与えられる」
イエスの言葉に嘘はない。
だが、至高の力の存在を信じない者は得られない。つまり、求めない者は得られない。
今、満たされている者は不幸だ。イエスも金持ちが至福に至る難しさを認めていたではないか?彼らは、至高の力に用は無いからだ。しかし、世俗の幸福などいずれ失われ、悲惨を味わうしかないのである。

原発事故により、私は、久々に、平井和正さん原作の、桑田次郎さん(現在は、桑田二郎さん)の漫画作品「デスハンター」を思い出した。
平井さんと桑田さんが初めて組んだ1963年の作品「8マン」は歴史的作品となったが、「デスハンター」は1969年の作品で、今でも新装版で出版されている傑作だ。
デスハンターというのは、国際的な殺し屋集団だ。ただ、利益のために殺すのではなく、デスと呼ばれる宇宙からの侵略者にとりつかれた人間を殺すための、言わば人類防衛組織だ。デスにとりつかれた人間は超人になり、1人で人類を滅ぼしかねないほど極めて危険だ。だから、デスにとりつかれていると疑われる人間は、疑わしいというだけで、躊躇せず殺害する。本当にとりつかれているか、いちいち調べている暇はない。そんな非情な、そして、超一流の殺し屋の集まりである。
そのデスハンターの秘密基地のある孤島の原子炉に事故が発生する。基地は大パニックに陥っていく。
その中で、俊夫という、デスハンターの中でも屈指の殺し屋の青年は、自分の部屋でのんびり過ごしていた。彼にも事故のことは分かっていた。
俊夫は、愛した2人の女が次々とデスにとりつかれ、自分が殺した。その他にも、沢山の人間を、眉一つ動かさずに殺した。彼の心はもう死んでいた。いまさら死など恐くない。
だが、他の殺し屋達は、放射能防護服を奪い合って殺し合う。島から逃げ出すための小さな飛行機も奪い合う中で壊されてしまった。
ところが、原発事故は収まり、俊夫は生き延びてしまう。その事故は、デスが仕組んだものだった。人類最高の切れ者であるデスハンターの司令官シャドウは、おそるべき反撃に出る。島にいるデスを殺すため、島ごと爆破することに決めたのだ。そして、大勢の職員達には何も知らせず、デスハンター隊員のみヘリコプターで脱出しようとする。
しかし、俊夫は島に残る。仲間の若い女性リュシールが、今にも死にそうな重症を負って島に残されたからだった。彼女は、昔の仲間のテロリスト達に拷問され、身体を破壊され、顔の皮まで剥がされていた。
俊夫は、人の心を取り戻しつつあった。
だが、もう死んでいて当たり前のはずのリュシールは、以前と同じ、美しい顔と身体のまま俊夫の前に現れる。彼女はデスにとりつかれていたのだ。
戦慄する俊夫に、デスと融合したリュシールは問う。「本当に邪悪なのは、デスか人間か?」と。
人類を守るためとはいえ、何のためらいもなく人々や仲間すら殺すデスハンターと、その司令官シャドウ。仲間であったリュシールを残酷に殺したテロリスト達。いや、彼らだけではない。人間は果たしてまともなのか?
そして、リュシールを綺麗に修復したデス。デスは、ただ、とりついた人間の心のままに力を発揮するに過ぎない。
俊夫は古い人間としての自分を終わらせる。人もまた、何らかの理由で退化したデスだ。俊夫は、そこに戻るだけだ。
再び巡り合った時、俊夫はシャドウに宣言する。「シャドウ、お前の時代は終わった」と。
シャドウは、いままでの人類の象徴である。シャドウは、俊夫とリュシールに指一本触れることはできない。

311から日本を襲い続ける悲劇の中、我々は、古い自分を終わらせ、新しい自分を始めないといけない。
復興ではなく、新興が必要なのだ。リストラクチャリング(改革)ではなく、リエンジニアリング(再生)だ。
被害を受けた地も、そうでない地も、共に新興するのだ。どこも、なにも、誰のものでもない。
「私と他人」「私のもの」という意識が強い人間は、これまでの古い人類だ。
古い人類はもう限界だ。それを終わらせ、新しい人類を始めない限り、終焉は近い。
なら、我々は被災者に施しをせずにいられようか?それは、自分に与えることに他ならない。
新しい人類は、今はまだ、イエスや「観無量寿経」に書かれた釈迦のような超人に見えるかもしれない。しかし、それが人本来の姿だ。苦しみがあって初めて人はそれを目指す。
被災した地にいないあなたも苦しいに違いない。しかし、被災地ほどでないなら、苦しいことを喜べ。満たされた者は、真に大切なものを求めないからだ。イエスの言う、「天国はあなたのもの」の、あなたとは、苦しむ者のことである。







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