あらゆる動物の中で、人間は大人になるにのかかる期間が異常に長い。ほとんどの動物は1年くらいで大人になる。
もちろん、本能だけで生きていける動物と、知的に教育しないといけない人間との違いはあるが、人間でも、教育に手間と時間をかけるほど幼児化すると言えないだろうか?
また、老後なんてものがあるのも人間だけだ。これも、人間は知的な社会を持つおかげで、他の動物のように、身体の衰えが直接には死につながらないのだが、高齢者をますますないがしろにするようになってしまっている。

人間は、一人前になるのに最低でも15年は必要とされているようだ。日本では20歳で大人であり、17歳は児童だ(!)。しかも、実際は、20歳は一般にひどく幼稚で、成人式は30歳くらいで丁度良いという意見も冗談にならない。
そして、我が国では60歳くらいを定年とするが、事実上、それ以降が老年である。
しかし、18歳未満を児童扱いすることで、中学生や高校生が本当に幼児化している。そして、60歳を社会からの引退時期とみなすことで、60代が本当に老人になっている。
しかも、実際は、17歳まで子供として扱われることで、30代以上まで精神の幼さを引きずり、60歳を老人と思うことで、40代や50代からはっきりと老化を見せ始めている。
その結果、現在の日本は、子供か老人しかいない社会になっていると言えば、妙に納得がいく気がしないだろうか?

ところで、アニメに登場するヒロインは、いくら若くても、精神的には大人である。(最近は、そうでない作品も増えてきた感じはするが、それは置いておこう。)
「カードキャプターさくら」という作品で、ヒロインのさくらは9歳だが、こんなことがあった。
さくらと親友の知世は、翌日の日曜日にピクニックに行く計画を立てていた。しかし、それを聞いた父親は戸惑う。高校生の兄は、表面上は平気な顔をしながら、さくらに、明日はお前が家事当番であるときっぱりと告げる。さくらの母親は、さくらが3歳の時に死んでおり、今では、さくらも含めた家族3人が交代で家事をしていたのだ。
ここからがすごい。現在の日本ではあり得ないことだ。
さくらは残念な顔をしながらも、すぐに納得するのだ。父親も、さくらに同情を示すが、だからといって、善処を考えない。そもそも善処のしようがない。兄は、内心はさくらを可哀想に思っているのだろうが、表には一切出さない。この兄は高校2年生だが、本当に大人である。中学3年生の時に、教育実習に来ていた超美人の女子大生と交際したこともある。また、おこづかいはもらわず、1年中バイトをしている。また、さくらから電話で連絡を受けた知世も、がっかりはしながらも、やはり仕方がないとすぐに諦める。
我が国の実際の9歳なら、そもそも家事の役に立たないし、我慢を知らず、思い通りにならないとダダをこね、わめき、結局、わがままが通ってしまうことが多い。
ちょっと話は変わるが、このアニメでは、さくらのひいおじさんが登場するのだが、いわゆる老人臭さはほ全くなく、忙しく働き、さわやかで逞しく、自分のいたらなさを自覚して成長する。
この作品の原作漫画では、小学校の男性教師とその女子生徒が、対等な立場で恋愛して(世間の手前、隠れてだが)、男性教師は彼女に婚約指輪をプレゼントし、その女子生徒は本当に幸せに感じる。
さっき話に出た、さくらの親友の知世は、「私の一番好きな人が、自分を一番好きになってくれなくてもいい(それでも気持ちは変わらない)」と言う。
そして、そういったことを見ていると、実は、これらが、そんなに違和感のあるものではないと感じる。

本来、人間は、正しく育てれば、遅くとも14歳には立派な大人になる。そして、特に学校に行かなくても、現在の大学生など足元にも及ばないような勉強が自分でできるだろう。
また、70歳を過ぎていても、立派な仕事はちゃんと出来る。ただ、現在の大量消費の経済至上主義社会(欲望社会と言える)では、計算と協調と定型労働ばかりが強要され、年配者向きの仕事がないのは確かである。
私は、人間は、資質としては、10歳で大人、100歳まで、あるいは、生きている限り現役ということは全く可能と思われ、人類が精神的に進歩するなら、自然にそうなると信じるのである。社会もそのために相応しい形があるはずだ。
一応空想とするなら、2歳で幼いながらも、自分の役割を果たし、外見も今の10~12歳並で、数百歳でも若い容姿と能力を持つ潜在力が人間にはあると信じる。その頃には、お金というものは存在しないし、富を独占しようとする者などいない。人々は、自分のやっていることを労働とは思わないだろう。







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