アメリカのジョセフ・マーフィー(1898-1981)という牧師は、子供の頃からの神秘体験や、心の持ち方で自分や家族の難病が治ってしまうのを何度も見て精神世界に目覚め、聖書の教えを実世界に応用して理想の世界を精神の力で創り出す方法を人々に教えるようになりました。
マーフィーの教えは潜在意識の法則として知られています。

ただ、注意しなければならないのは、心、精神、潜在意識、あるいはその関連の、顕在意識、無意識といった言葉には厳密な定義はありません。なぜなら、人間は、まだまだ、心のことなんてほとんど何も知らないので、それぞれの人が、かなり勝手に独自の意味でこれらの言葉を使っているからです。
現在知られている心の理論は、根本的にはフロイトが構築したものです。ところが、フロイトは実は学者ではなく精神科医です。そして、非常に真面目で熱心なお医者さんではありましたが、実際に治療に成功したことはほとんどありませんでした。しかし、その精力的な治療行為が有意義な実験になって精神分析学を構築したということだと思います。ただ、その献身的で親身な治療により、患者には非常に信頼され、感謝されることが多かったようです。
おそらく、精神科医の治療なんてのは非常に難しく、フロイトでなくても、実際に成果を上げることは難しいのだと思います。
その中で、魔法で治しているのではないかと言われるほどの優れた成果をあげた精神科医がミルトン・エリクソンです。彼は本当に驚異的な存在だったと思います。よって、精神について知りたいなら、エリクソンの教えにあたるのが一番と私は考えています。精神医のみならず、エリクソンの娘が教師として驚くべき優秀さを示したように、心を扱う必要を感じている全ての人についてそう言えると思います。

マーフィーの話に戻ります。
私自身は、マーフィーの潜在意識の法則にはかなりお世話になったわけです。
幼い頃からの引きこもり気質で、おそらく、一生、社会で働くことは無いと思われ、大学に入るも、早々にニートを決め込んでおりました。
それが、19歳の時に、マーフィーの「あなたも幸せになれる」(原題は宇宙の活力といったようなタイトルです)を読み、精神の中に驚くべき力があることを知ると、それが自信になり、引きこもり気質が治ったというのではないですが、セールスマンになってセールスコンテストで優勝したり、有能なシステムエンジニアになって、仕事が新聞やテレビで紹介されたり、取材を受けたりもしたものです。

昨今は、引き寄せの法則が人気があるようですが、私は、引き寄せの法則も潜在意識の法則と変わらないと思いますし、マーフィー自身も引き寄せ、あるいは、牽引(引き寄せと大体同じ意味)の法則という言葉をよく使っていたと思います。
マーフィーを日本に紹介したのは、著名な知識人で評論家・学者の渡部昇一さんです。ただし、彼はマーフィー関係ではずっと大島淳一という名を使い、それらが同一人物であることは知られていなかったと思います。
ところで、私は、渡部昇一さんも好きなのですが、個人的にはあれほど抵抗も感じさせる人も珍しいと思います。彼の主張に対して、非常に納得でき賛成できるかと思うと、まるっきり否定はできないまでも奇妙なひっかかりを感じるといったものもよくあります。おそらく、渡部さんという人は、かなり複雑で多面的な人ではないかと思いますが、渡部昇一論なんて始めますと大変なことになりかねませんので、やめておきます。

そして、マーフィーの潜在意識の法則に関してもそれ(奇妙な抵抗)があります。
その中で、はっきり、これは問題だと思うところがあります。
ひょっとしたら、翻訳でのみそうなっているのかもしれないかと思いましたが、明らかに障害になるところがあります。
それは、顕在意識(意識する心)が主人、指揮官、命令する者で、潜在意識(無意識および無意識の中の無限の力)がそれに従うというところです。
これはまるっきり逆です。
潜在意識が主で、顕在意識が従でないと幸福になれません。
イエスが、「私の思いではなく、あなた(神のこと)の思いが行われますように」と言ったことがそれを指しています。
潜在意識は、直観、閃き、フィーリングとして、我々に命令を与えます。その通りにやればあらゆる苦労はなくなります。
マーフィーも言うように、潜在意識は無限の叡智でもあるのだから、それが当然と思います。なぜ、浅はかで愚かな我々個人の心が、至高の叡智に命令できるのでしょうか?
ただ、直観、閃き、フィーリングを受けるには、心が静かでないといけません。そのためには無欲でないといけません。
あれだけの理論を構築したフロイトが実際には患者の治療には成功しなかったように、マーフィーの潜在意識の法則には、心惹かれるものがありながら、それによって幸福になった人はほとんど皆無であるのは、きっと、我々には根本的に欠けたところがあるのだと感じています。しかし、それが何かが分かれば、事は意外と簡単であると思います。ただ、簡単なことが一番難しいとも言えるのです。世の中、ままならぬものですが、そのままならないということが最大のヒントと思います。
黒住宗忠は、「神様に全部まかせれば、面白いことばかり」と言いましたが、自我がプライドを捨て、無限の叡智に従う時、全てうまくいくはずです。







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