2021年創業のAI開発企業アンソロピックが開発したミュトス(ミトス)が、現在の世界最大の話題の1つだろう。
コンピューターシステムのセキュリティの欠陥を恐ろしい速さで発見してしまうミュトスは、まかり間違えば世界を滅ぼす可能性が十分にある。

ところで、ミュトスという言葉を知っている日本人は少ないだろう。
これは、古代ギリシャ語で「神話」といった意味だが、ギリシャ神話を読んでる人でも、ミュトスという言葉を見たことがある者は少ないと思う。
1960年代の石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)氏の代表作である『サイボーグ009』で、009ら00(ゼロゼロ)ナンバーサイボーグ達は、ギリシャのある島で、ミュートスサイボーグ達と戦っている。
00ナンバーサイボーグ達よりはるかに戦闘向きに作られた上、後から作られただけあって性能・完成度で優るミュートスサイボーグ達を相手に、00ナンバーサイボーグ達は苦しい戦いを強いられる。
ミュートスサイボーグトップのアポロと009が戦う中、アポロは自分の強大な能力を惜しげもなく009に披露し、009にも「他にどんな能力を持っているのだ?」と尋ねる。
アポロも持っている加速装置しか持っていない009の「後は勇気だけだ」というセリフは今も有名で、2016年の『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』のエンディングで、漫画の中で009がこれを言う場面が表示されている。

能力と自信をたっぷり持つアポロと、勇気だけの009。
実力差通り、あっけなくアポロが勝ったかに見えたが、お話は不思議な展開を見せる。
このような漫画を描けることが、石ノ森章太郎さんが偉大な漫画家であった理由と思う。
人間には自信が必要だ。
しかし、最初から自信がある人間なんていない。あるように見えたら、それは偽物だ。
アポロの自信も偽物だった。
人間は、勇気を持って行動してこそ、力と自信を得る。
だが、常に自分を知ることが必要だ。
でなければ、竜に立ち向かうカマキリのごとく、宇宙船を止めようとするハエのごとく、一瞬で滅びる。
アポロは自分を知らなかった。それで悲劇的な最後を迎えた。
古代ギリシャのデルポイ(デルフォイ)にあるアポロン神殿の柱には、こう書かれている。
「汝自信を知れ(身の程を知れ)」
自分がアポロン(アポロ)だと信じるミュートスサイボーグのアポロが自分を知らなかった、身の程をわきまえなかったのである。

人間の全ての不幸は、身の程をわきまえないところから起こる。
そして、身の程をわきまえたものは成功する。
徳川家康は、天下取りの秘訣は、身の程を知ることだと言ったという説話がある。

◆当記事と関連すると思われる書籍等のご案内◆
(1)サイボーグ009(1) (石ノ森章太郎デジタル大全)
(2)サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER ※Amazon Prime Video dアニメストア
(3)CYBORG009 CALL OF JUSTICE ※Amazon Prime Video dアニメストア
(4)ソクラテスの弁明 クリトン (岩波文庫)

幼い女神
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