人を服従させるスキルについて話す。
世の中には、美男や美女だったり、華やかな雰囲気を持っていたり、カリスマ性があったり、優れた能力を所有していたり、その他の際立った特徴により、人々に敬服、敬愛され、虜にしてしまうような人がいる。
しかし、そんな美点が何もなくても、あるいは、外面的内面的な素晴らしさがあっても、それとは関係なく人々を魅了する人もいる。

ずっと以前、テレビで見たが、インドのある村で、生き神のように敬われている男がいた。
その男は、別に特別な立場にあるわけではない、何か特別なことが出来る訳でもない、普通の50代か60代の男だった。
彼の教えは「私を頼るな、自分を頼れ」という平凡なものだった。
これと似た話が2400年程前に荘子(荘周)が書いた『荘子』の中にある。
アイタイダ(哀駘它)という誰からも強く慕われる男がいた。
男なら彼の義兄弟になりたがり、女なら心から彼に尽くしたがるし、若い娘は妾でもいいから側に置いて欲しいと言う。
さらに、国王であれば、宰相(国政の最高位。総理大臣のようなもの)にし、共に国の発展を喜ぼうとする。
ところが、このアイタイダ、美点は何もないばかりか、酷く醜い男で、優柔不断ですらある。
しかし、少しでもアイタイダと過ごすと、完全に魅了されて離れられなくなる。

最近では、そんな人間のお話が、小説・アニメの『俺だけレベルアップな件』にある。
主人公の水篠旬(みずしのしゅん)は、死者を操る、いわゆるネクロマンサー(死霊魔術師)で、死んだ人間やモンスターを使役することが出来る。旬が使役する死者は「影」と呼ばれ、姿は生前と同じだが、影のように黒い色をしている(人間の場合は顔だけは白いこともある)。
ところで、生前、どれほど旬を憎んでいた者でも、影になれば旬に完全に忠誠を尽くすようになるのだが、少しの間(1分程度か)だけ影になった人間の霊が、その時の様子を「旬を敬服したいという抗い難い強い欲求が沸き上がる」と言う。
『荘子』のアイタイダは、生きている人間に対し、そのような影響を与える人物と言えるだろう。
そして、上のインドでの話のように、そんな人間は実際にいる。

ラマナ・マハルシもそんな人間だったのだろう。
誰かが、マハルシに、
「あなたと一緒に過ごす1日は素晴らしく、2日ならもっと良く、3日だとさらに良いのです」
と言った言葉が、その心情を適確に言い表している。
誰もがそう感じ、ほとんど会話をしないマハルシのところに集まり、マハルシが死して75年を過ぎた今も、彼が居た場所への巡礼者は絶えない。

どうすればそうなるかは分かり切っている。
思考を消せば良い。心を消すと言っても良い。
そのために、マハルシは「私は誰か?」と問えば良いと教えたが、その答である「私は世界を造っている神である」とでも唱えても良いと思う。
「南無阿弥陀仏」でも、何かのマントラ(真言)でも呪文でも構わないと思う。
特に、自分が思考していると気付いたら唱え、思考を止めるのだ。

◆当記事と関連すると思われる書籍等のご案内◆
(1)新釈 荘子 (PHP文庫)
(2)中国の思想(12)荘子(徳間書店)
(3)ラマナ・マハルシの教え(山尾三省訳)
(4)ラマナ・マハルシとの対話 第一巻
(5)俺だけレベルアップな件 ※Amazon dアニメストア for Prime Video

息遣い
AIアート2005
「息遣い」
Kay

  
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