あまり重要視する人はいないが、これほど探求すべき重要なことはないと思うものがある。
それは、シーモア・パパート(1928~2016)の「歯車」だ。
パパートは、数学者、教育学者、児童心理学者、コンピューター科学者、AI研究者など広い分野で高い業績を上げた天才と言って良いと思う。
その恐るべき能力は、生まれつきのIQ(知能指数)がさぞ高いのだろうと思わせるが、本人は面白いことを言っている。
「私の能力は平凡だが、業績を上げることが出来たのは歯車のおかげ」
どういうことかと言うと、彼は3歳か4歳の時に、自動車のエンジンの中で動く歯車に魅了されたらしい。
そして、それ以降、あらゆることを、頭の中で歯車を動かすことで考えたという。
そのあらゆることとは、文字通りあらゆることで、子供の時のデートの予定から、後の数学の高度な問題まで全てだ。
多分、パパートは、頭の中で歯車をどう動かしたのかを具体的に述べたことはないと思う。
それはおそらく出来ない。
とはいえ、実際に、頭の中で歯車を動かしたのは事実だろう。
そして、パパートは、他の人・・・特に、児童心理学者で教育者でもある彼は、子供達に、パパートにとっての歯車に匹敵するものを持ってもらいたいと思った。
しかし、それに関しては失敗したと私は思う。
彼は、教育用プログラミング言語LOGOを開発し、LOGOが子供達にとっての歯車になると期待した。
ちょっと馬鹿じゃないかと思ってしまった。
歯車とLOGOでは、見た目の難易度が違い過ぎる。
歯車になりうるものは、左脳には単純に見えるもので、右脳に自動的に展開・構築させるものだ。
それには、表面上は歯車並に簡単なものでなくてはならないが、おそらく、普通の人の場合は、もっと単純で簡単なものでないといけない。

パパートは、高度な知性を発揮させる単純なものを「概念」と言い、これは普通に言う「概念」と同じようであり、違うようである。
パパートは、「概念」が何より大切だと言う。
こう抽象的な言い方をすると分かり難いが、要は、歯車という「お気に入り」を見ていたら何でも分かるということだ。
大切なことは、概念と言うよりは「私のお気に入り」だ。
「私のお気に入り(My Favorite Things)」と言えば、有名なミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』の中の楽曲の1つに、同タイトルの歌があるが、この曲ほど多くのカバーバージョンがある楽曲は珍しい。
平原綾香さんが、ほぼ英語の原曲の通りの意味の日本語で歌っているが、この歌にあるような「バラの雫」「子猫のひげ」程度のものが、歯車に、概念になりうるのだと思う。
岡潔的に言えば「情緒」である。
何か、妙にお気に入りというものは、それに情緒を感じるからだろう。
私にも、人目にはつまらないものだが、そんなお気に入りがあり、それのおかげで私は高度なプログラミングが出来るのである。
横尾忠則さんは子供の時からターザンが大好きなのだそうだが、彼にとっては、ターザンがパパートの歯車かもしれない。
横尾さんは、「10代の時に好きだったものは重要」みたいなことを書いていたと思う。

◆当記事と関連すると思われる書籍等のご案内◆
(1)マインドストーム(シーモア・パパート)
(2)サウンド・オブ・ミュージック - オリジナル・サウンドトラック (SHM-CD)
(3)サウンド・オブ・ミュージック [Blu-ray]
(4)人間の建設(岡潔、小林秀雄)

夕風
AIアート1972
「夕風」
Kay

  
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