イソップの『アリとキリギリス』のお話で、愚か者扱いされるキリギリスだが、楽しく遊ぶ積極性があり、また、アリに対し、「君達も、楽しくやろうよ」と誘いかける外交性もある。
そもそも、キリギリスのように楽しく過ごすためには、衣食住が足りていなくてはならないはずだから、古代の話であることを考えると、やはりキリギリスは優秀な面もあるのだろう。

ところが、現代で言えば、アリは、真面目にお勤めをするサラリーマンで、キリギリスは実家住まいで、親に養われるニートのようなものだ。
そう考えると、『アリとキリギリス』のお話は、まさに今の日本のお話のようであると思う。
今の日本では、アリは、ちゃんと学校を卒業して就職し、真面目に働き続け、コツコツ貯金するような者だ。
キリギリスは、今の快楽を追いかけるだけで、たとえ働いていても、スキルを磨くこともなく、収入は増えず、蓄えも作らないし作れない。
『アリとキリギリス』のお話の終盤とは、定年頃の60~65歳のことで、アリは2000万円の貯金と月15万円の年金を確保し、一応老後の目途が立っているが、キリギリスは貯金がゼロか500万円以下で、年金は月10万円あるかどうかで、老後の不安がのしかかる。
そして、今述べたアリは、30年前の日本では負け組だが、今の日本では、これで勝ち組なのである。
今の日本では、定年時に、貯金ゼロどころか多額の借金を背負っている場合も多く、真面目に働いたのに年金が月に10万円以下という場合が珍しくはない。

若いうちは老後のことを考えないし、それはそれである意味健全なことであるが、そのまま老後になってしまうケースが多くなると思われる。
若いうちは、自分の将来はバラ色だと考える場合が多く、これもまた、一概に悪いことではない。
自分は成功すると思っている人も多いだろう。
だが、予期しないような成功が訪れるのは、全くの運であることは知っておくべきだろう。
それ以外の普通の成功・・・会社で出世して、それなりに豊かになるというようなものは、若いうちから計画的にやらないと得られない。
そして、今の資本主義社会では、計画的な成功が得られるのは、頭の良い者だけで、上位10パーセントにあたるIQ120以上の者だけだろう。

そこで引き寄せである。
『ザ・シークレット』や『エイブラハムの法則』や『マーフィーの成功法則』などで引き寄せを行う者は多くはなく、おそらく全体の2割もいないが、その中で、引き寄せで一応の成功が出来るのは多くて1割だ。
可哀そうなのは、真面目に引き寄せに50年取り組んで、全く成果がなかったというものだが、それは普通である。

ただ、上記のパターンに当てはまらない者が僅かにいるのである。
その極端な例が、アメリカ大統領だったジョージ・ワシントンとエイブラハム・リンカーン、そして、偉大なSF作家H.G.ウェルズである。
実は、彼らは惨めな一生を終えるはずであった。実際、40歳くらいまでは、どうしようもないロクデナシだったのだ。だが、なぜか急上昇した。

自分が、どんなアリ、どんなキリギリスであろうと、なるべくしてそうなったと認識すれば、何かが起こるのである。
ワシントンやリンカーンやウェルズが、駄目な中年になったのは宿命であった。彼らは、それを認めたのである。
そして、宿命に逆らわないことにしたのだ。
親鸞の『歎異抄』には、そういったことも分かるようなことが書かれているのだと思う。個人的には、これ以上に理解し易い本はないと思う。
司馬遼太郎や西田幾太郎や三木清といった日本の最高の英知の持ち主達がナンバー1の本と言っただけのことはあると思う。

◆当記事と関連すると思われる書籍等のご案内◆
(1)新版 歎異抄 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
(2)バガヴァッド・ギーター(日本ヴェーダーンタ協会)
(3)ポリー氏の人生(H.G.ウェルズ)
(4)誰でも小さなことで大切な願いがかなえられる(チン・ニンチュウ)
(5)因果応報の法則(丹波哲郎)
(6)「原因」と「結果」の法則(ジェームズ・アレン)

ピンクの薔薇
AIアート1668
「ピンクの薔薇」
Kay

  
このエントリーをはてなブックマークに追加   
人気ランキング参加中です 人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ