引き寄せの本の中で一番売れたのは、ロンダ・バーンの『ザ・シークレット』だが、この本は、いわば「寄せ集め」だ。
引き寄せを含むスピリチュアル関係の有名人・人気者を集め、それらの「引き寄せマスター」達が自由に主張を述べているのだが、マスター達の主張はそれぞれ違い、本として一貫性がない、相互矛盾を多く含むものになっている。
こんな本が役に立つはずはないし、実際、この本を読んでうまくいった人はほとんどいないと思う。
しかし、この本を読んで大成功したという話がYouTubeであったので見て(実際は聴いて)みたら納得した。
その人は、この本をボロボロになるまで繰り返し読んだのだ。
さっき、この本は一貫性がないと言ったが、1つだけ一貫していることがある。
それは「引き寄せはある」ということで、その主張の仕方が割とうまいのだ。
この本が売れた理由は、この「引き寄せはある」と読者に信じさせる工夫がなかなかよく出来ていることだ。
よって、この本を読めば読むほど、引き寄せはあるという信念が強まるのだが、実際、引き寄せが出来るかどうかの根本はまず「引き寄せがある」と信じることが出来ることだ。
その意味では有益な本であり、売れる理由もあると思う。
ただ、私のように、この本の相互矛盾が気になったり、あるいは、特定のマスターの考え方が嫌いという場合には、有害な本になる可能性がある。

ジョセフ・マーフィーの本も似たところがある。
マーフィーは引き寄せという言葉は使わないが、実質は引き寄せと同じことを書いていて、各本の各章が、引き寄せがあることを読者に懇々と訴えている。
ところが、同じ著者が書いたものでありながら(ゴーストライターが書いたものもあるのではと思う)、それぞれの本で(あるいは1冊の本の中で)結構矛盾があるし、理論的には納得し難いことも書かれていると思う。
しかし、マーフィーの本で引き寄せの事例の羅列を読み、「引き寄せは本当にある」と信じられたら、それで勝ったも同然だ。
ただ、その引き寄せの事例に「同じようなことばかりが書いてある」と退屈したり、引き寄せ理論に疑問を感じるようなら、もう読むのは止めた方が良い。

『ザ・シークレット』にしろ、マーフィーやその他の引き寄せの本でも、理論的には大したことは書かれていない。
そもそも、引き寄せを完全に理論的に説明するのは無理がある。
最近は量子力学の考え方を使って引き寄せを理論化するような人も多いが、それがかえっておかしな理論になっている場合も多いと思う。
そもそもが、引き寄せも量子力学も、分からないことが沢山ある。
量子力学の権威でノーベル賞受賞者のファインマン博士が言うには、量子力学を理解出来る人は、自分も含めていないのだそうだから。

同じ本をボロボロになるまで読めるなら、それが非常に良い方法だと思う。
ただ、IQが高い人は頭が回るので、理屈に納得いかなかったり、相互矛盾が気になる場合が多いのかもしれない。
そんな人は、解説なしの仏典や聖書を読んだ方が良いかもしれない。理屈は人間には理解不能として書かれていないので、かえって矛盾を感じない。しかし、下手な解説を書くことで、その良さをぶち壊している本が多い。まあ、解説部分は無視すれば良いのだが。
超IQが高い天才数学者の岡潔は念仏を唱えていたが、彼は元々は『正法眼蔵』を熱心に読んでいた。『正法眼蔵』は、下手な解説をしない限り、とてもではないが理解出来ないことが書かれている。ただし、理解は出来ないが、非常に美しいことが書かれている。つまり、おそらく真理が書かれている。くれぐれも、せいぜいが現代語訳のみ読み、解説は読まないことだ。
同じ意味で『老子』も大変に良いが、現代語訳が結構(翻訳者どうしで)バラバラで、また、内容的に退屈し易いかもしれない。
『バガヴァッド・ギーター』も良いのだが、ストーリーの把握が結構ややこしい。しかし、実は、ストーリーにあまり意味はないので、ストーリーは概要をうまく把握すれば良いと思う。
尚、私のお薦めの『正法眼蔵』は、少しお高いが(3520円)、禅文化学院訳の主要な章を選択したものだ(『正法眼蔵』自体は長編大書である)。

◆当記事と関連すると思われる書籍のご案内◆
(1)現代訳 正法眼蔵(禅文化学院)
(2)老子 (岩波文庫)
(3)バガヴァッド・ギーター(日本ヴェーダーンタ協会訳)
(4)日本語の法華経(江南 文三)
(5)ザ・シークレット(ロンダ・バーン)
(6)マーフィー 人生は思うように変えられる(ジョセフ・マーフィー)

アクア
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Kay

  
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