「神を信用しろ、だがラクダはつないでおけ」の真意 : ITスペシャリストが語る芸術

人間は、成功だ、栄光だ、富だといったところで、本当は平安が欲しいのだと思う。
仏教も、悟りを得る目的は大安心だと言われていると思う。

アニメ映画『009 RE:CYBORG（009 リ・サイボーグ）』（2012）の中で、グレート・ブリテン（007）が、一見物静かなジェット・リンク（002）の心に平安がないことを見抜いたように言う。
「何がそんなに気に入らない？」
見透かした相手がグレートでは仕方がない。ジェットは吐き捨てるように、
「何もかもだ！」
と答える。

ほとんどの人間が同じなのだ。
自分に「何がそんなに気に入らない？」と尋ねれば、きっと、「何もかもだ！」と言いたいだろう。
では、何もかも気に入らない理由はなんだろう？
それは、胸の中に不安が渦巻いているからだろう。
何の不安と分かるものもあるかもしれないが、それとは別に、得たいの知れない不安というものもある。

ところで、最近、ここでよく話題にしている、今この瞬間に集中する「今今メソッド」に慣れてきた人は、皆、この今今メソッドによって不安が消えると言う。
どういうことかと言うと、「今、この瞬間には、心配するようなことは何も起こっていないことが分かる」のだそうだ。
そして、実を言えば、今この瞬間以外の時間など存在せず、あると思える過去や未来は幻想である。
よって、今この瞬間の心配がないなら、心配そのものがない。
だから、今今メソッドなどで思考が消え、今この瞬間に引き戻されると、「あれ、何か問題があったような気がするのだが？」と奇妙な感じがすることがある。おそらく、問題そのものがないことになってしまったのだ。ない問題の記憶などあるはずがない。
私が、何とか憶えている範囲では、こんなことがあった。
「あれ、今、家の近くで暴走族が集まってバイクの音を轟かせていたように思うが、気のせいかな？」
きっと、別世界で、そんなことがあったのだろうが、違う世界に移動したのである。
実際、そんな音は全くせず、確か、そんな音は長時間（場合によっては一晩中）続くものらしいから、一瞬で消えるはずがないし・・・といった感じだ。

どんな世界に行くか、あるいは、どんな世界を作るかは、自分の悪い頭ではなく、優秀な無意識（魂、潜在意識、霊、神）にまかせてしまうのが良いらしい。
私が昔から好きな言葉に「神に出来ないことはない」というものがある。
新約聖書の福音書の中では「神に出来なことは何一つない」とあるようで、大天使ガブリエルがマリアに言った言葉らしい。
ラマナ・マハルシが、「電車に乗ってまで、荷物を抱えている必要はない。荷物を下ろして安心しなさい」と言ったのも、全て神にまかせろという意味だろう。
そして、何と言っても私が好きな言葉が、矢追純一さんが言った「僕は頭が悪いから考えることを放棄した」である。
まあ、なかなかそのようには出来ないが、素晴らしい心構えだと思う。

「神を信用しろ。だが、ラクダはつないでおけ」という、イスラム神秘主義の言葉があるらしいが、これも私の好きな言葉だ。
これは、自分でも最低限のことはやれという意味にも取れるが、ラクダをつなぐとは、「意識を今に留めよ」「意識を過去や未来に放浪させるな」という意味だろう。
つまり、今今メソッドをやれということである。