マントラ(真言、呪文)になぜ効果があるのかについて、決定版とも思えるものがある。
それは、密教を中心とした沢山の著書を持つ宗教学者、正木晃(まさき あきら。1953年~)氏の著書『密教の聖なる呪文』に書かれていることであるが、理屈で納得出来ると思う。
この本の中でも、根拠となる本が引用されているが、その本がまた大変なものだ。
それは『瑜伽師地論』(ゆがしじろん)という、大乗仏教唯識派の重要な文献とされるもので、
この書は、インドの無著(むじゃく。アサンガ)という唯識派の宗教学者が、弥勒菩薩から聞いた教えを書いたと言われるもので、あの玄奘(玄奘三蔵)が中国語に訳した100巻もの大著だ。
さすがに専門の学者でもないと読めないものだが、正木晃氏がうまく引用してくれている。

ここでは、正木氏の著書に倣い、マントラなどを呪文という言葉でまとめる。
以下は、『密教の聖なる呪文』に書かれていることを、ごく普通の言葉で言いなおしていることをお断りする。
簡単に言うと、呪文がなぜ効果があるのかというと、「呪文が無意味であることを、呪文を唱える者に認識させるから」という、とんでもないものだ。
なぜそうであるかは『瑜伽師地論』にも書かれていないので、正木氏は推測するしかないとするが、「誰でも体験出来る」こととして、呪文を繰り返し唱えていると、呪文は単なる音の羅列になって、言葉の意味が頭の中で消えてしまうという、ごく当たり前のことだ。
しかし、(『密教の聖なる呪文』に書かれていることではないが)それは呪文でなくても、どんな言葉でもそうだ。
たとえば「時計」という言葉を1万回も連続で唱えていたら、頭が麻痺して「時計」という意味は消え、「トケイ」という単なる音でしかなくなる。
ただ、これも私の考えだが、優れた呪文というのは、言葉の意味が無くなる効率が高いというだけなのだろう。
そもそも、「オン・アロリキャ・ソワカ」という呪文は、観音菩薩の真言で、インドでは「オーン、蓮華を持つ者よ、幸いあれ」という意味らしいが、我々日本人には元々意味がない。

総じて言えば、呪文になぜ効果があるのかというと、繰り返し唱えているうちに、思考が消えるから効果があるのだが、単に、呪文を唱えていれば他のことを考えることが出来ないだけでなく、徹底的に思考が消えることで「空(あるいは無と言って良いと思う)」を体感するのである。
だから、『般若心経』では、観自在菩薩(観世音菩薩)は、「ガテー・ガテー・パーラガテー・パーラサンガテー・ボーディ・スヴァーハー」という呪文を繰り返し唱えることで「空」を感じた、つまり、悟りを開いたと書かれているのである。
空海は求聞持聡明法(ぐもんじそうめいほう)といって、一定期間に虚空蔵菩薩の真言を100万回唱える荒行で天才になったというが、これも、100万回という回数とか、特に虚空蔵菩薩の真言に意味があるのではなく、これだけ徹底的に唱えれば、思考なんて完全に消えるというだけのことであると思う。

ただ、正木氏の論から考えれば、元々、我々には意味を感じられない古代インドの言葉(サンスクリット語)の呪文を唱えるより、南無阿弥陀仏や南無観世音菩薩、あるいは、南無妙法蓮華経といった、多少でも意味が分かる言葉の方が、言葉が音の羅列に変わるプロセスを得られるから良いのかもしれない。
あるいは、そうではなく、最初から意味のない言葉の方が、早く思考が消えるかもしれない。
これは、各自で試してみるしかない。
ただ、いろいろ聞くところから考えると、まずは意味がある言葉で唱えて、悟りのレベルを含め、引き寄せがうまくいったという話が多いように思う。
悟りでは、南無阿弥陀仏を唱えて万物一体を体験した普通の人の話は多いし、アファーメーション(これも一種の呪文)で引き寄せを行った例は沢山ある。
たとえば、「神様の奇跡が起こる」「お金がある」「ありがたい」「しあわせだ」といった言葉を唱えて引き寄せが起こったことも、これで納得出来る。
我々であれば、日本の神様の名前、たとえば、アマテラスオホミカミやアメノミナカヌシノカミ、あるいは、大祓詞(おおはらえのことば)では長過ぎるので、短い祝詞を唱えるという手もある。
たとえば「いろは祝詞」や、もっとも簡単に「祓いたまえ 清めたまえ」とかである。
「トホカミエミタメ」であれば「遠い昔からおられる神々よ、微笑みたまえ」という意味が感じられる。
とはいえ、何でも良い。
呪文、マントラの原理が分かった気がする。

重厚な屋敷
AIアート689
「重厚な屋敷」
Kay


◆当記事と関連すると思われる書籍のご案内◆
(1)密教の聖なる呪文(正木晃)
(2)よくわかる祝詞読本 (角川ソフィア文庫)
(3)歎異抄(梅原猛。講談社学術文庫)
(4)選択本願念仏集(法然。角川ソフィア文庫)
  
このエントリーをはてなブックマークに追加   
人気ランキング参加中です 人気blogランキングへ にほんブログ村 哲学・思想ブログ 人生・成功哲学へ