「難しいことを易しく説明するのが本当に賢い人。無能な優等生ほど易しいことを難しく説明する」
というのは、当たっている部分もあると思う。
ただし、「易しく説明された難しいこと」は、あくまで概念であり、それで全部を分かった気になると痛い目に遭う。
「知識ゼロの俺に分かるように言え」などと言う傲慢な人間には何も分からない。

ところで、いくら賢い人だろうと、易しく説明出来ないこともある。
たとえば、あるとても賢い男性がいて、彼には、好きな女性がいるとする。
その男性に、「お前の好きなその女性について易しく説明しろ」と頼むと、その男性がいくら賢くても、まず、易しい答は返ってこない。
「つまりだな、お前の好きなその女性は、可愛くて性格が良いということなんだな?」
と言うと、その男性は、
「そうではない。そうとも言えるが、そうではない」
と言うだろう。
こんな場合、少々頭のおかしな男性なら、
「彼女は女神のような人さ」
と「易しく」説明するかもしれないが、そんな答では何も分からない。

つまり、何を言いたいのかと言うと、本当に大切なことは言葉で説明出来ないということだ。
『星の王子さま』であったが、建物としての家を説明する時、大人相手に「ゼラニウムの花が咲いていて、レンガは赤で・・・」と説明しても駄目で「一千万円の家」と言ったら、大人は「なるほど分かった」と言い、友達について説明する時も、「痩せてて、サッカーが好きで、歌がうまくて・・・」では駄目で、「お父さんが弁護士」と言えば、なぜか大人は「なるほど、そんな子か」と分かる。
これも、説明する人は、その家とか友達が好きなのだが、説明を受ける大人は、そんなものには本当は興味がないからである。

河合隼雄さんというのは、本当に優秀な心理学者だと思うが、彼の講演内容を書いた本で、彼が「コンステレーション」について普通の人に説明するところを読むと面食らう。
河合さんは、分かり易く説明しようとしているようにも見える。
しかし、いい感じで分かり易い説明をしていると思ったら、すっと話が違う方向に飛んでしまい、そこで全く分からなくなる。
そんなことが何度も繰り返される。
また、話としては難しくないのに、ひどく抽象的な説明をして、話をはぐらかしているようにも思える。
まるで馬鹿の説明だ。
なぜ、そんなことになるのかというと、河合さんが「コンステレーション」に対して、それだけの思い入れがあるからで、それはまるで、好きな女性に対する想いにも似ていて、そんなふうに話さざるを得ないのだろう。河合さんほどの人でも、好きなもの、思い入れのあるものに対してはそうなのだ。
つまり、河合さんは、「コンステレーション」が、人間という複雑で神秘的で奇妙なものを説明出来る鍵になると思い、特に、最初にそれを知った時に衝撃を受けたのである。

心理学用語の「コンステレーション」について、まともな説明を聞くと、
「コンステレーションとは星座という意味で、心理学では配置とか布置と言う」
などと、最初のところから「?」が浮かび、聞けば聞くほど分からなくなる。
多分、言っている人も分かってないのだ(笑)。

私なりの「コンステレーション」の説明をすると、
「精神の中には星座がある。星座の星とは個々の記憶のことで、個々の記憶の一定の集まりが星座、つまり、コンステレーションだ」
となり、やっぱり分からないが、その理由は、「精神」「記憶」「個々の記憶」「個々の記憶の一定の集まり」という言い方が曖昧で、厳密性がなく、いろんな意味に取れるからだ。

なぜ、「コンステレーション」について述べたのかというと、引き寄せが出来る人と出来ない人、あるいは、引き寄せが出来ることと出来ないことは「コンステレーション」で決まるからだ。
精神の中の「コンステレーション(星座)」、つまり、記憶(星)の集まりが外の世界に現れてしまう。
お金について言えばこうだ。
お金の「コンステレーション(星座)」は人によって違う。
ある人は、それは「働かないと得られないもの」「苦労して得るもの」「自分には沢山得られると思えないもの」「沢山持っているほど偉い人と見なされるもの」といった「星(記憶)」から構成された「星座(コンステレーション)」である。
この人のような「コンステレーション」を持っていたら、お金の引き寄せは出来ない。
お金の引き寄せが出来る人の、お金に関する「コンステレーション」は、「簡単に得られるもの」「何をやっても得られるもの」「いつでも誰かがくれるもの」「どこにでも豊富にあり、欲しいと思えば流れ込んでくるもの」といった「星(記憶)」で構成された「星座(コンステレーション)」だ。

実際、世界は「私」の「コンステレーション」次第だ。
で、好ましい「コンステレーション」を作るために、河合隼雄さんのような人は、凄く難しいアプローチをし、数パーセントでも成功したら大変な成果になる。
しかし、引き寄せをそのやり方でやると、誰も引き寄せが出来ない。
だが、多くの引き寄せの手法は、それに似た、それでいて、河合隼雄さんのような深い学問体系があるわけではない、いい加減な知識や思い込みで語られているのだから、成果が出る人は少ない。
そこで、「コンステレーション」をばっさり消してしまうというのが、古代からの英知で、ラマナ・マハルシや荘子などの賢者は、それを教えていた。

怪談を聴く子
AIアート605
「怪談を聴く子」
Kay


「私は私」のマントラで「コンステレーション」を解体させる。
悪い「コンステレーション」が発動したら、「それが何?」のマントラで、それを止めてしまう。
そこから始めないと、うまくいかないと思った。
だが、それでうまくいくと思う。

◆当記事と関連すると思われる書籍のご案内◆
(1)こころの最終講義(河合隼雄の講演)
(2)無意識の構造(河合隼雄)
(3)自我と無意識(C.G. ユング)
(4)エスの本(ゲオルク・グロデック著、岸田秀・山下公子訳)
(5)星の王子さま(サン=テグジュペリ)
(6)ラマナ・マハルシの教え
(7)荘子〈1〉 (中公クラシックス)
  
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