「経営の神様」と言われた、パナソニック創業者の松下幸之助が講師を務めていた経営セミナーの講義中のことである。
松下幸之助が「これからの会社は、ある程度の社内留保がないといけない」と言ったらしい。
社内留保とは、簡単に言えば、利益の中から税金や株の配当といった出ていく金を引いた実質の蓄えだ。
すると、どこかの経営者が、
「社内留保を持つにはどうすれば良いでしょうか?」
と質問した。
それに対し、松下幸之助は、
「社内留保を持つことを願うことです」
と答えたらしい。
この話は、中島孝志氏の『波動経営』という本に書かれていたが、中島氏が、この話に対し、どんな説明をしていたのか憶えていない。
何も書かれていなかったか、もし書かれていても良い説明ではなかったのだと思う。
と言うのは、私には松下幸之助の気持ちが分かるからだ。
そんな質問をされた松下幸之助は、
「アホなこと聞くな」
と思ったに違いないのだ。
まあ、普通に考えたってそうだろう?
松下幸之助だって、話の流れから「社内留保が必要」と、当たり前のことを言っただけで、それをどうやって得るかはアンタの問題だろ、あたしゃ知らんと言った感じだろう。
言ってみれば、「モテるにはダイエットせにゃならん」と言ったら、「どうやったらダイエット出来るか?」と聞かれたようなものだ。
また、会社にとっての社内留保は、個人にとっての貯金と同じだから、「どうやったら貯金が増えるか?」と聞かれたようなもので、アホらしくて答えられないはずだが、「無駄な金を使うな」とか「副業しろ」なんて役にも立たないアドバイスをする者が多い。そんなこと他人に言われる人間は駄目に決まっている。

ところが、さすが松下幸之助は神様だ。
呆れついでに貴重で正しいことも無意識に言ったのだ。
「願え」
と。
これは、一般人の問題を解決することだ。
さっきも言ったが、会社の社内留保は個人の貯金と同じで、「貯金を殖やすにはどうすればいいか?」と聞かれたようなものだ。
それに対する役に立たない回答が、これも既に述べた「無駄使いをするな」「副業をしろ」あるいは「収入が高い仕事に変われ」だ。
一方、マシな回答が、松下幸之助の「願え」だ。
これは、『燃えよドラゴン』という映画の有名なセリフ「考えるな、感じろ」と同じだ。
「考えるな、願え」と言ったのだ。
ただし、肝心なことは「考えるな」だけで、「感じろ」「願え」は本当は余分だ。
ほとんどの人が分からないのはここなのだ。
「願う」だけなら「考える」よりずっとマシだ。
「欲しいなあ」とぱっと願っている間は考えないからだ。
だが、ねちっこく願うと、いろんな妄想が出て来て、つまらないことを考える。
だから、一瞬「欲しいなあ」とだけ願い、後は忘れることだ。
簡単にまとめれば、お金が欲しいなら「お金が欲しいなあ」と、さっと願って、それで、お金の問題は全て終わりだ。後は忘れることだ。

つまり、私がいつも言う「思考を消せば全能」である。
そのためには、「私は誰か?」と自分に問うたり、「私は何も考えない」あるいは「われ思わず」といった世界コマンドを唱えれば良いだけである。

ヴァンパイア
AIアート146
「ヴァンパイア」
Kay


こんな禅語がある。
2人のお坊さんが歩いていたら、きれいな女の子が川を渡れずに困っていた。
すると、先輩のお坊さんが、「私は坊主だから心配するな」と言って、女の子をお姫様抱っこして川を渡した。
その後、しばらくして、後輩のお坊さんが、鬱々とした疑念を先輩のお坊さんに言った。
「あれはまずかったのでは?」
坊主が女性に触れることは禁止だったからでる。
すると、先輩のお坊さんが言った。
「お前、まだ、女の子を抱っこしているのか?」

こんな簡単な禅語が分からなかったり、下らないややこしい解説をする先生がいるから困る。
先輩のお坊さんは「つまらないことを考えるな」、もっと簡単に言えば、「考えるな」と言っただけだ。
「われ思わず」という世界コマンドを唱えれば良いだけなのである。








  
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