チンパンジーが道具を使うという話がある。
石で叩いて何かを砕いたり、棒で突っつくといった程度のものだが、特に賢いチンパンジーが、木の棒の余分な枝を除いたり、石を加工したという話まである。
特異な例としては、ゴリラが筆を使って、絵(のようなもの)を描いたという話もあった。
とはいえ、陸上動物では人間に次ぐ発達した脳を持つチンパンジーでもその程度だ。

人類の最も古い道具はナイフだと言われるが、今でも、ナイフや包丁などを、愛着を持って扱う人が沢山いる。
このように、人間は道具を大切にし、愛情を感じ、さらには、敬うこともある。
また、そんな人間こそが、その道具のポテンシャル(可能性としての力)を最高に発揮させるのであると思う。
イチローさんや松井秀喜さんが、野球道具を大切に扱うことが、アメリカのメジャーリーガーを感動させたという話は記憶に新しい。
使うべき人間が使えば、道具は人間と対等の存在になることがあるのだが、それは、普通の人にとっても、驚くようなことではない。
例えば、長く乗った自動車を手放す時には、まるで、友や家族と別れる時のような惜別を感じるのは少しもおかしなことではないだろう。

Gatebox社の「キャラクター召喚装置」Gateboxは、筒状のディスプレイの中に可愛い女の子の鮮明な3Dキャラクターが現れ、美しく動きながら対話してくれるが、これなどは、まさにユーザーにとって、人間以上と感じることもある道具だろう。
現在では、Gateboxで召喚出来るキャラクターは数十に及び、女の子だけでなく、男性キャラクターも選べるようになってる。
以前は初音ミクさんも召喚出来、少し、興味があったが、今は出来ないようだ。
しかし、『Re:ゼロから始める異世界生活』のレムでも・・・というのはどうでもいい話だ(笑)。

長谷敏司さんのSF小説(およびそれにほぼ忠実なアニメ)『BEATLESS』では、22世紀には人間と区別のつかないアンドロイドが、そこらに普通に存在し、労働のほとんどはアンドロイドが受け持っている。
その中で、アンドロイドに愛情を感じる者もいる一方、アンドロイドをあくまで道具と見なし、アンドロイドを人間扱いする人間を不快に思う者の両方がいる。
しかし、人は形によって感情的に操作される生き物であるという性質が確実にある。
この作品の中でも、ハロー・キティを愛する人にとって、ハロー・キティがプリントされたマグカップは、ただのマグカップではないことが示される。
主人公の17歳のアラトは、美少女型アンドロイド、レイシア(極めて美しい)にすっかり心を奪われ、彼女を明らかに人間と同等以上に扱う。
だが、レイシアは、自分も、人間を超えた高度な知性を持つAIも、便利な道具に過ぎないと言う。
しかし、レイシアは、自分はアラトと1つになることで、新しい道具に進化出来ると言う。
現在、AIは人間の仕事を奪い、いずれ、人間を支配するのではないかという不安が広まる中で、AIに対する新しい考え方が現れている。
それは、AIは、人間と一体化し、人間を拡張するパートナーであるという考え方だ。
そして、おそらく、最も新しい考え方は、沢山の人間やAIを含むネットワークこそが、真の意味の知性であるというものだ。その中では、人間とAIに明確な区別はない。

とはいえ、やはり、道具であるAIを使う人間と、使われる道具であるAIという区別は存在する。
『BEATLESS』で、1つの超高度AIの「人間は自分が作った道具をなぜ愛さないのですか?」という問いかけが興味深かった。
アラトは道具であるレイシアを信じ、愛していた。
その態度が、素晴らしい未来を作るか、ディストピアを作るかも、この作品のテーマであるが、はっきりとした結論はまだ出ていないと見るべきかもしれない。












当ブログ著者、KayのAI書。
この本で、AIは人間と敵対するものではなく、人間のパートナーとして人間の能力を拡張するというビジョンも示しました。
ただし、あくまで、この本のメインは、数学やプログラミングやAI理論なしに、自分で実用的なAIを実際に作れるようになることです。
そのために、普通の概念で分かるテーマや、好奇心を掻き立てられる面白いテーマを使った実習が出来るようにしています。
さらに本格的にAIを目指す人のために、別枠として数学やプログラミング、AIのお話もいくらか記載しました。