錦織圭さんは、才能もあったのだろうが、大変なエリート教育を受けていた。
その錦織圭さんが2014年に全米で準優勝するまで、全米のベスト8に進出した日本人は、その92年前の清水善造(1891-1977)だけだった。
この清水さんが中学生の時、当時、日本でテニスはほとんど知られておらず、普通の農家の子であった清水さんは、たまたま庭球(軟式テニス)に出会い、空き地で練習し、高校で庭球部に入り、社会人になってインド駐在した時に初めて硬式テニスを始めた。
当時も、本場イギリスやアメリカのプロテニスプレーヤー達は少年時代からテニスの特別教育を受けていた。
そんな外国選手を相手に、清水は全英ベスト4、全米ベスト8の成績を上げた。
ところが、清水さんのラケットの振り方(特にフォアハンド)は、特別というか「変」だった。「格好悪い」「醜い」と言われたし、今見ても、確かにおかしい。
実は、清水さんは中学生の時、乳牛の餌の草を得るため、学校から家まで15kmもある道で釜で草刈りをしていた。
その草刈りの腕の動きが、ラケットを振る時にも出ていたのだが、その半端でない長時間の草刈りで鍛えられた力が、彼を一流のテニスプレーヤーにしたのだった。

フィクションではあるが、時代劇の『木枯し紋次郎』のヒーローである、渡世人(一般的に、博打で生計を立てている者)の紋次郎が、恐ろしく腕が立つ理由について、ちゃんと道理があった。
紋次郎は、ごく若い頃は木こりとして働いていた。特に、斧を使った薪割りを毎日長時間やったことが、後の剣の強さになったのだ。
紋次郎は38歳の時、わけあって、豪商の家に客人として迎えられ、大事にされたが、タダ飯を食うことを善しとしない紋次郎は、旅館を経営していたその商家でも大量に必要であった薪を作るための薪割りをしたが、その腕前は見事で、若い時の薪割り労働の凄まじさが分かったし、紋次郎の剣の力が凄いのも当然と思われた。

そこで私は、ものごとで抜きん出る法則を「清水の草刈り、紋次郎の薪割り」と言いたい。
何か1つを、長年、みっちりやれば、頭抜けることが出来るのである。
引きこもって、毎日、長時間ゲームをやっている者は、やはり、それで何かの力は身につけているはずなので、それを生かせば飛躍する可能性はある。
私の場合、プログラマーになれたのは、若い頃、当時のパソコンを動かすには、自分でプログラミングをするしかなかったのだが(ゲームに興味がなかった)、最初からプログラミングは出来ないので、本や雑誌に載っているプログラムをひたすら打ち込んだおかげであったと思う。
このように、既にあるプログラムを打ち込むことを、業界で「写経」と呼称することがあるが、今も、これがプログラミングを習得するための、極めて効果的な秘策と言われている。
(本来の写経とは、お経を書き写すことである)
坂本龍一さんは3歳からピアノを毎日みっちり弾き、イチローやテッド・ウィリアムズは、少年時代から、毎日バットを長時間振り続けた。
茂木健一郎さんによれば、ビル・ゲイツは教師の許可の下、高校時代、毎日プログラミングに明け暮れていたという。
魔法の呪文を毎日長時間唱えれば魔法使いになれる・・・かどうかは分からないが、無駄にはならないと思う。