ITスペシャリストが語る芸術

-The Kay Notes-
SE、プログラマー、AI開発者、教育研究家、潜在意識活用研究者、引きこもり支援講師Kayのブログ。

歌に形はないけれど

当ブログは、第一期ライブドア奨学生ブログです。
◇お知らせ
[2019/12/28]AI&教育問題専用ブログ、メディアの風を公開しました。
[2017/03/01]「通りすがり」「名無し」「読者」「A」等のハンドル名のコメントは原則削除します。

心を結び合わせる言葉と絵と音

小説について、その著者の話を聞くというのは、あまり奨められることではないかもしれない。
物語の核心の部分について、作者に対し、「あそこはどういう意味だったのですか?」なんて尋ねない方が良いのだろう。
なぜなら、書いた本人も分からないからだ。
我々だって、誰かに、「あの時、あなたは、どんなつもりでああ仰(おっしゃ)ったのですか?」と聞かれても、自分でどんなつもりだったか分からないものだ。
そして、優れた小説ほど、本人のものではない意識が、作者の精神を「乗っ取った」状態で書かれたものなのだ。
このあたりは、ソクラテスが丹念に説明し、プラトーンが書きとめたが(それが『ソクラテスの弁明』の主題と思う)、当時も今も、ほとんどの人が理解しようとしない。
だから、本物の作家は、問われても答えない。
それは別に難しいことではないのだが、それ(原理と言っても良いが)は世間の教義や信念とは著しく異なることなので、小市民、小善人は受け入れることができないし、受け入れようとしないのだ。
だから、むしろ、大悪人の方が理解できるのである。

小説が、人間より高い普遍意識によって書かれたものだという意味のことを少し述べた後で、「真実の愛」について述べよう。
それは、今月22日が94回目の生誕日になるアメリカの作家レイ・ブラッドベリ(1920-2012)の『みずうみ』に書かれている。
主人公のハロルドは最初12歳の少年で、その年の夏、愛する同い年の少女タリーを湖で失った。
彼は、「確かに愛を知っていた」と言う。
世間で言う大人の愛ではないとも言ったが、子供の恋愛でもない。
それが本当の愛だった。
性愛でもなければ、世間的な誓約でもない。
それは、神が結び合わせたもの、1つに溶け合ったもの・・・よって、人には引き離せないものだ。
アメリカ最大の賢者ラルフ・ウォルドー・エマーソンは、「神の魂が流れ込んできた瞬間のことは忘れられない」と述べた。
タリーとハロルドの魂に神の魂が流れ込み、2人を結び合わせたのだ。
それが、世間の中でどんな結果を生んだかは、それぞれが判断しなければならない。
作家に分からない訳ではないのだけれど、世間で言う意味ではやはり分かっていないのだ。

『みずうみ』は、萩尾望都さんが素晴らしい漫画作品にしている。
萩尾さんの絵は、言葉で多くを語らなくても、ハロルドやタリーの深い心のきらめきが、空や湖、それに、雲や砂や風にだって反射している。
「肉やモラルは意味をなさないが、それでも僕は愛を知っていた」ということが、言葉で言わなくても分かる。

初音ミクの歌『歌に形はないけれど』(作詞、作曲、編曲:doriko)は、私にはまるで『みずうみ』のための歌のように感じる。
この歌の、「宝物」、「形のないもの」は、それがハロルドの言う「愛」であるように思える。
たまたまなのだろうが、「透通る波」「砂の城」「遠く離れた君のもとへ」「時の中で色褪せないまま」という言葉が『みずうみ』と符合している。
音楽とは、心と心の隙間を埋め、聴く人達の心を1つにするものだが、そんなものが、形のない、それゆえ、時間や空間に制約されないものなのだろう。

レイ・ブラッドベリの『みずうみ』は、『10月はたそがれの国』(創元SF文庫)に収録されている。
萩尾望都さんの『みずうみ』の漫画は『ウは宇宙船のウ』(小学館文庫)に収録されている(Kindle版は今月25日発売予定)。
そして、『歌に形はないけれど』が収録された、ジャケット画も美しいCDをご紹介しておく。









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形のないものを貴べば女神になれる

今日は、実に美しい女性を見た。
ところが、彼女が美人だったかというと、これが分からないのである。
お前の主観では美人だったのだろうと聞かれても、それも分からない。
実際に、さっぱり分からなかったのである。
私は、女性をしっかり見ることに、あまり気後れする方ではないのだが、これほどに美しいとやや気後れする。
それでも、何度か目があったが、彼女は隣の女性とのお喋りに忙しいらしく、どうでもよさそうであった。
彼女は、木製のベンチに掛け、かなり細い脚を実に形良く揃えていたが、作為的な雰囲気はなく、それが習慣的なのだろうと感じさせた。つまり、ごく自然な様子なのである。

しかし、いくら考えても、彼女が美人なのかどうか分からない。
それは、こういうことなのである。
私は、彼女を観察したのではなく、観照していたのだ。
観察とは、自我で見て思慮分別することだ。一般に科学的な見方というものだろう。
しかし、観照とは、直感的知覚で見ることだ。芸術作品を見る時は、観照でなくては本質は分からない。
聖者はいつも観照しているが、普通の人間は、ほとんどいつも観察している。
凡人が観照するのは、何かのきっかけで、心が吹っ飛んだ状態の時である。
それは、例えば、思いもかけない良い知らせを聞いたとか、自然の絶景を見て感動した時とか、あるいは、死を覚悟して受け入れた時である。
そんな時は、何を見ても美しいだろう。

彼女は、見ている者に、観察をやめさせて、観照させてしまう力があるのである。
それは、どのような力だろう?
インドの聖者ラマナ・マハルシの前に行くと、誰でも深い安らぎを感じたのは、彼の前では、心が消し去られ、観察が出来なくなり、全てを観照する精神状態になってしまうからである。
マハルシのような力を持った若い女性がいたら、女神のようであろう。

想念があると観察をし、想念が消えれば観照する。
凡人は想念を消すことが難しいが、聖者は逆に、想念を起こすことが難しいらしい。
あの彼女の前だけでの、にわか聖者になった私には、その意味が少し分かったような気がした。
そこで、心と美の秘密を解明してみようと、私は、本当は必要はないのだが、「がんばって」日常の想念を起こして、彼女を観察してみた。
すると、彼女は、若い女性ではあったが、美人という訳ではないと思えた。
まだ観察するのに努力を要したが、さらに気力を振り絞って細かく観察すると、彼女の容姿に欠点を見出すことも難しくはなかった。
しかし、無駄な努力はやめ、ぱっと観照状態に戻ると、やはり女神のように美しいのである。

彼女には、ラマナ・マハルシほどではないだろうが、人を観照に導く力がある。
では、どうすれば、彼女のようになれるのだろうか?
私が思い出したのは、初音ミクの『歌に形はないけれど』という歌の中にこんな詩があったことだ。
作詞・作曲はdorikoさんだ。

僕がここに忘れたもの
全て君がくれた宝物
形のないものだけが
時の中で色褪せないまま
~『歌に形はないけれど』より~

外見的な美しさは、ごく僅かな間だけのものであるし、それにばかりこだわっていると、やがて年をとって容貌が衰えた時の惨めさは、美人の方が普通の女性よりずっと大きいのだ。
しかし、誰でも本質では至高の美を備えているのであり、それは、時の中で色褪せることは決してない。
まず、自分自身が、形のない本質の美を求めてみることが大事だと思う。
それには、形のないものを形のあるものの上位に置くことである。
形のあるものが無価値だというのではない。形のないものの方が、ずっと大切だということだ。

欲望の自我に囚われた者には、ラマナ・マハルシもただの人間であり、私が今日見た女性も、ただの冴えない女でしかないだろう。
イエスの絵によく描かれる、身体から発せられている輝きは、人から自我を消し、観照するような精神状態にさせる力を現していると思う。
しかし、そんなイエスでさえ、蔑まれることも多かったのだ。
自我は、真に美しいものを感じることは出来ず、習慣的な価値観で、美しいとか醜いとかを感じるのだ。
時代や地域により、美人と言われる基準が著しく異なるのはそのためである。

我々は、そういった、個人的な価値観に囚われず、形のない美しさを知らなければならない。
現代人は、物質的なものばかりを有難がり、形のない本当の美しさを知ろうとしない。

星の王子様が言った、「本当に大切なものは目に見えない」という言葉を、ただ知っているだけではなく、それを世間の教義や信念の上に持ってこなくてはならない。
友達を紹介する時、彼が通っている学校の名前や、彼の親の仕事を言わなければならないのが世間だ。
世間の人に、ある家のことを話す時には、「10万ドルの家」で無いと通らない。
それが下らないことだとは言わない。
しかし、彼の精神的な美点や、その家の庭に咲いていた花の雰囲気はもっと大切なのだ。
今日のあの女性も、きっとそんなことが分かる人なのだろう。

尚、以前書いた、下記の記事も同様のテーマを扱っている。
醜女が一瞬で息を呑む美女になった話









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プロフィール
名前:Kay(ケイ)
・SE、プログラマー
・初音ミクさんのファン
◆AI&教育blog:メディアの風
◆著書『楽しいAI体験から始める機械学習』(技術評論社)


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