チームラボ社長の猪子寿之さんが、2013年にTED福岡で、「日本文化と空間デザイン~超主観空間」というタイトルで講演しておられる。
◆日本文化と空間デザイン~超主観空間~ | 猪子 寿之 | TEDxFukuoka
猪子さんは英語はさっぱりらしいので、アメリカの本当のTEDでの講演は無理・・・というより、この福岡の講演も、言っては悪いが、最低の講演だった。
まあ、この講演の中で、猪子さんご本人が、いつも「何言ってるのか分からない」「日本語が崩壊している」と言われて傷付いていると言われている。
ただ、猪子さんはよく、「重要なものは言葉で説明出来ない」などと、『星の王子さま』の「本当に大切なものは目に見えない」のようなことを言っておられるが、それも怪しい。
ドワンゴ会長の川上量生さんとの対談で、「神秘めかしてクライアント騙してるだけじゃないの?」みたいなことを言われ、「そんなことない!超論理的に説明してる」とか言っているが、全く信用出来ない。
だいたい、あの福岡の講演で、猪子さんの話の何が分からないかというと、単に、キーポイントになる用語を説明せずに使って終わらせる「ずぼらさ」だけの問題だと思うのだ。
例えば、「昔の日本人は世界をレイヤーで見ていた」なんて言われて分かる人いないでしょう?
しかも、何の説明もなし。
そもそも、「レイヤー」という言葉を全く説明しないのは、猪子さんにとっては、あまりに当たり前の言葉だからなんだろうけど、CGで言う「レイヤー」は、少しも一般的な言葉ではない。
「レイヤー」が「階層」という意味だと分かる人が少ない上、CGのレイヤーは、かなり特殊な意味である。
この「レイヤー」を、ほんの少し説明すれば、ずっと分かり易くなるのである。
さらに、「動線」なんて、意味が分かる方がおかしい言葉を、全く独自の特殊な意味で使いながら、これも説明なし。
「西洋の絵では横に移動したら歪む」、「日本画は正面に立ったらレイヤーが壊れる」
これらも、「俺は分かる」という理由だろうが、やはり説明なし。
頭の良い人ではあるのだが、あまりにずぼらで配慮がない。
きっと、周囲の人達は大迷惑していると思うのだ。
猪子さんは作品を作る能力はあるが、思想を語る能力はない。
だけど、素晴らしいヒントは与えてくれる。
彼は天才だからね。それに、初音ミクさんの熱烈なファンなのだから、素晴らしい人に決まっている。

私は8月に、初音ミクさんの浮世絵『歌姫東海道 初音未来』を買ったのだが、この木版画にも、日本画らしさが表れている。
遠景、離れた場面、そして、ミクさんが、別々に描かれている絵を、後で重ねたような構成になっているのが、日本画らしさだ。
西洋画では、これらがパースペクティブ(遠近法)により、1つの空間の中に配置されることになる。
それが、どんな意味になるのか?
西洋画では、1つの空間の中に全てがあるので、空間と時間は等しいのだから、全てが同じ時間にある・・・絵は止まっているので、西洋画は時間が止まった一瞬だ。
ナポレオンが馬に乗り、馬が立っている有名な絵があるが、あれも、絵全体が一瞬を切り抜いたものだ。
だが、日本画は、遠景、離れた光景、近くの人物等が、それぞれ独立しているので、それぞれが、別の時間の様子であると感じることが出来るのである。
真ん中で、はにかみながら笑っているミクさんの向こうの、橋を渡っている人は、ミクさんと無関係で、独自の空間、つまり、独自の時間にいるのである。
ただし、無関係でいながら調和しているのである。

H.G.ウェルズは、『タイムマシン』で、人は、縦(前)、横、高さの3つには移動出来るが(高さは少々移動し難いが)、時間は移動出来ないといったことを、タイムトラベラー(時間旅行者)の科学者に説明させている。
日本画というのは、横と高さはあるが、前(縦)がない。つまり平面的なのだが、時間がある。
数学で言えば、西洋画は「XYZ」の3次元だが、日本画は「XYt」の3次元なのである。
猪子さんは、日本画も空間(立体)と言ったが、それは間違いだ。西洋画も日本画も3次元だが、日本画の3次元には奥行きがない代わりに時間があるのだ。

まあ、『歌姫東海道 初音未来』を見て、ミクさん、遠景、やや離れた光景は、別のものであり、別の時間にあるが、それだからこそ、絵の中に時間の流れがある。
絵のミクさんにも「時」がある。
だから、立体的とは違う意味で、ミクさんが生きているのである。
そして、その生き生きとしたミクさんに同調すれば時間旅行が出来るのである。
※絵は次のリンクでご覧なれます。
芸艸堂 店主の日記 ~初音ミク 木版画「歌姫東海道初音未来」~

『歌姫東海道 初音未来』は、本来、数千万円の値打ちがあるが、版画なので安く出来るのである。
例えば、1千万円の絵は、1枚の絵で描けば、1枚一千万円だが、千枚摺る版画にすれば、単純に言えば、1枚一万円である。
しかし、版画も、決めた枚数を摺った後、原版を壊して、数量限定にして、絵の価値を保つらしい。勿体ないことであると思う。
版画に関しては、世界的版画家だった池田満寿夫さんの本を読むことをお奨めする。









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