ドワンゴ会長の川上量生さん(カドカワ社長)の『コンテンツの秘密』という本に、『新世紀エヴァンゲリオン』の2人のヒロイン、綾波レイと惣流アスカラングレーについて、こんなことが書かれていた。
川上さんは、昔のテレビシリーズでは、綾波レイの方が圧倒的に魅力があったが、最近の劇場版では、アスカの方が魅力的に感じると言う。
そこで、これが偉い人の特権なのだが、作品の監督の庵野秀明さんに、「それはなぜか?」と尋ねたらしい。
しかし、なぜかと尋ねられても、人それぞれなのだから、庵野さんも困るだろうし、確かに、しばらく考え込んだようだ。
そして、庵野さんは、「綾波レイが魅力的なのは、謎の存在だから。でも、すでに彼女が何者なのか分かってしまった」ことで、綾波レイの魅力が下がったのだと説明する。
川上さんはそれで納得し、アスカは純粋なキャラクターとして作られているので、謎が解けても魅力は変わらない・・・と結論付け、それが、自分だけの感覚なのではなく、普遍的な理であるかのように書かれていた。
以前読んだ時は、私もうっかり信じてしまった。
人間が偏見を持ってしまうのは、こういう時なんだろうなあと思った。
まあ、これを読んだ一年ほど前は、私のIQは今よりずっと低かったので、天才の川上さんに、ある意味、軽く騙されたのだろう。

昔から、アスカの方が好きだった人もいるだろうし、両方共、同じ程度に好きとか、両方共好きでない人もいるだろう。
ただ、単純に、綾波レイの方が日本人好みではあるだろう。
それに、レイは、普段は厳しいようで、案外に、弱いところ、脆いところ、それに優しいところを見せていたし、何より、その圧倒的な魅力の決定打は、下着の着替えシーンが多かったことだろう(違うかもしれないが)。
アスカのように、さっぱりし過ぎて、しかも煩い女は、度量のある男性でないと、なかなか受け入れられない。
川上さんも、年を取り、しかも、ビッグになったことで度量が大きくなっただけではあるまいか。
まあ、それだけではないだろうが。
『コンテンツの秘密』は素晴らしい本だと思うが、やっぱり川上さんは頭が良過ぎるので、彼のペースに乗せられて騙されてしまうことが多いかもしれない・・・そんな面が確かにある本だと思う。

作風や世界観が全く違うが(とはいえ、似ている点もあると思うが)、『涼宮ハルヒ』シリーズで言えば、謎という点では、ハルヒに比べ、長門有希や朝比奈みくるの方が圧倒的に大きいが、謎が魅力の条件にはなっていない。
ハルヒのような煩い女より、物静かな(静か過ぎるが)長門や、ドジで可愛いみくるが好きな人が多いと思う。
ところが、単純過ぎて裏がない・・・つまり、超常的なことは別として全く謎がないハルヒという少女は、案外にそこがとても可愛い。
まあ、こちらは、単に、いとうのいぢさんが描いた、それぞれのキャラクターの姿の趣味で、ほとんど決まるのかもしれない・・・と言う私が単純過ぎるのかもしれないが。

初音ミクさんには、何の謎もない。
だが、ここで、ジロドゥの小説『オンディーヌ』の、王妃とオンディーヌの会話を思い出す。
王妃が、無垢そのものの水の精オンディーヌに言う。
「一点の曇りもないというのは人間にとって恐怖なのよ。それこそ最悪の秘密にしか見えない」
本当は、ここは長い対話であり、それが実に美しいのだが、つまるところが、そういうことなのだ。
ところが、アメリカの音楽グループAnamanaguchiが、『Miku』という歌で面白い歌詞を書いている。

Open secrets, anyone can find me

訳詩では「公然の秘密 誰でも探せる」となっていたが、ここで、secrets(秘密)=me(私)だろう。
ミクさんの秘密は、知ろうと思えば誰でも得られる。
だけど、オンディーヌは、愛する騎士ハンスに、秘密を明かすことも隠し続けることも出来ない。
早い話が、消えるしかない。
ところが、もし、我々が騎士ハンスになり、オンディーヌの秘密を受け入れてしまえば、彼女を幸せに出来るだろう。
ミクさんとオンディーヌさんはよく似ているのである。









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