日本で一番モテるオンナと言えば、峰不二子だろう。
峰不二子そのものでなくても、峰不二子的な女性は愛される。
男は馬鹿だから、外見の魅力の力も大きいのだが、峰不二子は女性にも愛される。
峰不二子を一言で言うなら、自由奔放であり、もう一言いいなら、世間よりも権威よりも自分の気持ちを優先する女である。
女性が、単なるわがまま娘、自分勝手な女と峰不二子の違いを認識すれば、嫌でもモテるようになり、人気アイドル、大女優にすらなってしまう。

自分の気持ち優先ということは、自分の気持ちをよく分かっているということであり、それを強く保てるということは、実際はナチュラル(自然)であるということだ。
時代によっては、峰不二子は大聖者だ。

自由奔放で、自分の気持ちを優先する・・・いや、自分の気持ちに嘘がつけず、時には、世間的に困ったことになる。
セーラームーンこと月野うさぎもそんなタイプで、作品の中では、彼女は世間と対立することはなかったが、世間の価値や立場を受け入れる水野亜美や、天王はるからが、「この子(月野うさぎ)には敵わない」と思っていることは明白である。

宮崎駿監督は、昔、『ルパン三世 カリオストロの城』で、自分の理想のタイプの女性であるクラリスを登場させ、峰不二子を抑え付けてしまったが、クラリスは峰不二子に敵わない。
クラリスの良さも分かるのだが、彼女は都合の良い女で、やがて世間臭くなるタイプと思うし、既に世間臭い。
カリオストロ伯爵との結婚を嫌って花嫁衣裳のまま(仮縫いをしていたのだが)逃げ出したというのは、むしろ、行動が遅い。
最後に、「自分も泥棒になるから連れて行って」とルパンに頼むが、強引にそうしない。
峰不二子なら、クラリスと同じ17歳の時でも、ルパンにくっついていったことだろう。
ただ、あの時は、「日本一モテる男」ルパンがそれを止(とど)めたということだろうが、ルパンも、案外にクラリスに抵抗があるのではないかと思ったものだ。
ルパンがクラリスを連れていかなかったことに対し、宮崎駿さんは、ルパン原本の一つである『緑の目の令嬢』で、ルパン(一世)が緑の目の令嬢オーレリーを捨てることに喩えていたと思うが、クラリスやオーレリーは、端的に言うなら、どこか不純なのである。
もっとも、あまりにピュア(純)だと、むしろ悲劇であるのだから、その意味では、クラリスやオーレリーは「愛すべき」女性である。
峰不二子タイプといえば、涼宮ハルヒもそうなのだが、峰不二子と並ぶほどの国民的アイドル、綾波レイも、秘密が多いだけで、実際は同じタイプであると思う。
尚、涼宮ハルヒは、次第に世間的な普通の女性になっていくことが暗示されてもいたと思う。彼女は普通に幸福になれるかもしれない。

峰不二子や、セーラームーンや、涼宮ハルヒ、綾波レイの本性、あるいは、クレオパトラのように、自由奔放で自分の気持ちに正直な女性は、強烈に魅力的だが、男を破滅させる。
それを端的に表したのが、ジロドゥの戯曲の傑作『オンディーヌ』だ。
オンディーヌは水の精で、「オンディーヌ」はドイツ語だが、フランス語の「ウンディーネ」もよく使われる。しかし、英語の「アインダイン」の呼び方は意外に知られていない。
15歳の水の精オンディーヌは、全くナチュラルで奔放、自分の気持ちに100%忠実で、しかも、絶世の美少女だった。
騎士ハンスは、オンディーヌのあまりの正直さ誠実さに大いに戸惑うが、彼女を愛さずにはいられない。
もちろん、そんなオンディーヌを愛してただで済むはずがない。
私は以前、初音ミクは、水の精ウンディーネの化身で、初音ミクを創造したクリエイター達の無意識の中にウンディーネのイメージが作用したと述べたことがあるが、初音ミクの『こちら、幸福安心委員会です。』という歌(作詞:鳥居羊、作曲・編曲:うたたP)で、ミクがオンディーヌになって語ることが、なかなかオンディーヌ的で、ちょっと恐い。
「幸せなのは義務なんです」「幸せですか?義務ですよ」と繰り返し、「幸せですか? 義務ですよ? 果たしてますか? 」と念押しする。
面白いことに、ジロドゥが『オンディーヌ』を発表したのが1939年・・・ミク(39)の年だ。
そして、誰よりもオンディーヌの姿を正しく描いた神秘学者ルドルフ・シュタイナー(教育家、芸術家、ゲーテ研究の権威、農業・医学・建築研究家、哲学博士)が死んだのが1939年である。
私は、『オンディーヌ』ほど純粋な愛を描くことに成功した作品を他に知らないし、個人的に、これほど面白いと思ったものもない。
今の時代のピュアな人が読めば、人生を変えるだろう。
大いに変えていただきたい。
それで破滅を呼ぶ可能性もあるが、破滅こそが最大の幸福であるかもしれない。

尚、『こちら、幸福安心委員会です。』は、技術と芸術性が融合した驚異の舞台と思う『初音ミク HATSUNE Appearance 夏祭初音鑑』の序曲になっていたものが面白かった。全編において、ビジュアル・アートもここまで来たのかと思ったものである。









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