「20世紀最大の詩人」と言われ、老人になっても安らぎを求めず、死の直前まで名詩を残したアイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツ(1865~1939)の詩を読むと、現在の状況を預言しているようであり、また、今後、どうなるかも予感させる。
そのいくつかを見てみようと思う。

ところで、イェイツだけではないだろうが、芸術的な詩は、翻訳者によって、あまりに意味が異なる場合が多く、イェイツは特にそうだと思う。
イェイツの詩には、霊的な意味合いが濃く、霊的なものに、定義や共通の認識を期待する方が難しいからだ。
私は沢山のイェイツの詩集の翻訳を所有しているが、今回は、『対訳 イェイツ詩集』(岩波文庫。高松雄一編)を見よう。

まず、特に名詩と名高い『ラピス・ラズリ』(1938年。『瑠璃』と訳されることが多い)から、何行か抜き出す。

・・・
劇の主役にふさわしい人間なら、
台詞の途中で泣き出したりはしない。
彼らはハムレットもリアも陽気なことを知っている。
陽気さが恐怖をそっくり変えてしまうのだ。
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すべての事物は崩壊し、また構築される。
そうして、ふたたび築く者たちは陽気だ。
・・・

悲劇の主人公たるハムレットやリア王が陽気とは面白い。
それを、一流の役者は皆、知っていると言うのだ。
逆に言えば、ハムレットやリア王が陽気だと知っているのが一流の役者の証である。
そうだろう。
ハムレットやリア王が本当は陽気だからこそ、シェイクスピアのこれらの戯曲は傑作なのである。
アメリカの作家カート・ヴォネガットは言っていたものだ。
「シェイクスピアはうまい作家じゃない。だけど、人間を知っていた」
普通の人々は、ハムレットやリア王や、あるいは、オフィーリアを気取って憂鬱そうにしているのだと、この詩の別の部分でイェイツは書いている。
我々も、凡人でありたくないなら、苦しい時に陽気でなければならない。
愚か者ほど、落ち込んで見せるのだ。

今のコロナウイルスは、経済も現代人の価値観も全て叩き壊す。
そして、新しい人間が、新しい世界を作るが、そんな者達は陽気なのだ。
あるイェイツ研究者によれば、再び構築する者が陽気なのではなく、「滅ぼし、再び構築する者」が陽気なのである。
あえて言えば、「陽気」を、低い意味に捉えてはならない。
gay(陽気)こそが、イェイツ詩の鍵と言う者もいるのだから。

では、『再臨(The Second Coming)』(1920。『再来』と訳されることが多い)に移る。
キリスト教では、再臨するのはイエスだが、イェイツは、スフィンクスのような野獣が再臨し、新しい野蛮な文明が始まると考えていたようだ。
しかし、イェイツは、ニーチェ同様、イエスの類稀な能力を認めながら、ニーチェやワイルドやサルトル同様、アンチ・キリスト主義だった。
キリスト教文明こそ野蛮で、それが今終わる。
そして、詩の最後で、再臨する野獣がどんなものであるかは、イェイツも知らないことを明かす。

・・・
最良の者たちがあらゆる信念を見失い、最悪の者らは強烈な情熱に満ち満ちている。
・・・
再び暗黒がすべてを閉ざす。だが、今、私は知った。
二千年つづいた石の眠りが
揺り籠にゆすられて眠りを乱され、悪夢にうなされたのを。
やっとおのれの生まれるべき時が来て、ベツレヘムへ向いのっそりと歩み始めたのはどんな野獣だ?

新型コロナウイルスがその野獣かもしれない。
これが生まれたからには、もはや以前の世界に戻ることはない。
長谷敏司さんの小説『BEATLESS』で言えば、その野獣はレイシア(超高度AI。姿は17歳くらいの美少女)になると思う。
レイシアの望みは、富の再分配だったと思うが、それが実に当を得ている。
新型コロナウイルスで人類が滅ばないために必要なことがそれだ。
レイシアと対立する超高度AIアストライア(正義の女神の名)は、強制的な変革の危険を説く。確かに、レイシアの戦いは苦しかった。
しかし、新型コロナウイルスは、強制的な変革を行う。
人類のエリート達があまりに利己的で強欲だからだ。
世界で言えばオリンピック、日本での似たようなものである高校野球甲子園大会はもう出来ない。
世界は強制的に変えられる。
新たな世界を作る者は陽気(Gay)である。












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