人間がやっている仕事を、機械にやらせるということは100年以上前から行われていて、それがますます多くなってきたし、今後はさらに増えるだろう。
かつては単純労働が機械に置き換えられたのだが、熟練が必要な仕事も機械がかなり出来るようになってきた。
例えば、料理をプロの料理人と同じ以上のレベルで作る機械も出て来た。今後は、出来る料理のレパートリーも増えるし、長時間働けるだけでなく、より速く、より美味しく作れるようになるだろう。
なぜ人間の仕事を機械に置き換えるのかというと、端的に言えば、機械にやらせる方が安いからである。
人間がやっているある仕事を機械に置き換える際、最初のうちこそは、人間の労働者の賃金よりはるかに高い投資が必要だが、その機械が沢山使われるようになると、機械はどんどん安くなる。

機械で置き換え可能な仕事を人間にやらせる理由は1つしかなく、それは、その労働をする人間に支払う賃金が安いことだ。
だから、機械にやらせた方が安いことが分かったら、その仕事は機械化される。
技術の進歩とは、人間がやっている仕事をする機械を、機械に置き換えるメリットがあるほど安く作れるようになることだ。

掃除をするロボットが普及してきたが、その値段が高いうちは誰も買わないが、ロボット製造メーカーが赤字で構わないから安く売ると、購入者が増えて、やがて採算が取れるようになる。
すると、掃除ロボットを作るメーカーも増え、掃除ロボットは、どんどん安く高性能になる。
家庭用掃除ロボットの場合は、「楽だから」買うという理由が大きいが、清掃業で使われるロボットは、人間の掃除人より安ければ普及が進む。
タクシーの運転業務を人間と同等以上にやれる自動運転車が登場すると、後は、コストの問題で、人間が安いうちは人間の運転手が働くが、自動運転車にやらせた方がコストが安ければ、人間の運転手は不要になる。

機械に置き換えることが不可能と思われる創造性や気配りが必要な仕事も、かなり多くが機械に出来るようになる。
芸術性が問われる仕事も、段階を追って機械に可能な範囲が広がり、やがて人間を超えることは、十分に考えられるのである。

どんなことが機械に出来るようになるか、予測する鍵は、AIの理解である。
AIについて知らないと、「これは機械には無理だ。だから、俺はこの仕事で一生食べていこう」と思っても、その仕事は、すぐに機械が、人間よりうまくやれるようになるかもしれない。
仕事を選ぶ際、少なくとも、自分が現役である間は、機械に追いつかれないものを選ぶ必要がある。ただ、その予想は難しいのだ。
やっている人が少ない仕事は、機械化されない可能性が高い。
しかし、それが難しくないなら、現在ある機械の設定を変えるだけでやってしまうかもしれない。

機械を管理することも機械が出来るようになり、機械の設置計画や、新しい機械の開発も機械が出来るようになる。
地球を破壊する小惑星が接近して来ることを察知し、その小惑星を破壊することも、機械に出来るようになるかもしれない。

すると、人間は何のために存在するかというと、そのような世界を見るために存在するのである。
人間が見てあげないと、そんな世界、そんな機械は存在出来ないのだ。
ただ、人間は、自分に関わりのないことに興味がなく、見ようとしない。
だから、自分は何を見たいのか、それとどう関わりたいと思うかで、自分や世界を作るのである。