質問「明日の朝、目が覚めたら美少女になっていたらどうするか?」。
若い人ほど楽しい答をすると思うが、こういった問題を考えるのは楽しいものである。
現役の美少女だって、「もっと美少女だったら」と解釈して興味深い返答をしてくれることが期待出来る。
もちろん、質問としては「大金持ちだったら」とか「ライオンだったら」などいろいろ考えられ、楽しい会話の話題としても良いと思う。

ところが、「フリン効果」で知られる世界的哲学者ジェームズ・フリンは、少年時代、父親にそんな質問をして失望させられた。
ジェームズは人種差別問題について考えていて、父親に、
「明日の朝、目が覚めたら黒人になっていたらどうする?」
と尋ねた。
確かに、それは1940年代のことで、人種差別が露骨な時代であり、白人の彼らには、あまり楽しくない話題かもしれない。
だが、ジェームズは、父親が人種差別的な返答をするのとは全く違う失望をさせられたのだと思う。
父親の返答は、
「肌の色が変わった人間なんていないよ」
だった。

私がそうなのだが、ジェームズ・フリンの父親の返答に、ゾッとした人も多いのではないか?
最初の「明日の朝、目が覚めたら美少女になっていたらどうする?」の質問に対し、
「それはありえないことだ」
と答える人は、やはりいるのである。しかも、増えていると思えるのだ。
そんな答しか出来ない人はどういう人かというと馬鹿である。
実際の美少女だって、その質問に対し「もう美少女だし」としか答えられない人は、やはり馬鹿なのである(「私が美少女じゃないと言いたいの」と怒るのも同じ思考パターン)。
世の中に、そんな馬鹿が現実として数多く存在することを思い出すと、ゾッとするのではないかと思う。

だが、ジェームズ・フリンの父親の世代は、そんな答が普通だったのだ。
しかし、フリンの子や孫の世代である我々が、そんな答をすると馬鹿である。
そして、フリンは「フリン効果」といって、新しい世代ほどIQ(知能指数)が高い・・・つまり、頭が良いことを、長い研究の末、解明する。

では、「美少女になっていたら」「黒人になっていたら」といった質問に「ありえない」としか答えられない人間はなぜ馬鹿なのか簡単に説明する。
つまり、古い世代は、「仮定でものを考えられない」、つまり、「もしも〇〇だったら」という思考が出来ないのだ。
「もし〇〇だったら」という仮定を立てて考えることこそ、高度な知性であり、創造性に結び付く。
だから、知性が高い人間ほど、ユニークな「もし〇〇だったら」という発想をする。
アインシュタインは「もし、光と一緒に飛んだら、どんなだろう?」と考え、それを基に、後に、特殊相対性理論を発見したのである。
当然、ジェームズ・フリンの父親なら、アインシュタインに対し、「光と一緒に飛んだ人間はいないよ」と言うだろう。

では、なぜ、頭が悪い人は、仮定でものを考えられないのだろうか?
これははっきりしている。
自分の経験でしかものを考えられないからだ。
これについて、フロンは分かり易い事例を示している。
古い時代のハンターに、こんな質問をすると、どう答えるだろうか?
「雪のあるところに住むクマは白い。北極は雪が多い。では、北極にいるクマは何色か?」
この質問に対し、旧世代のクマを狩るハンターは、こう答える。
「俺が見たクマは全部茶色だ」
つまり、彼は、自分の経験以外のことは考えられないのだ。
そして、そんな人間が今でも沢山いるし、実は増えているからゾッとするのだ。

科学技術の進歩と共に、我々の世界は広がり、自分が知らないことが沢山あることが理解出来るようになった。
そこで、自分の経験になくても、「もしも〇〇だったら」と考えられるようになった。
そして、正しく「もしも〇〇だったら」と考えるためには、基礎的な理論を知り、論理的に考えることが出来ないといけない。
論理思考が出来てこそ、自分の経験を基にダイナミックな類推をすることが出来る(ただし、経験に縛られては発想が狭くなる)。
そして、経験がないことに関し、高度な仮定を考える人を天才と言うのだ。

経験にないことには具体性がないが、具体性のないことを「抽象的」と言い、「抽象的」は曖昧なものである。
だが、抽象的に考える能力こそが、高い知的能力であることはよく知られている。
そして、新しい世代ほど抽象的思考能力が高いのは、経験を超えてものごとを理解し考えることを必要とする科学的思考方法の普及による。

ところがところが!!(笑)。
人類のIQは、1980年代に頭打ちになり、2010年から明確に下がっていることが研究により分かっているが、考えてみれば当然なのだ。
夕方の記事でそれを説明し、腕振り運動で頭が良くなる明確な原理を示す。
この原理を体系的に理解し、私は昨夜、驚嘆したのである。
ちなみに、私の昨日の腕振り運動の回数は7000回だ。このくらいを3年続ければ、悪い頭も少しは良くなるだろう。